第一章・後
手続きを済ませてすぐ、受付カウンターの方から騒ぐ試験生の声が聞こえ――
「おい! なんで端末を渡さないといけねぇんだよ! これは入手したばかりの新品だぞ!」
「ルール上、外部との連絡は制限されています。端末はお預かりします。試験中は、臨時学生証をご利用ください」
「ふざけるな! なんでそんな得体の知れねぇ端末を使わなきゃいけねぇんだよ!」
「支給された臨時学生証で、試験に必要な機能はすべて利用できます」
「そういう問題じゃねぇ! 俺は自分の端末がいいって言っているんだ!」
「申し訳ありません。創星学園のルールについては、入学試験のマニュアルに記載されています。受け入れられない場合は、受験を辞退していただくことになります。……次の方どうぞ」
まだ学生のように見える年齢なのに、受付の手つきと言葉遣いは妙に手慣れている。
予想通りの騒ぎだったが、こうして目の前で起こると、やはり印象が違う。
そろそろ試験の正体を確かめるか。
試験生全員、同じ封筒を渡されている。おそらく内容も同じだろう。
封筒を開けると、一枚の紙が入っていた。
臨時学生証「STAR」を開き、説明動画をご覧ください。
……なるほど、効率的なやり方だな。
スターを操作し、説明動画を再生した――
『こんにちは~! ボクはホシピー、キミのナビだよっ☆』
動画を再生すると、一つ見覚えのある生物が羽に乗って、画面の奥から飛び出した。
……ホシピーか。昨日の件のせいか、少し嫌味に感じた。
『今日は入学試験について紹介するピー! みんなも知っている通り、入学試験は一週間続くピよ~! でも、初日にはもう一つ特別な条件があるピー!』
ふわっとした羽毛のステージの背後に、大きな時計が浮かび上がった。
ホシピーは細いスティックを取り出し、刻みを指した。
『初日の特別条件は、午後五時までに創星学園の正門前に集合するピー! もしできなかったら、一週間続く試験に進む必要はなくなるピよ~!』
初日すら越えられなければ、それまでということか。
周囲を見ると、ほっとした表情の試験生や、舐めるように笑った試験生がいた。
それだけで、本当に大勢の試験生を脱落させられるのか?
そんな疑問を抱きながら、動画を観続けた。
『でも学園の中に入るには、星橋列車に乗るしかないピー! 列車がいる四階に入るには、荷物検査を完了して、スターの機能を開放する必要があるピー!』
荷物検査……何を検査する気だ?
――いや、よく見れば、他の試験生はそれぞれ荷物を抱えている。
もしかして、荷物を持っていない方が少数なのか?
……そうか。「一週間」と聞いたら、何も準備しないはずがない。
もし綾姉が先に言ってくれなかったら、きっと色々準備していただろう。
だが試験自体は荷物を要求されていない。一体どうやって一週間を過ごす?
もしかして、荷物検査も試験の一環だったのか?
その後もホシピーは、動画の演出を交えながら色々と説明を続けた。
まとめると――
初日の午後五時までに正門集合。
荷物制限あり、通信機器は禁止。
列車の移動時間は二十分……のところか。
『でも、荷物検査を済ませたら、スターは改札を通る以外の機能は一時的に使えなくなるピー! だから、ちゃんと考えてから荷物検査を受けた方がいいピよ~!』
試験生たちはそれぞれ反応こそあったが、全体としては「あまり気にしない」といった空気に包まれていた。
だが、次の説明がそんな雰囲気を破った――
『ちなみに、それまでの時間は自由に行動して大丈夫ピー! 試験生には生活ポイントが支給されるピー! 生活ポイントは星橋駅でも使えるピよ~!』
そして――
『一ポイントは一円に相当するピー!』
それを理解した瞬間、会場の雰囲気が一気にざわめいた。
歓声を上げた試験生や動画を閉じて、会場を飛び出した試験生がたくさんいた。
……説明動画はまだ終わっていない。最後まで再生するか。
『ポイントはちゃんと考えてから使う方がいいピよ~! でも、ポイントは依頼をこなすことで手に入るピー!』
……こいつ、さりげなく重要なことを流した気がする。
『もしどうしたらいいのか分からないなら、ボクが一つのアドバイスをあげるピー!』
そしてホシピーは、ふっと声の調子を変えた。
『行動している時、《自由》とは何かを考えてみるピー!』
……本当にマスコットの台詞か、それ。
ホシピーが見えなくなるほど小さくなったと同時に、画面は静かに暗転し、説明動画が終わった。
残されたのは、妙な静けさと、ざわめきだけだった。
……入学試験、か。
この先に何が待っているのか、まだわからない。
だが、それを知るのが任務だ。
――そして、その先にあるものを見極める必要がある。




