第59話:夜の女子部屋切り忘れ! 「ミナトくんの好きなところ」が天界に丸聞こえ
いつもお読みいただき、本当にありがとうございます!
前回の第58話では、コハクがミナトに変身してシルヴィアへ不意打ち壁ドンを仕掛け、大好きな主の至近距離フェイスに女騎士が耳まで真っ赤にフリーズ!
さらに天界通販から届いた少年バトル漫画に武人として開眼し、真夜中の月明かりの下で「は……っ! め……っ!」と大真面目に気功波の修行を始めるシルヴィアと、ミナトの全力ツッコミをお届けいたしました!
そして迎える第59話は、深夜のアトリエ女子部屋を舞台にした【深夜のパジャマ女子会】が開幕いたします!
修行騒動を終え、パジャマ姿のルミア、エレナ、そして部屋着姿のシルヴィアが集合!
そこへ元・王国筆頭軍師の母ミレイユが優雅にハーブティーを持って参戦し、妹シエラとともに恋の誘導尋問を開始します!
「三人とも、ミナトさんのどこが好きなの〜?」という爆弾質問に、逃げ場を完全に塞がれた純情乙女たちが、それぞれの胸に秘めた本音を赤裸々に告白!
戦闘力ゼロのミナトが王都のみんなのためにひたむきに頑張る姿、そして時折見せる無防備で優しい笑顔――。
しかし……部屋の片隅の棚に置かれたミナトのスマホは、まさかの【中継がONのまま】(配信切り忘れ)になっていて……!?
天界の神々が狂喜乱舞し、深夜に大バズりする大パニック回をどうぞお楽しみください!
真夜中の森に木霊した気功波修行のツッコミ騒動がようやく収まり、樹海のアトリエには再び静寂が戻っていた。
二階の奥にある広々とした女子部屋。
暖炉の名残の温もりが漂う室内では、木製テーブルを囲むように、ふかふかの絨毯の上に三つの可憐な影が車座になっていた。
柔らかな純白のフリル付きパジャマに身を包んだルミア。
ゆったりとした薄紫色のシルクパジャマから豊かな胸元の谷間を覗かせるエレナ。
そして、過酷な修行からシエラによって強制連行され、貸し出された紺色の動きやすい部屋着を身にまとったシルヴィアである。
「はい、シルヴィアさんも冷たいお茶飲んで落ち着いて〜! あんな夜中に気を練ってたら風邪引いちゃうよ!」
金褐色のツインテールを弾ませたシエラが、シルヴィアの前に湯気の立つカップをコトッと置いた。
「か、感謝する、シエラ殿……。しかし、あと少しで掌に霊気の収束を感じたのだがな……」
「出ないから! ミナトさんの言う通り、絶対出ないからそれ!」
シエラが呆れたように笑ったその時、部屋の扉が音もなく滑らかに開いた。
「あら、女の子たちで深夜のパジャマパーティー? 楽しそうね♡」
優雅な足取りで現れたのは、母ミレイユだった。
黒と紫色の艶やかな長髪を肩口へ流し、大人の色香が漂う濃紺のネグリジェを身にまとった元・王国筆頭軍師は、手にした銀のトレイから人数分のハーブティーを手際よく配っていく。
「お母様、もう夜も深いですのに……」
「いいじゃないの、エレナ。明日の朝はゆっくりでいいんだから。元軍師特製の安眠ハーブティーよ、冷めないうちにどうぞ」
甘く爽やかなハーブの香りが部屋を満たし、女子たちの肩の力がふっと抜けた。
だが――この場にいる誰も気づいていなかった。
部屋の隅、可愛らしい木製の飾り棚の上に置かれた充電スタンド。
そこに立てかけられたミナトの神具スマホの画面が、静かに青い光を帯びて微弱に明滅していたことを。
ミナトが寝る前に充電器へ挿した際、画面の【神界生中継】ボタンが、何かの拍子に『ON』のまま切り替わっていたのだ!
