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勇者などいない世界にて(原本)  作者: 一二三
第二章 宿命の動乱
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第二章01 まだ見ぬ世界


 グランは、バーティとイッポスの後ろを歩き「歪み」の目の前までついていく。

 どうせ世界転移するなら態々(わざわざ)こっちに来てまた戻るなんて面倒なことをしなくて良かったのでは? と思ったが黙っておくことにした。質問したところで軽くあしらわれる未来がなんだか予想できたからだ。


「グラン君、ここを潜る前にひとつ注意があるんだ。一回しか言わないから、よーく聞いててね」


「お、おう」


 さっきからイッポスだけ喋っている。バーティはずっと無言で、もはやグランを見ることさえせずに目を閉じている。面倒くさがりで説明を全てイッポスに任せっきりにしているのか、それともグランが気に入らないだけなのか、彼女の心中を窺い知ることができない。


「私の方を見なくていいわよ。イッポスの話を聞きな」


「……すまん」


「ふふ、じゃあ説明するね。グラン君はこの「歪み」を潜って世界を超えるとき、世界と世界の間に 1メートル位の隙間があるのには気付いているよね? 今からここを潜って世界を跨ぐけど、そこで注意だ。今回は、「歪み」に入ったら小さな隙間を右に曲がって欲しいんだけど、いいね?」


「いや、いいね?と言われても……」


「ま、ボクは一回しか言わないよって忠告したから。さ、行こう!」


「え」


 ヤバい。

 とんでもないスピードで一方的に話を進められ、理解が追いつく前にもう2人は壁にめり込み始めている。すぐに追いかけなきゃ行けないと分かっているのだが、あの間隔に右も左もないだろ!という戸惑いが身体を動かすのを拒否して動けない。

 世界と世界を繋ぐ空間があるのは知っているが、あの隙間を移動するなんて考えは全く無かった。と言うのも、その狭区間はほぼ無重力に近く、自然と他の世界に引きずり込まれるようになっていて、とても移動なんてできないからだ。


「本当に曲がるなんてことができるのか……??」


 言いながら、恐る恐る腕だけを壁に突っ込んでぐるぐる回してみる。腕だけが無重力と引力に晒されて変な感覚だが、確かに狭間の中は動けそうだ。

 それを確認するといったん手を引っ込めて腕を襲う不思議な力から逃れる。


「いやいや、でも右に曲がった後はどうやって移動するんだよ。あいつらも普通に潜っていったし、俺にドッキリでもしかけようとし……ってうあぁぁぁあ!」



 既に時間切れだった。

 肉食獣が獲物を定めて草むらを飛び出すように、壁から腕が飛び出てグランの腕をガッチリ掴み、ぐいっと引きずり込んでいく。

 まず全身を浮く感覚が襲い、そして世界が持つ引力と腕を引く力で綱引きでもするような逆ベクトルの猛威がやってくる。激しい力の波に耐えるべく体を力ませグッと目を閉じる。

 時間にして約3秒。「おつかれ」と、子供の声が聞こえるとようやく腕を掴む力が弱まった。

 目を開くと、グランは宇宙のような暗い場所バーティに腕を掴まれ揺蕩(たゆた)っていた。宇宙のようではあるが、呼吸はできるし寒くもない。


「は?」


 なんだここは、という意味を込めて一言。


「は、じゃないわよ。腕をぐるぐる回して遊んでる暇があるならさっさとこっちへ来なさいよ」


 バーティは握りしめていた腕を離す。強く掴まれたせいで手の跡が鮮明に残っている。


「いやだから、俺には曲がり方がわか_____!」



 目の前には数多と言う平面の光が浮いていて、それはグランもよく知る()()()()()()()によく似ていて。


 と、ここで振り返る。

 この空間は無重力に等しく、体がプカプカ浮かぶ。

 それともうひとつ、世界が持つ強い引力が、この狭間に存在する者を引きずり込もうと常に働いている。



 問。目の前に無数にある平面がすべて()()()だった場合、狭間に存在するグランはどうなる?




