夏ですよ春香ちゃん
ーーーーーーもう、だめ……。
「暑すぎる……。」
「…目が死んでるよ大島さん。」
ガクンっと机に項垂れる春香を珍しそうに見下ろす間宮。
肌に貼り付くブラウス。
ミンミンと騒音をまねく蝉。
辺りを取り巻く熱気。
全てが暑さに転換される。
「クーラー故障してるなんてついてないよね。」
ふぅ。
と溜息をつく涼君。
パタパタと顔を扇いでいた。
「涼、あんたそんなダラけてないでよね。見てるこっちが暑くなる。」
「なっ、千明俺につめたい。」
「気のせいよ。間宮君を見習いなさい。涼しい顔して小説読んでるじゃない。」
「どうでもいいけど、君らなんでここに集まるの?」
パタンと小説を閉じ、呆れた様な声をだした間宮君。
うん。あたしも同感です。
最近は涼君だけでなく千明までクラスの端っこに位置するここによって来る様になった。
正直うるさいと思ってしまう事も多々ある。
しかも、聞く所によれば。
千明と涼君は中学が一緒だったらしい。
「あたしは春香に会いに来てるの。」
「俺も春香ちゃんに会いに来てるの。」
「ウザい。真似しないでよ涼。」
「えー真似してないし。自意識過剰なんじゃないの?」
ケラケラ笑う涼君に眉をひそめて心底嫌そうな顔をする千明。
…涼君ってさ、実は結構ウザキャラ?
ここ最近スッカリ爽やか男子のイメージがなくなって来たと思う。
特に千明に対してはSっ気が出るらしくて、ムキになる千明を相手にからかってる事が多い。
「………疲れた。」
ーーートサッ。
「!?」
ま、間宮君?
突然左肩に寄りかかる温かい温もり。
あたしの左半身に背中を預けている状態だ。
フワフワと揺れる柔らかい髪が頬をくすぐる。
ここ、教室……。
別にサボり部屋なら構わない。
どうもそう言った事に対して鈍い春香は相手が美少年であろうと恥ずかしいなどとは思わ無いのだが、それが教室という他人の目のある場所になれば話は別だ。
案の定、
「おい、ハルなにしてるんだよ?!」
騒ぎ立てる奴がいる。
春香は小さく溜息を付いた。
「お前暑さでどうかしちゃったのか。」
「…一回死んできて。」
「恐っ、さらっと物騒な事言うなよ。」
「………。」
「ハル?シカト?」
「うるさいわよ。ちょっともたれかかってるぐらいで。」
容赦ない一言が涼君へと降りかかる。
…さすが千明。
呆れた様に言う彼女は間宮君の挙動に対して騒ぐ事もせず、寧ろ過剰反応を見せる涼に苛立っている様だった。
千明は千明でその反応の仕方は変だよねぇ。
全く、自分の周りにはまともなのがい無いのかと少し悲しくなる。
「……涼。」
「ん、何だよ。」
「肉まん食べたい。」
…に、肉まん?
いきなりの一言にあたしと千明は一瞬目が点になる。
だが、馴れているのか涼君だけはすぐさま勢いよく反応した。
「は!?お前今の季節わかってる?夏だよ、な「うるさい。お前のうちの冷蔵庫にあるだろ。」
お前、何でそれを……。
額然としながらそう呟いた涼君。
あぁ、本当に肉まんあるんだ。
てか、涼君家の冷蔵庫の中身把握している間宮君って一体。
「今日の放課後家まで持ってきて。」
「お前が俺の家こいよ。肉まん食べるのお前「涼。」
制する様に名前を一言呼べばピタリと口をつぐみ、怪訝そうな表情を浮かべる。
「コーヒーブラックで。」
もぞもぞと小さく動くから何事かと思えば、ポケットから数枚の硬貨を取り出しそれを涼君に突きつける。
「お前ろくな死に方しねぇよ。」
「長寿願望無いから別に良い。」
「肉まん喉につまらせればいいのに。」
「…(涼との会話)飽きた。早く買ってきて。」
無表情で押し付ける間宮君も間宮君だが、
しぶしぶながら受け取って席を立つ涼君も涼君だと思う。
「大島さん、僕が重い?」
「ううん。平気。」
チラリとこちらに目線を向けた間宮君に首を横に振って見せた。
そんなに体重をかけていないからか、殆んど重さは感じない。
「へーそう。ならいっか。大島さん逞しいね。」
「………。」
ーーーあたし、褒められてるの?
自分のペースを貫く間宮君。
一体何を考えているのかわから無い。
「少し寝るから。」
「えっ、ちょっと…、」
「また後で……
よろしく、春香。」
ーーーーっ、…また、だ。
唐突なそれはズルいと思う。
うまい事使われて、戸惑うあたしをいい様に使ってる。
今まさに、ほら。
「間宮君もう寝てるよ。そのくせしっかり寝顔はガードしてるし。」
マジマジと間宮君をみつめる千明。
本当、やられた。
どうせまた昨晩あたりで寝ずにシリーズ小説でも読んでたんだろう。
こう言う風眠たそうにしているのが何度もあった。




