被害者へ聞き込み
僕は、団長とともに王都の病院へ足を運んだ。
病院には、シードラの被害者と思われる患者が所狭しと並んでおり、阿鼻叫喚の地獄絵図だった。
団長は医師の一人を捕まえて事情を話し、どうにか面談ができないか交渉している。
「ここにいるのは、王都でしか治療ができなかった重症者たちだ。話ができる状態の患者のほうが少ない。仮に話ができる状態だったとしても、精神的な問題も大きいだろう。」
「今なおシードラに巣くっているドラゴンをどうにかするために、情報が欲しいんだ。無理をさせるつもりはない。」
「…。一人だけ、会話ができる患者がいます。私と同伴で、患者の容体が悪くなるようならすぐに中止するというのであれば、お話を聞いてみましょう。」
「「ありがとうございます!」」
僕と団長は頭を下げて、医師の後ろについていった。
「ルノーさん、入りますよ。」
扉の先には、全身を包帯で巻かれた患者がベッドに横たわっていた。
包帯の下から、薄く血がにじんでいる。
一体どれほどの惨劇に見舞われたのか、皆目検討もつかなかった。
「先生、どうかされましたか?」
ルノーと呼ばれた患者さんは、弱々しい口調で疑問を口にする。
「今回、あなたにお話を聞きたいという冒険者さんたちがいらっしゃいまして、ご無理でなければ、当時のことをお伺いしてもよろしいでしょうか。」
医師がこちらに目を向けたので、ルノーさんに向かって軽く会釈をした。
ルノーさんは医師の言葉を聞いて、ぼうっとした目に力が入る。
「当時の…?いつもの日常のはずだったんだ。それが、危険を伝える鐘の音が聞こえて…。避難したから大丈夫だろうと高をくくっていたら、空から化け物が…。一瞬ですべてが溶けたんだ!何もできなかった!どうしようもなかったんだよ!!」
ルノーさんが暴れだしてしまい、腕から血が滲み出していた。
「ルノーさん落ち着いて、冒険者の君、彼を押さえておいてくれ!」
「承知した。」
医師が薬剤を取りに行っている間に、団長がルノーさんを優しく押しとどめる。
「あんなものは人がどうにかできるものじゃない!冒険者がなんだっていうんだ。すべてを失った俺たちのこともわからない癖に!」
取り乱したルノーさんが団長に食って掛かる。
「わかるさ。」
団長が優しく答える。
「わかるさ。俺もガキの頃、魔物の波にのまれて、故郷をなくした。いまだ復興の見通しが立たない森の奥深くの話だ。俺たちのクラン『郷里の憧憬』は、そんな人たちに故郷を取り戻す手伝いをするのが仕事だ。」
団長の言葉に、ルノーさんの動きが鈍くなる。
直後、部屋の中に医師が入ってきて、ルノーさんに薬剤を投与した。
すぐにルノーさんは穏やかな息を立てながら眠りについた。
「冒険者方、患者さんを抑えててくれて助かったが、やはりまだ精神的に無理をしている状態だ。悪いが今日のところは帰ってくれないか。」
「そのようだな。無理を言ってすまなかった。」
団長とともに謝ると、僕たちは病院を後にした。