 答えは……


「ぬおぉぉわあぁおぉわああ_____!! 」


 無尽蔵に働く引力の嵐に巻き込まれ体が激しく回転する!

 視界がガラガラ揺らぐのでハッキリと分からないが、グランとは違ってイッポス達は普通に移動できているように見える。どうやってこんな嵐を避けているのか理解不能。

 逆に、向こうはなぜグランは移動できないんだと思っているかもしれないが、とりあえず助けて欲しい。



「何遊んでるんだわさね。早くこっちへ来てくださいな」


「違うよバーティ。グランくんはここでのバランスの取り方が分かっていないのさ。初めてのことだから仕方ないね」


「おおおおおおお!話しでぬぇーで、たどげでぐれぇぇ!」


「まったく、そうならそうと先に言って欲しかったのよ」



 はぁ〜、とため息をつきながらバーティは魔法を噴出させ、それにより生まれる推進力で暴れ回るグランをがしっと抱きかかえるように捕らえる。

 助けられた当のグランは「ありがとう」と言おうとしたのに、口が塞がれてうまく声が出せない。顔に布のような物が押し付けられていると思ったら、どうやらバーティの着ているゴスロリに顔を埋めてしまったようだ。


「大丈夫かしら? ここに働く引力は特殊で、身体にオーラを纏わないと今みたいに死ぬまで回り続けることになりましてよ」


「も、ももももう大丈夫だ!その腕を離してもらって構わないぞ、ありがとう!」


 急いで身体に魔力のオーラを纏ってバーティから離れる。

 大人の女性に抱き抱えられるのが初めてのことだったので少し顔が紅潮してしまう。少し顔の位置がズレて彼女の胸とかに着地していたらどうなっていたことやら。


「何を焦っているのよ。もう大丈夫よ?」


「違うよバーティ。君が彼を抱くように受け止めたから動揺しているんだよ」


「あら、こんな時に発情しないで欲しいわね」


「悪かったな!てか発情はしてねぇからな!」



 ようやくバーティがグランと話を交わすようになったところで、「じゃ、ついてきて」と言うイッポスの催促がかかる。

 行き先がよくわからないのでとりあえずグランは2人についていくが、意外にもすぐ目的地に辿り着いた。


「さ、ここだよ。この世界に入って欲しいんだ」


「この、世界? もしかしてこれって、さっきまで俺がいた所や俺の故郷がある所とはまた別の世界ってことか??」


「うん。周りにある光の平面はほぼ全部別々の世界の入り口さ。とは言っても、その内のほとんどが何もない狭い空洞でね、入ったところで何もすることがないよ。ほら、早く入ってくれないかな。君の方が近くにいるんだから、先に行って欲しいんだけど」


「いやいや、お前ら、まさか何個も世界を行き来した経験があるんです?」


「いや、ないよ? ボク達の世界の文献にそんな感じのがあったってだけだからね。少なくとも、何があるかわからないこんな宇宙空間みたいなところに来る人は今どきいないと思うけどね〜。さ、行った行った」


 彼の言う今どきとは、多分何百年分の月日が含まれているんだろうな、なんて考えながら背中を押された。



=================



 ほれほれ〜と背中を押され、されるがまま言われた世界に突っ込まれる。そのせいで着地に失敗し顔から地面に突っ込んでしまったが、下が土だったおかげで体を痛めることはなかった。


「土……でも、ここは森の中と言うわけじゃなさそうだな」


 周りを見ると「歪み」を囲うようにして土が張り巡らされており、今のグランのように着地に失敗した人が怪我をしないのうに整備されているらしい。ありがたい。

 とは言っても、断崖絶壁の渓谷に位置するので少し歩けばフリーフォールまっしぐらだ。整備されているからと安心しきっていると痛い目に遭うに違いない(痛い目どころか死ぬと思うが)。


(ん?? あそこ、橋が架けられていて、建物も見えるぞ。となると、この渓谷はただの渓谷じゃなくて、崖の段差や平地を限りなく利用した街が建てられているのか……)