そんな時限爆弾のような状況を知る由もなく、カップを一口すすったシエラが、悪戯っぽく三日月のように目を細めて身を乗り出した。
「ねえねえ、みんな。さっきの少女マンガの続きじゃないけどさ……ぶっちゃけ、聞いていい?」
「……? 何かしら、シエラ」
首を傾げるエレナに対し、シエラはニヤニヤとした笑みを浮かべて特大の爆弾を放り込んだ。
「三人ともさ……ミナトさんのどこが好きなの〜?」
「「「…………っっっっ!?!?!?」」」
一瞬にして、部屋の空気が絶対零度のように凍りついた。
ルミアがカップを取り落としそうになり、エレナの紫水晶の瞳が限界まで見開かれ、シルヴィアの背筋が鋼鉄の板のように直立する。
「な、ななな、何を言い出すのですかシエラっっ!?」
ボッフオンッ! と頭から猛烈な蒸気を噴き上げ、エレナが顔面を真っ赤にして立ち上がろうとした。
「わ、私とミナトくんは、まだ出会ったばかりの魔道学術の共同研究者で……そ、そんな破廉恥な感情など――!」
「あら、エレナ」
スッと、ミレイユが優雅にエレナの肩に手を置き、逃げ道を塞ぐように艶然と微笑んだ。
「元軍師の目を誤魔化せると思っているのかしら? 昨日からミナトさんを目で追うあなたの熱い視線……敵軍の進軍ルートよりも分かりやすいわよ♡ さあ、白状なさい。どこに惹かれたのかしら?」
「お、お母様まで挟み撃ちにして何をぉぉぉ……っ!」
逃げ場を完全に絶たれた長女は、耳の先まで熟れたトマトのように染め上げ、シーツを両手でギュッと握りしめて小さく丸まった。
「……わ、私……直接ミナトくんにお会いしてからは、まだ数日ですけれど……」
観念したエレナの口から、蚊の鳴くような、だが震えるほど熱い本音が零れ落ちた。
「アトリエの魔導水晶越しに……王都でのミナトくんの姿を、ずっと見ていたんですもの……。あの子は、戦う力なんて何一つない、ただの普通の少年なのに……王都の人たちのために、一生懸命に頭を悩ませて、知恵を絞って、みんなを笑顔にしようと汗を流していて……」
エレナは枕を抱きしめ、潤んだ瞳を伏せる。
「そして……みんなが喜んでくれた時に、ふっと見せる……あの優しくて、無防備で、屈託のない笑顔……。画面越しなのに、それを見るたびに……胸がギュッとなって、目が離せなくなって……っ! 直接お会いして、あんな笑顔を間近で見せられたら……意識しないわけ、ありませんわぁぁぁ!!」
枕に顔を埋めて足をバタバタと暴れさせる魔女の姿に、隣のルミアが深く、深く頷いた。
「わかります……! もの凄くよく分かります、エレナさん……!」
「ル、ルミア様まで……!?」
ルミアは両手を胸の前で祈るように組み、碧眼をとろけるように潤ませた。
「私も、大聖堂の聖女として、毎日の祈りや信徒の皆様のお悩みに押し潰されそうになっていた時……ミナトさんが傍で、ずっと一緒に一生懸命になってくださったのです。誰の頼みも無下にせず、王都の皆のために走り回って……そして、問題が解決した後に『ルミア様、本当によかったですね!』って、満面の笑みを向けてくださって……」
ルミアはクッションを胸に強く抱きしめ、蕩けそうな吐息を漏らす。
「あの太陽のような笑顔を見るだけで、私……胸の奥が熱くなって、涙が出そうになるくらい、愛おしくてたまらなくなるのです……っ! あの方のお傍にずっといたいって、心から思ってしまうのですわ……!」
「あはは! ルミア様も完全にノックアウトされてる〜!」
シエラがお腹を抱えて笑い、次に視線を鋭く向けた先は――身動き一つ取れずに置物のように固まっている近衛騎士団長だった。
「で、シルヴィアさんは? まさか『忠誠心だけ』なんて誤魔化さないよね〜?」
「ぐ……っ!」
シルヴィアの喉から、苦悶の唸り声が漏れた。
黄金の瞳を泳がせ、拳を膝の上で強く握りしめる。
「わ、私は……主の盾たる護衛の騎士だ! そのような不純な感情など……っ、あってはならんのだ……っ!」
「いいから白状しなさいな、団長さん♡」
ミレイユが耳元で甘く囁き、シルヴィアの防壁を容赦なく崩しにかかる。
「う……ぬぅぅ……っ!」
シルヴィアは顔面を紅蓮の炎のように真っ赤にし、ギリギリと奥歯を噛み締めた後、絞り出すように本音を吐き出した。
「……主が、何の見返りも求めず、王都の民のために損得なしで奔走されるお姿は……誰よりも、どんな英雄よりも尊く見えた……! そして……何より……」
シルヴィアは両手で顔を覆い、指の隙間から熱い息を吐き出した。
「いつも危険を顧みずお傍に控える私に対し……ふと振り返って、『いつも俺を護ってくれてありがとうございます、団長!』と……あの混じり気のない笑顔を向けられると……っ! 胸の奥が締め付けられるように熱くなって、剣を握る手が震えてしまうのだ……! あ、あのような笑顔を見せられて……惹かれぬ武人など、いるはずがないだろう……っ!!」
完璧な三者連続の本音告白。
シエラは手を叩いて大爆笑し、ミレイユは満足そうに目を細めた。
「ふふっ、三人とも満場一致ね。ひたむきに頑張る誠実さと、無自覚に人を撃ち抜くあの笑顔――男の子の最高の武器に、すっかりやられちゃったわけね♡」
女子部屋の温度は、甘酸っぱい熱気と羞恥心によって沸点に達していた。
三人とも布団や枕に顔を埋め、言葉を失って身悶えしている。
――まさに、その時だった。
ピロリロリロリロリロ――ンッ!!
