勇者とメイドさん その18
頭のアレ。
「どうしたんですか。頭のアレを気にするなんて」
「いや、メイドさんはずっとしてないじゃん。頭のアレ」
「いえ、最近はよく見ると思いますよ。頭のアレがないメイド」
恐らくご主人様の言う「頭のアレ」は、一般的なメイドの付属品であるカチューシャのようなアレのことでしょう。そこそこ長く暮らしてきて、一回も気にされなかったものですが。
「私も以前は付けていたのですが、紆余曲折を経て手放すことになりました。ただこの話は長いので、またそのうち時間があれば話しましょう。そして昨今のメイドは、寧ろ付けていない方が主流になっているまでありそうです」
「え。別にあれ高級品ってわけでもないでしょ? 流通量減ってるの?」
「実はそのようです。空き時間に市場に駆り出しても、全くと言っていいほど見当たらないのです」
「その市場を枯らすほど欲しがるものでもないだろうに」
ご主人様の言う通り、頭のアレには特にこれといって価値があるわけではありません。個人のフェティシズムを否定しているわけでもありませんが。
「となると次に考えられるのは、特権階級の所持によるステータス化ですかね」
「えー、何らかの陰謀だと思うけどなー」
「希少価値が高くなるというのはそういうことです」
しかしメイドの頭のアレに、希少価値が出てくるとは。この世界は何が起こるかわかりませんね。なので、陰謀説もないとは言いきれませんが。
メイド服にはだいたい付属してない。