↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
配信切り忘れに気づかない聖女様、裏では俺にベタ惚れなのが神々と異世界中に筒抜けだった件 〜変幻狐と行く異世界ダンジョンお散歩生活〜  作者: 湊月


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
1/50

第1話:ただいまと言ったら神殿でした

ご覧いただきありがとうございます!

ごく普通の男子高校生が、退屈な神様たちのために異世界でゆるーく配信を始めるお話です。

少しでもクスッと笑っていただけたら嬉しいです!

「ふぅ……今日の数学の追試、ギリギリ受かって本当によかったー……」

西日が長く伸びる通学路を歩きながら、俺――葉山(はやま) 湊(みなと)は、心の底から安堵のため息を吐き出していた。

普通の高校二年生。

部活は入っておらず、特技といえば自炊とスーパーの安売りチラシのチェックくらい。

右手には、スーパーで買ってきたばかりの特売の豚肉と卵1パックが入ったレジ袋が揺れている。

「さてと、今日は豚の生姜焼きにするか。妹も腹減らして待ってるだろうし、ちゃっちゃと作らないとな」

住宅街の角を曲がり、見慣れた我が家――ごく普通の二階建ての一軒家の前に着いた。

ポケットからキーケースを取り出し、玄関の鍵を開ける。

ガチャリと小気味よい音が響き、いつものようにドアノブを回して扉を引いた――瞬間だった。

パァァァァァァ……ッ!!

「……え?」

視界を埋め尽くしたのは、脱ぎ散らかされたスニーカーや見慣れた木目の廊下ではなかった。

目が眩むほどの純白の閃光。

同時に、どこからともなく吹き抜けてきた温かい風が、嗅いだこともない甘い花の香りを運んでくる。

「うわっ、眩しっ……!?」

思わずレジ袋を胸元にかばいながら目を手で覆う。

数秒後、ようやく光が収まり、ゆっくりと瞼を開けた俺は、その場に凍りついた。

床は鏡のようにピカピカに磨き上げられた白大理石。

見上げるほど巨大な白亜の円柱が幾本も立ち並び、足元にはまるでドライアイスのように、ふわふわとした本物の雲が漂っている。

空を見上げれば、そこには天井などなく、どこまでも澄み渡る青空が広がっていた。

「……え、ここどこ? うちの家、いつの間に雲の上にリフォームされたの?」

慌てて後ろを振り返る。

だがそこには、さっきまで手をかけていたはずの我が家のドアもノブも、綺麗サッパリ消え去っていた。あるのはどこまでも続く雲の海だけだ。

「嘘だろ……!? 玄関ドア開けたら異次元って、どんな欠陥住宅だよ!」

完全にパニックに陥り、卵が割れないよう両手で必死にレジ袋を抱きしめていると――前方の高い場所から、信じられないほど気の抜けた声が降ってきた。

「お、来た来た。いらっしゃい、現代人の少年」

大理石の階段の上、一段高くなった場所に置かれた、黄金に輝く巨大な玉座。

そこに、腰まで届く見事なプラチナブロンドの髪を持った、とんでもない超絶美形が座っていた。

……いや、正確には「座っていた」のではない。

玉座の肘掛けにだらしなく足を放り出し、ゴロゴロと寝転がっていた。

その美形の片手には、見覚えがありすぎる緑色の筒状ポテトチップス。

バリボリと軽快な咀嚼音を響かせながら、俺を見てヘラヘラと笑いかけている。

「……あの、どちら様でしょうか。あと、それ輸入食品店によくあるサワークリームオニオン味ですよね?」

「お、よく分かったね! これ美味しいよね、濃い味付けがたまらんのよ。あ、私? 私はこの世界を統べる主神、アルトです」

「主神……神様ですか!? いやいや、意味がわからないんですけど! 俺、今から家族のために晩ご飯作らなきゃいけないんですけど!」

「まあまあ、そう慌てないで」

主神を名乗る青年――アルトは、ひょいと身軽に玉座から飛び降りると、雲を踏みしめながら俺の目の前まで歩いてきた。

後光が差すような神々しい美貌なのに、神様としての威厳がなかった。

「端的に言うとね、私たち神界の神々、死ぬほど退屈なんだよね」

「はぁ?」

「何万年も同じ景色、同じ神話、同じ儀式ばっかりでさー。もう飽き飽きして刺激がないわけ。で、天界の特大モニターで君の世界(日本)を覗き見してたらさ、あるじゃない。『生配信』っていう最高の娯楽が!」

