勇者とメイドさん その75
かつての仲間との再開。
「お、魔法使いじゃん。久しぶりー」
「? ……ああ、久しぶりだね、勇者クン。前会った時とは別人だね、一瞬誰かわかんなかったよ」
「そんな変わったかな」
「変わったね。前は外面こそは繕ってたけど、負のオーラがとめどなく溢れ出てたからね……。それに比べ、今はちょっと輝いてすらいるよ。希望に満ち溢れていると言うべきか」
街で偶然、かつての旅の仲間の魔法使いと遭遇した。城でのパーティ以来か。彼女が言うには俺は変わったらしい。確かに旅を終えて降りかかる重荷は下ろしたし、楽になった影響かもしれないが。
「君自身は気づいてないだろうが、自分が考えてる以上に君は疲弊していたんだ。いつ壊れてしまうかわからなくて、すごいヒヤヒヤしていたが……その姿を見れて安心したよ」
「そうか。魔法使いが言うならそうなのかな」
「そうだとも。君の悩みから察するにだ……君の本質を受け入れ、救ってくれた好い人でも見つかったのかい?」
「良い人? メイドさんのことかなぁ」
「ほーう、あの時城が付けた従者がねぇ」
「そういう魔法使いだって、一緒に執事君もらってたじゃん。彼は元気してる?」
「なんかオドオドしてるのが可愛くてね、毎日いじっても足りないくらいよ」
「魔法使いは仮にも英雄の一人なんだから、あんまりやると困るでしょうに……」
そう。こっちのことを言いつつも、魔法使いも一緒に執事を一人もらっていたのだ。戦士と僧侶は恋仲だったからか、パスしていたが。
「あ、そうそう。国立学院が『なぜ勇者が来ないんだー』って聞いてきたけど、なんで入らなかったの? 何から何まで用意してくれてるらしいじゃん。旅で逃した学び舎に通うチャンスだろうに」
「魔法使いが何から何まで教えてくれたから、学ぶこともないし、今更行く必要なんてね……」
「……」
「あとはメイドさんといるのが気楽でいいしね」
「まあ本人がそれでいいならね」
だいぶ前の話を持ち出してきたあたり、魔法使いは俺を探し回ってたのだろうか。だとしたら申し訳なかった。
「君は回復していた。それは知れたし、話すこともないから解散でいいよね」
「いいよ。それじゃまた」
「また」
魔法使いは前と一切変わってなかった。それより今気になるのは、どちらかというと執事君の方かな。無茶ぶりされてないといいけど。
その日の夕飯は冷やし中華だった。
こんな日もある。




