リアナの秘密
作ったポーションは二百バルで売れた。ポーションを作るのに必要だったものは魔石とアルギナ草だけである。魔石は一つ十バルである。アルギナ草は一束五房が百バルでその内の一房を消費したので魔石と合わせて三十バルである。売り上げから材料費を差し引くと百七十バル。五倍以上で売れたこととなる。
リアナが作ったポーションはD級で下から二番目である。
効果としてはある程度の傷くらいなら治せるようだ。
E級は軽い傷程度、C級は重傷まで、B級は四肢が欠損していても治るらしい。A級に至っては死んだ者をも生き返らせることが出来るらしい。A級は伝説級で作れる者も今はいないらしい。B級アイテムを作れると錬金術師としては超一流になるようだ。
まるでゲームのような強力なアイテムにリアナの心は躍った。
属性アイテムについての授業を受けてわかったのはアレンジがとても大切だということだ。
例えばポージョンなら魔石とアルギナ草だけで出来るが、より級の高いものを作るためには光属性と相性のいい素材を入れることが必要であるらしい。
素材屋の老婆が言っていたように火属性と相性がいいアイテムにはアカガエルの目玉があった。しかし、それだけでなく他にも火属性と相性のいい素材は10種類ほどあった。ただ、一番安価で手に入りやすいのはアカガエルの目玉であるようだ。 高価で手に入りにくい素材ほどレベルの高いアイテムが出来るらしい。
授業で習ったことを基に素材を買ってはアイテムを売って懐にも少しばかり余裕が出てきたある日、アデリーヌが神妙な顔をして話しかけてきた。
「リアナ、あなた私達のこと避けていないかしら?」
リアナの胸がドクンと大きな音を立てた。そしてわずかな沈黙の後にかろうじて返事を返した。
「そんなことないよ」
嘘だ。リアナは避けていた。
ユイリーやアデリーヌとは週に二回ある必修授業で会うくらいであった。
リアナは六属性持っていることから、出席する授業は他の生徒より多い。もちろん選択授業なので全てに出る必要はないが、リアナは自分の意志で出ていた。いろんなアイテムを作りたいという思いと、なにより授業は面白かった。
ユイリーやアデリーヌとは故意に出席する授業の日にちをずらし、なるべく重ならないようにしていた。
リアナの心にあったのは、もし彼らが離れていっても大丈夫なように、という思いであった。
「リアナ、僕たち何かしたかな?」
ユイリーは俯いているリアナと目線合わせようと膝を折り腰を屈めた。
「ううん。そんなことない」
「だったら、下を見てばかりいないで顔を上げてくれないか?」
リアナはその言葉にはっとしたように顔を上げた。リアナはユイリーの言葉で自分が俯いていることに気づいた。
「やっと目を合わせてくれたね」
ユイリーとアデリーヌの心配の色を瞳に宿しリアナを見ていた。
「ねえ、リアナ。なにか心配事でもあるの? もしかしてあなたが複数の属性の授業に主席していることと関係があるのかしら?」
「どうして......」
「どうしてって、普通は自分の属性の授業しか出ないのが普通ですわ。自分の持ってない属性のアイテムは作れないのですから。だから、リアナのことは噂になっていらしてよ」
いやだ…….それ以上は聞きたくない――
リアナの脳裏に前世の記憶が蘇る。リアナは優秀だった。それ故に嫉妬を買っていた。
リアナは知っている。人は自分が届きそうもない存在には憧れを持つが、自分と変わらない存在が成功しているのを見ると、激しい嫉妬を抱くことを。
リアナの場合は真面目ではあるが容姿は地味でぱっとしなかった。だからこそ、余計に嫉妬されたのであろう。
リアナには仲がいい由美子という同僚がいた。入社したばかりのリアナは誰とも付き合ったこともなく、唯一のとりえは真面目だけであった。親友である由美子は美人で男に人気があった。彼女は男っ気のないリアナを心配して知り合いの男性を紹介してくれたりして世話を焼いてくれた。しかし、リアナがその優真面目さを生かしてどんどんと出世していくにつれ、態度が変わっていった。彼氏も出来て仕事もうまくいき、最高の気分だった。
しかし、由美子は仕事でわざとミスをしてそれをリアナのせいにしたり、リアナは真面目そうな顔をして遊んでいるなど中傷を吐いた。
由美子の言葉からわかったことは、自分より下だと思って見下していたリアナが出世し、彼氏ともうまくいっているのが許せないようであった。
リアナは傷ついたが、社内には自分の味方になってくれる者もいたのでなんとか耐えることが出来た。
しかし、由美子はリアナの彼氏にも手を出した。
真面目な彼氏だったから信じられなかった。
「リアナはしっかりしているし、出世して収入も多いから大丈夫だろう?」という嫉妬混じりの言葉を聞いてやっとリアナは彼より収入が多いことが男のプライドを傷つけたということに気づいた。
ユイリーやアデリーヌが彼らのようになるとは限らない。しかし、嫉妬は人を容易に変える。
リアナはそれが恐ろしかった。
そしてアデリーヌは確信に触れる言葉を吐いた。
「リアナ、あなたもしかして複数の属性を持っているのではないのかしら?」