 橋や階段によって更に領地面積を増やし、アル・ツァーイを普通に超える大きさを誇っている。物資補給は貿易や旅商人などから得ているのだろうか、こんな土地でここまで栄えることができるのは相当な魅力だ。


「ここは、ボク達の故郷ミスティカランドだよ。ちなみに、ボクとバーティはもちろん、ザガンやカラピア、ゴースなどなど、大侵攻で暴れ回った人間はここの世界の住民さ」


「は、あれ全員、ここの世界出身だったってことか?! てことはあの黒龍、俺らの世界以外にも手を出してたってことか」


「ご名答〜。ボク達は昔、ある国で『制する耳(スラオシャ)』と呼ばれる役職に就いていたんだ。ボクとバーティは2代目、ザガンは3代、アスタロが6代で、カラピアとゴースが13代目だったはず。どんな役職かって聞かれると難しいんだけど、簡単に言うなら()()()()()()()()()()()()と言ったところかな」


「『制する耳(スラオシャ)』? 王の代わりにって、その国の王は何もせずにぐうたらしてんのか?」


 「まったく、思考が浅いわね」とグランに少しイラつくような声色。渓谷を吹く風にバーティは髪を靡かせながら、


「地方統治制、と言えばよくて? 国が広いから中央は王様が管理するの。で、他の土地をいくつかに分割し私達を派遣、そこで政務を担わせるってことよ」


「なるほど理解。俺らの世界では国なんてのはほぼないんだよ。街とか村とかは独立していて、大都市の支配下にある地域がちらほらとある位だな。大陸を越えれば国家が成立している所もあるらしいが、そこら辺には疎い」


「そうだよね。世界が違えば文化も違う。異世界文化理解も大事なことだね」



 今更な話だが、闇の世界で長らく生きてきたとは言えイッポスは子供の声と子供の姿をしている。決して大人ではない。

 本来ならば無邪気に騒いで走り回るような幼い子供のはずなのに、異世界文化理解やらなんやらと、後1ヶ月で20歳になるグランと対等、またはそれ以上の会話ができる。

 それだけではない。

 彼は『制する耳(スラオシャ)』に属していたらしいが、果たしてその年齢で属せるものなのだろうか。いや、普通は無理だ。国を統治するのが子供となれば反乱を招きかねず、任せられるはずがない。


(だが、過去の詮索はしないほうがいいよな。過去を知るにはそれ相応の友好度が無ければいけないけど、今の俺らにはそれが無いし)


 一般的にはできないことを実際にしていたのなら、イッポスが()()()()()()()()と、それだけのことだと。そう勝手に想像するにとどまった。



「そう、理解が大事なのさ。生き方への理解もね……」


 そんな中、イッポスは誰にも聞こえない声で心中を吐露する。喋ったことすらグランが気付かないほどに小さな声で。

 しかしそんな彼の様子を見ていたバーティが深いため息をついてイッポスに近寄り、ぽんと右手を肩に置く。


「ほら、30分だけしか時間をとらないんじゃなかったの? おしゃべりしてたからもう10分もないわよ」


「そうだったね、すまない。グラン君、そろそろ本題に入ろう。何故、僕たちが助けを求めているのかについて」



=================



「さっきも話したように、ボク達は地方を管理する役職に就いていた。その証拠に今も2代目の札を持っているんだ。これは『制する耳(スラオシャ)』になった人間皆に支給される唯一の身分証明書みたいなものさ」


 そう言って(ふところ)から一枚の肌を出す。木で作られており、そこには「II ED : IPPOSE」という文字が書かれている。赤いハンコが押されているが、特殊な文字なのだろうか、グランには何が書いてあるのかわからなかった。


