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22・凶悪なる仕様

「みんな頼む!! 道を開けてくれ!! いますぐ火災鎧を倒さないと!!」

「えっ? どういうこと?」

 蟹の足を切り飛ばしながら、クロスが言う。

「火災鎧は、出現回数が三の倍数のとき、魔針体を復活させる!!」

「はぁ!?」

「復活するのは最後に倒された魔針体……つまりディレーキアだ! しかもそれを引き連れて現れる!」

「ぶふぉっ!? 冗談じゃない……わヨ~☆ あんなん来たら、もうおしまいっショ!! ってか何考えてそんなん実装したの!?」

 まだ実装前だったんだよ!

 あくまでテスト中であって、こんなことになるなんて思ってなかった。

 しかも、もっと悪いことがある――

「アイツが連れて来た魔針体は消えない! 町にディレーキアが居座ってしまう!」

「なんだよそのクソ仕様はよ!! あんなもんが町に来てみろ! 弾幕まき散らして教会から一歩も出れなくなるぞ」

 ゴールデンの言うとおりだが、クソ仕様って言われると、こたえるな、うん。

 いや、プレイヤーからの要望で、ボス2体同時のバトルとかあってもいいのではって意見があってさ……試験的に入れていた仕様なんだ。

 だからまだ、呼び出した魔針体を消す処理が入っていない。

 火災鎧が町中に現れるバグのせいで、そもそもバトルステージとして作っていないせいで狭い町の中に、魔針体が2体現れる羽目に……

 違う。

 2体じゃない……!

「今すぐ倒さないとやばい! ディレーキアみたいな巨大ボスに居座られたら、また火災鎧が撤退と出現を繰り返す! そうなれば、町に魔針体が次々出現する!」

 次の3の倍数では、順番から言って首狩りサンシャインが出てきてしまう。

 もうそうなったら詰みだ。

 火災鎧は24時間で別エリアに移動するが、魔針体たちはその場に残り続ける。 

 ディレーキアでぎちぎちのフィールドに、即死攻撃のボスがうろつき出すのだ。

 絶対に、絶対に、今、火災鎧を倒す必要がある……!

「おいおい、冗談じゃねえぞ! くそっ、蟹の群れがあんなにいるんだぞ!! オレの筋肉でも抑えきれる量じゃ……」

 ゴールデンが指し示したように、うじゃうじゃと蟹が――

「……あれ?」

 そのゴールデンがぽかんと口を開けた。

 全く同じ顔を、俺もしていた。

「……蟹、減ってねえか?」

「ああ、減ってるな……」

 蟹の群れは、エリアの入り口に届きかねないほどずらりと並んでいたはずだ。

 いかにクロスが頑張っていたとはいえ、明らかに減りすぎている。

 特に、火災鎧の後ろにほとんど蟹が残っていない。

「まさか……!」

 小路から後ろに回り込まれた!?

 慌てて振り返るが、背後に蟹の姿はない。

「じゃあ、どこに……?」

 ストーカークラブは絶対にどこまでもついてくる。途中で帰ったりすることなんて有り得ない。

「ゴールデン! あーしを真上にブン投げて☆」

「お、いつものやつか……! 任せろ!」

 アキヤマの小さな体を抱えると、砲丸投げのように真上に投げ飛ばす筋肉の砦。

 人間の体が、たかだかと打ち上がる。

 力士の投げスキルの応用か。プレイヤーを投げるのは想定していなかったのでダメージ判定はないが、好評だったのでそのままにしておいたやつだ。

 実際に生で、目にしてみるとかなりのスピードだ。

 その速度に帽子にすっぽり埋まらないように手で押さえながら、アキヤマは宙空で辺りを見渡した。

 なるほど、面白い偵察方法だ。

 物理的に俯瞰状態を作り出しているわけか。

 俺の俯瞰は、あくまで脳内シミュレートだから、見えない範囲のものは音などに加え、制作・プレイ経験から想像している不正確なものだ。

 今回みたいに遮蔽物の多い場所ではその精度は下がる。

 だが、これなら確実だ。

 チームでプレイをしない俺が気づけなかった攻略法――

「よっと」

「にゃっは・ふー!」

 手慣れた様子でアキヤマをキャッチするゴールデン。

 俺はたまらず、そのアキヤマに詰め寄った。

「どうだった? 蟹は回り込んでいたか?」

 すると、アキヤマははにかむように笑った。

「うん、もう蟹の心配はナッシン。あーしたちはあの鎧をなんとかしましょ☆」

「そ、それはどういう……」

「リュウズっていい子よネ~、ホント。誰かモデルでもいるの? ねえねえ、どうせ初恋の人でしょ、言っちゃいなヨ☆ 公開はしな……いとも言い切れないケド☆」

「な、なんの話だ……」

 リュウズにモデルなんていない。

 あれはむしろその場の思い付きで――

 いや、それより……!

「まさかリュウズが囮になっているのか!?」

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