ピロリロリロリロリロ――ンッ!!
静まり返った部屋の隅から、目も眩むような七色の光とともに、祝福のファンファーレがけたたましく鳴り響いた。
棚の上のスマホの画面が、まるで火山の噴火のように激しく点滅し、神具のスピーカーから天界の歓声が部屋いっぱいに響き渡ったのだ!
【主神アルト】:『ミナト爆発しろwww 深夜のパジャマ告白ごちそうさまですww 三人とも完全に落ちてて草ァァァ!(50,000pt赤スパ寄付)』
【愛の女神フィリア】:『尊死ィィィッッ!!(吐血) 三大ヒロインの純度100%の本音告白、天界の最高機密国宝に永久指定いたしますわーーっ!!(100,000pt赤スパ寄付)』
【霊狐 リン】:『三人ともミナトさんの笑顔にチョロすぎなのですー! でも可愛すぎて悶絶なのですー! コハク先輩の寝相とは大違いなのです!』
【配送妖精 ピコ】:『尊死案件につき、天界夜勤スタッフ全員一致で★5レビュー確定いたしました! 特大ギフトを神速梱包いたします♡』
「……え?」
最初に顔を上げたのはエレナだった。
棚の上で激しく光を放ち、大量の神々の文字が滝のように流れ落ちる長方形の板を見つめ、紫水晶の瞳が点になる。
「な……何なのですか、あの光っている板は……?」
「あ……れ……?」
ルミアがおずおずと近づき、スマホの画面の最上段に表示された赤い文字を読んだ瞬間――その顔から、サァァッと血の気が引いた。
『【LIVE中継中】:神界接続・高画質配信中』
「ひゃ……ひゃああああああああああっっっ!?!?!?」
静かなアトリエを引き裂く、ルミアの絶叫が炸裂した。
「ミ、ミナトさんの通信機……中継が『ON』になったままですわぁぁぁぁ!!」
「な、なんですってぇぇぇぇぇっっ!?!?!?」
エレナがソファから転がり落ち、頭から天井に届くほどの白煙を噴射する。
「み、見られていた……!? 天界の神々全員に、私の恥ずかしい告白が……ぜ、全部丸聞こえだったのですかぁぁぁ!!」
「な、なにィィィィィッッ!?」
シルヴィアに至っては、腰の剣がないにもかかわらず飛び起き、部屋の壁に背中を激突させた。
「わ、我が主への不敬極まる妄言が、神界中に筒抜けだったというのかァァァ!? 切腹だ……もはや切腹してお詫びするしかないィィィ!!」
「ちょ、シルヴィアさん落ち着いてー! 切腹はダメぇぇ!」
「あははははっ! お姉ちゃんたちの本音、全部中継されてたんだー! 最高〜!」
シエラの大爆笑と、ミレイユの優雅な微笑み、そして羞恥心で限界突破した三人の美少女の絶叫が入り乱れ、深夜のアトリエは前代未聞の大パニックの渦へと叩き落とされたのだった。
第59話を最後までお読みいただきありがとうございました!
深夜の女子部屋を舞台にした、恐怖(?)のパジャマ女子トークと配信切り忘れ事故をお届けいたしました!
妹シエラと元軍師ママ・ミレイユの逃げ場なき連携誘導尋問によって、ついに暴かれたヒロイン三人の本音!
エレナが魔導水晶越しに見ていた「王都のために頑張る姿と無邪気な笑顔」、
ルミアが一番近くで支えられていた時の「太陽のような満面の笑顔」、
そしてシルヴィアが護衛として胸を撃ち抜かれていた「いつも護ってくれてありがとうという感謝の笑顔」!
戦闘力ゼロのミナトのひたむきさと笑顔に、立場も場所も違う三人が完全にノックアウトされていた理由が、最高に甘酸っぱく描けました!
しかし……部屋の隅に置かれたスマホの【配信切り忘れ】により、その尊すぎる告白が天界へ完全生中継されていたという衝撃のオチ!
主神アルトの大爆笑、愛の女神フィリアの吐血尊死、霊狐リンちゃんの煽り、そして配送妖精ピコちゃんの★5レビューと、天界側も大熱狂でした!
発覚した瞬間のエレナの蒸気噴射、ルミアの絶叫、シルヴィアの切腹未遂も最高でしたね!
次回――第60話もお楽しみに。