「それで、この札があればボク達もまだ王城に入れるんじゃないかなと思って実際に行ってみたんだ」


「いやいや、今はもう十何代目とかになってるんだろ? 2代目です〜とか言って信じてもらえるわけないだろう」


「確かにそれが当たり前の考えだわね。でも、城には初代〜現16代までの全ての役員の名前が厳重に記録されている。それと私たちの札を照らし合わせれば信じてもらえないこともないのよね。それに、私たち地方統制官から失踪者が続出していたのだし、その失踪者が今になって帰ってきたと考えればまた受け入れてもらえるかもしれないのよ」



 グランはこの世界に来たときにイッポスが言っていたことを思い出す。


『ボク達は昔、ある国で『制する耳(スラオシャ)』と呼ばれる役職に就いていたんだ。ボクとバーティは2代目、ザガンは3代、アスタロが6代で、カラピアとゴースが13代目だったはず』


 つまり、ラグラスロの支配下にあった彼らは皆、この世界で地方を管理していた役職の者であったと。



「事実、現王様は失踪者について理解していた。それに、彼は何故かラグラスロの名前も知っていたんだ。だから僕たちは王の許しを得て王城に入ることができた」


「ラグラスロの名を? 確かにあいつ、他世界に行き来できるような力を持っていたらしいからな……何か痕跡を残していても不思議ではないか」


 実際のところ、グランもあの黒龍の素性についてはよく分かっていない。何らかの方法で他世界に干渉し、そこから誰かを選別して闇の世界に引きずり込んでいた。というところまでは推測できている(あくまでも推測でしかないが)。

 よくもまあ謎だらけで情報がほとんどない敵に果敢に立ち向かえたなぁ、なんて今ではよく考える。


「ん? ということは、お前らの抱える問題はあの黒龍についてなのか?」


「いや、残念ながら違うんだ。ま、あの龍の謎を考慮すればどこか裏の面で関わっている可能性を否定はできないけど」


 ヒュウヒュウと吹く風は未だ止まない。遠くからやってくる冷たさに突き刺される感覚で鳥肌が立つ。


「それでね、新たにボク達は臨時の2代目統制官として再び職に就くことを許された。そこで、王から聞いたんだ。国家を揺るがす程の問題をね」


「ほう。ならそれがお前らの助けてほしいことって訳だな」


「うん。国では毎年大闘技大会が開かれるんだけど、そこで問題が生じたみたいでね。1ヶ月後に大会が迫ってるんだけど、なにやら出場者の1人から、国家転覆の予告上が来たんだって」


「はぁ?!」


 すると再びイッポスは懐から木札を出す。


「これはさっき見せたのとは違うものだよ。こっちの札は臨時で発行されたもの。国の代表に選ばれたことでボクらは大会を運営する権限を手に入れた訳だね」


 新たな札には「Ⅱ ED TE : IPPOSE 」とあり、確かに先程のとは微妙に異なっている。


「そこで、王からミッションを課されたんだ。謀反を起こそうとする輩を鎮圧できる実力を持った者を招集しろってね」


「それで、俺ってわけか」


「そ。できれば、君の妹くんも一緒だとありがたいかな。彼女も随分と強くなってるみたいだし。ひとまず今君が大会への出場を許諾してくれれば、すぐに参加登録をして国防を固める準備に取____ 」


「いいぜ」


 イッポスの言葉をぶった切って承諾。

 準備運動でもするようにグランは跳躍や屈伸を始めて「やってやろうじゃないか」と微笑む。


「頼んでおいてなんだけど、いいのかい? 私達、あなたの世界を壊そうとした存在なのよ?」


 それは彼女にはもう既に分かりきっている筈のことだ。

 しかしバーティは、グランの口からはっきりと聞きたかった。確証が欲しかった。


「何を当たり前のことを。悪行に手を貸すつもりは無ぇけどよ、助けてほしいって言われたら助けるに決まってるだろ」


 彼はやれやれ、といった感じに即答する。

 グランが2人に対して何の敵意も抱いていないことを言葉で確認したいと、そんなバーティの望みを速攻で叶えてみせた。


「ありがとう。これで、私達は全ての信頼を預けることができましてよ。私も、貴方達への協力は惜しまない」


「ああ。国を左右するこの事件、共に解決してやろうぜ」





______そして、約束の30分が経過した。



「もうお別れの時間だね。あと1ヶ月開催まで猶予がある。だから……今日から2週間後、ここにまた来てほしい。それまではメイア君たちと過ごすといいさ」


「わかった。勿論、さぼらずに鍛錬は積んでおくぜ」


「そりゃありがたいね。そうだ、最後にこれだけは忠告させてね。『制する耳(スラオシャ)』は大会の運営を担う役職でもある。つまり、ボク達は大会に参加できないから戦力としては期待できないと思う。ま、それだけ理解しておいて」