「……まさか」

嫌な予感しかしない。俺は卵を抱えたまま、じりじりと後ずさった。

アルトは満面の笑みを浮かべ、親指をビシッと立てる。

「そう! 君には下の異世界に行ってもらって、現地の日常や美味しいご飯を、私たち神界に向けて生配信してほしいんだよ!」

「断固お断りします!! ただの高校生に何言ってるんですか! 異世界なんて魔王とか凶悪なドラゴンとかがいるんでしょ!? 秒で死にますよ!」

「大丈夫大丈夫! 戦わなくていいから! 命の危険がある場所には行かなくていいし、君のスマホをちょっと神具に魔改造しておいたからさ!」

アルトが俺の制服のポケットを指さすと、中にあった愛用のスマートフォンが眩い光を放った。

「充電不要! 圏外なし! 完全防水・防塵・絶対耐衝撃! さらに神々からの投げ銭(スパチャ)で、元の世界のグッズを取り寄せる通販機能付き!」

「……つ、通販機能?」

「そう! 調味料でも調理家電でも、スパチャポイントさえあれば何でも取り寄せ放題! 元の世界に帰る権利も、チャンネル登録者数が増えたらあげるよ!」

ぐっ……と喉が鳴った。

戦わなくていい。通販で元の世界の調味料や道具が使えて、ポイントを貯めればちゃんと家族のいる家に帰れる……?

いや、待て。騙されるな。

「……それでも無理です。一人でスマホ構えながら異世界を歩くなんて限界がありますよ。自撮り棒じゃ画面もブレブレになりますし」

「だよね! ということで、はい! 専属カメラマン兼マスコットの神獣ちゃん、来て!」

ポンッ!と軽快な音とともに白い煙が立ち込めた。

煙が晴れた足元に現れたのは――金色に輝く極上のモフモフ毛並みと、虹色に揺らめく立派な尻尾を持った、手のひらサイズの子狐だった。

「うむ! 妾(わらわ)が神獣コハクなるぞ! ミナト、よろしく頼むのじゃ!」

「……喋った!? え、しかもめちゃくちゃ可愛い……」

「ふふん、見る目があるのじゃ! 妾の尻尾は七色に輝き、あらゆる姿に変化できるのじゃぞ!」

コハクの尻尾がピカッと輝いた瞬間、モフモフの子狐が一瞬で『立派なカメラを構えた小さなメイド服の美少女』に変身した。

そしてカシャリと軽快にシャッターを切ると、再びポンッと煙を上げて子狐の姿に戻る。

「……ふぅ、あの姿は肩が凝るのじゃ」

「性格はおっさんかよ!」

思わず鋭いツッコミを入れてしまったが、確かにこの神獣がいれば、撮影やアングルに困ることはなさそうだ。

「よし、契約成立だね!」

アルトがパンッと楽しそうに手を叩いた。

その瞬間、俺の足元の大理石がパキリと割れ、白い雲が激しい渦を巻き始める。

「ちょっと、待って! まだ受けるなんて一言も――!」

「神界公式チャンネル、開設完了! 記念すべき第1回目の配信、楽しみにしてるよ!」

「えっ、もう!? そんな理不尽なぁぁぁぁぁっ!? ……って、卵割れるぅぅぅぅ!!」

真下に開いた穴へと真っ逆さまに落ちていく。

だが、雲を突き抜けた瞬間に眼下に広がったのは――青く輝く海と、果てしなく広がる緑の大地、そしておとぎ話のように美しい城壁都市のパノラマだった。

「――あっ、異世界ってめちゃくちゃ綺麗……!」

思わず見惚れてしまった俺の胸元で、コハクが器用に俺の肩にしがみつく。

手元のスマホ画面がピロンと音を立て、記念すべき最初のコメントが流れた。

【主神アルト】:いってらっしゃい! 次はコーラと唐揚げよろしくね!

こうして俺の、神様たちに向けた異世界お散歩配信活動が、ドタバタとともに幕を開けてしまったのだった。

第1話をお読みいただきありがとうございました!

自宅のドアを開けたら神殿……高校生ミナトの受難が始まります。

次回、いよいよ美しい異世界の街へ!

そして教会の美しき聖女様との出会い……からの、前代未聞の配信事故が発生します!?

少しでも「面白い!」「続きが気になる!」と思っていただけたら、

下にある【ブックマークに追加】や、作品への【★評価】をポチッと押していただけると、執筆の大きな励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。