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勇者とメイドさん その77

メイドさん欠席。

「これで終わりだ。何か言い残すことはあるか?」


「へぇ、死にゆく敵にそんな時間をくれるなんて、さすが勇者サマは優しいねぇ。じゃあ一つ、お前はまだ若いみたいだからなあ、永く生きた魔物から課題を出してやろう。お前の生きる意味についてだ。なぜ我々は争う必要がある? 姿形や因習こそ違えど、同じひとつの命だ。そんな命を互いに削りあってまで、なお生きている意味がどこにある?」


「……」



 久々に出現した強大な魔物を倒しに、はるばる遠い地まで足を運んだが、その先でこんな問答をすることになるとは。俺も甘くなったか。


「どちらに産み落とされたか、とかくっだらないことは言うなよな? 視点が違えば正義もまたそれぞれなのは、この世界の常だ。こうして互いに意志を持って、言葉を交わすまでできる。それがなぜだ。なぜこんな結末が訪れる? 魔物というだけで襲いかかる人間、人間というだけで排除する魔物。こんな未来を創り出す我々には生きる意味などない。死んだ方がマシだ。もちろん問答無用でここまでしたお前もな」


「じゃあなぜお前は生きている」


「質問で返すのはナンセンスだが……まあ最後だ、答えてやろう。夢を見ていた、希望を捨てていなかっただけさ。どうすればこのクソみたいな世界を変えられるか、または抜け出せるか。そうして足掻いていたのさ」


「……」


「こうしてまともに言葉を交わせたのは二人目だ。基本的に他の人間共は喚き散らして襲ってくる。取り付く島もないからな。出会い方さえ違えば、もしかすればお前とはわかりあえてたかもな」


「生きる意味ね」


「おっと、答えは出さねぇぞ。自分で探せ。そうして見つけてこそ、価値があるってもんだからな。あとそろそろ限界ってのもあるしな。そんじゃ達者でやれよ」



 魔物は言葉を紡ぎ終わると同時に絶命した。




 生きる意味、ね。考えたこともなかった。魔物と共存、勇者が言い始めれば、それこそ気が触れたとか洗脳されてるとか、大惨事になりかねないな。


こんな時に頼れるのは。




その日の夕飯は焼き鮭だった。

相手の立場になって考えてみようとかね。

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