「そうだな、了解した。……そうだな、俺からも最後に聞いていいか?」


 バーティとイッポスはもちろん、と頷いて答える。


「……この世界から、どうやって帰ればいいんだ? あの宇宙空間みたいなところ、道なんか覚えてないぞ」




====================




「おぉ〜。こりゃ便利なアイテムだ」


 グランは無事、古風都市アンスターへと帰還することができた。彼の手の中にはロケットペンダントが握られており、それを活用することでなんとか戻って来れたのである。


「これが歪みのところまでワープできる品物だとばかり思っていたが、まさか()()()()()()()()()()()()()アイテムだったとはな」


 ロケットに埋め込まれた魔水晶に触れることでワープできるのだが、その水晶にその地点の座標を登録することでワープ先を決められる。更には半径1mほどの範囲にいる人物も一緒に飛べるという超高性能な仕様だったらしい。


 このペンダントはデアヒメル王にもらった物で、『これを使えば歪みまで飛ぶことができる』と言って渡された為に本来の用途を知らなかったのである。

 相当なレアモノらしいから人が多いところじゃ表に出さない方がいいよ、と忠告されたので移動が面倒だからといって乱用は避けたいところ。

 今のところはまだひとつ(元・闇世界の歪み前)しか登録されていないが、とりあえず登録数の上限が訪れるまではいろいろやっておきたい。



「イッポスがこのアイテムの使い方を知ってたおかげでなんとかなったな。しかもこれ、何地点か登録できるらしいじゃねえか。便利すぎるだろ」


 なかなか愚痴とぼやきが止まらないグランだったが、すぐに「あ、やべ」と、ユニベルグズに行かなければならないことを思い出し疾風の如く駆ける。

 メイアの誕生日に異世界の救済と、やらねばならぬことが多いとは思う。

 だが、そんな状況の中でグランは走りながら笑っていた。街の人から見れば笑いながら走る姿は奇妙そのものだとは思うのだが、彼は全く気に_____していた。恥ずかしい恥ずかしいと思ってはいるのに、ニヤつかずにはいられなかった。


 異世界に連れ去られた翌年に、今度は逆に自ら新たな世界を旅するという多忙にも思える体験がグランをハラハラさせる。

 

「さてさて、今年は大波乱の予感がするなぁ? けど、国の未来がかかってるんだ。そう楽しんでばかりはいられねぇよな。期限2週間、着実に力をつけて置かねば」



 ノリノリでグランは馬車に駆け込む。どんなに強くて世界を救った人間だろうと移動は馬車だ。お金は必要だし、そこまで速いわけでもない。

 技術が発展し国が成りなっているという別の大陸には車とかいうやばいのがあるらしい。

 だが、この大陸にはそんな技法を持ち帰れるほど立派な渡航技能はない。それを良いことに車の製造方法は向こうの大陸で独占させる形となっており、「車両という存在がある」という話だけが風の噂となってやってくるばかりなのである。


 そんなことはさておき。

 道中疲れてスピードが落ちてくるまで走った方が早く目的地に到着できるのだが、グランは普段の感覚で移動に馬車を選んでしまった。

 持ち金が足りず、途中で降ろされて近隣の町で魔物討伐依頼などを受けることになるなどこの時のグランは知るよしもなかったのだが。


 何かを考えながら同時に他のことをする、なんて同時処理行為をすると痛い目に遭うのでやめた方がいい。

 後のグランからの忠告である。

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