勇者とメイドさん その53
メイド服にはなにやら秘密が。
「うわ、メイドさんずぶ濡れじゃん。どうしたの」
「帰り道で雨に降られてしまいまして」
「メイドさんのことだから、傘持ってるかと」
「予報はあくまで予報でしかありません。やはり傘は常に持っておくべきですね」
玄関で迎えたメイドさんは、見事なまでの濡れ鼠状態。とりあえずタオル渡しつつ、そのまま風呂場に押し込む。メイド服を洗濯機にかけようと回収すると、明らかに水分吸った以外にそこそこの重量を感じる。メイドさん毎日こんなん纏って動いてたの……。何が仕込まれてるかわかったもんじゃないから、一応ドア越しに聞いてみる。
「このメイド服はそのまま洗濯機に入れちゃっていいの?」
「前腕部と腰周りと胸部の鉄板さえ抜いていただければ」
「仕事着に何を仕込んでんの。鎧じゃないんだから」
「最低限の自衛は必要なので」
「重くない?」
「慣れてしまえばそこまでですね。これに加えて、その時々で必要と考えられる物も仕込んでいるので、普段はもっと重いです」
なんだこのメイドさん。ここまで一緒に過ごしてきて動きに鈍さを感じさせなかったのに、こんな馬鹿みたいなもん毎日着てたのか。
「あ、フットワークは軽い方がいいので、スカートには何も仕込んでいませんよ」
「いや、聞いてないから。鉄板仕込んでる時点で、フットワークもクソもないだろうけど」
「慣れてしまえば」
「それは一部の人だけだと思う」
ガチャガチャと音を鳴らしながら、ぐしょ濡れのメイド服から鉄板を抜き取って洗濯機にぶち込む。生きてる中でこんな経験をすることになるとは。
その日の夕飯はラーメンだった。
最近は500文字以上がノルマ。




