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勇者とメイドさん その19
私は虫が嫌いです。
「メイドさーん虫ー」
「ご主人様、メイドさんは虫ではありませんよ」
「退治しておいてー」
そう、虫が湧いたのだ。どちらかというと苦手だから、毎回退治はメイドさん任せ。
「蛾って……どこから入り込んだんですか」
「窓開けて掃除してたの忘れててね、閉めた時には入り込んでた。もう外も暗いし、開けたら更に入ってくるのは容易に想像できるから、ちゃちゃっと退治してね」
「道具を用意しますので、少々お待ちを」
そう残して席を立ち、戻ってきたメイドさんの手には、雑巾と隕石の応募をしたいつぞやの雑誌が丸められていた。
「メイドさん……蛾すら潰すの?」
「申し訳ありません。生憎他の方法を知らないもので」
「まあやってもらう側だから、文句は言わないけどさ」
そんなやり取りの中、メイドさんの振るった雑誌は見事に蛾に命中し、弱って降下したところにトドメと言わんばかりに雑誌を叩きつけた。そして雑誌の下には息絶えた蛾。
「メイドさんお見事」
「ええ、まあ基本的に『ゴキ』ほど素早くなければ、こんなものです。潰すのが前提ですが」
そう補足しつつ蛾の死骸を回収、跡地を綺麗にしてメイドさんは去っていった。スマートな仕事ぶりが素敵。
その日の夕飯はトマトスパゲティだった。
深夜に侵入した蛾と殺虫剤片手に大乱闘してました。




