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 魔力を扱えるという事は、魔力で自らの身体を強化して能力を著しく上昇させられるという事だ。

 それが身体強化であり、魔力が当たり前に存在するこの世界において身体強化が出来る生物と出来ない生物では生存競争で大きな格差が発生するのは当然の現象と言えるだろう。

 そうした自然の摂理の中で生存する為に馬が変化した姿が魔馬とされている。

 また、魔馬も人と同様に親から子へと能力を遺伝させて次世代に受け継いでいく性質を持っており、優秀な魔馬とは筋力や持久力に加えて魔力が強い個体を指す。

 つまり、人為的に優秀な魔馬同士を掛け合わせる事でより優秀な魔馬を生み出す事も出来る訳だ。

 例えば俺たちの乗るこの魔馬車を引く個体がそれに当たる。

 長旅に備えた荷物に加えて三人の人間を、しかもその内一人は全身を鎧で包んでいる大男を乗せた魔馬車をたった一頭で牽引するこの魔馬は紛れもなく優秀だ。

 しかし、今に限って俺たちの魔馬は一つだけ大きな欠点を抱えていた。

 それは“優秀な個体故に強い魔力を持っている”という点だ。

 いや、それは本来であれば欠点ではない。魔力があればあるほど身体強化の持続時間は長くなり、それだけ息切れせずに走り続ける時間も増えるからだ。

 だが、その強い魔力は少なくともこの場において致命的な要因となっていた。


「遠くにかなり大きな魔喰竜(ましょくりゅう)……! 完全に捕捉されてるよ! 振り切れないと思う! 迎撃しよう!」

「……オチバ・イチジク、魔馬車を任せる」

「わ、分かった……!」


 クラルテの報告でフォルグーンさんが俺に御者台の席を譲り、俺は素早く魔馬の手綱を握る。

 すると遥か遠くから怒号が轟き、空気が振動した。

 反射的に音の発生源である遠方の空に視線を向ければ、灰色の巨体が大空で翼を広げながら此方に近づいて来ているのが確認できる。


 ────何だあのでかさ⁉ この距離であの大きさかよ⁉


 視界に収まるのは巨大な竜だ。

 非現実的とも言える光景だが、しかし残念ながら俺はこんな非現実的な光景を既にこの旅の中で何度か経験してしまっていた。

 あの灰色の巨大な竜は“魔喰竜(ましょくりゅう)”と呼称される生物らしく、魔喰と呼ばれるように“魔力を宿したものを喰らう竜”との事だ。そしてこの魔喰竜というのは魔力を感知する力があるという。

 要するにこの魔喰竜は俺たちの優秀な魔馬が垂れ流していた強い魔力を感知して追ってきたという訳だ。  

 人の手により長距離移動用に特化育成された俺たちの魔馬は野生の魔馬よりも強い魔力を持つ。この世界の自然界において、こうした“強い魔力を持ちながら戦闘能力を持たない生物”は“魔力を持った生物を主食とする生物”にとって格好の獲物でしかない。

 だから“他よりも強い魔力を保有する”という点は、この場において非常に致命的な要因となってしまっていた。


「フォルグーンさん! あの魔喰竜、ボクの魔力を見て少し警戒したよ! きっと戦い慣れてる!」

「……あの大きさだ。相当な場数を踏んでいるに違いない。あれは人との戦い方を知っているな。私たちを脅威と認識してくれれば諦めて逃げてくれるかもしれないが……。逆に私たちを確実に仕留められる獲物と認識したなら逃げてはくれないだろう」

「あれは考えるまでもなく後者だろ! 俺があの魔喰竜ならこの図体差で逃がす理由なんて見つからねぇよ‼」


 これまでもこの旅路の中で何度か魔喰竜を始めとした魔物や魔獣と遭遇してきたが、ここまで巨大な魔喰竜と遭遇したのは初めてだ。今まで遭遇した魔物・魔獣らが乗用車やヘリコプターくらいの大きさと仮定するなら、この魔喰竜は旅客機ほどの大きさと言っていい。 


「……そうだな。私も君と同意見だ。私の経験上、あの魔喰竜は私たちを逃がしはすまい。さて、となるとここで何とかしてあの魔喰竜を退治しなくてはならない訳だが……。何か妙案はあるだろうか?」

「魔力勝負で打ち勝つ! っていうのは流石に難しい作戦かな?」

「……純粋な魔力勝負なら魔喰竜の魔力量次第で勝つ見込みはあるか。しかし、あの巨体に伸し掛かられては私たちならまだしも魔馬はひとたまりもあるまい」


 あの図体に伸し掛かられたら普通は魔馬でなくともひとたまりもないと思うのだが、二人の反応からするにそう思う俺は少数派なのだろう。


「……ここで魔馬は失えない。魔力勝負を仕掛けるにしても状況を整えたいところだな」

「確かにそうだね……。う〜ん、じゃあ何とかして魔喰竜に飛び移る、とか?」

「……なるほど。だが私はあまり魔力量に自信がない。そうだな。私が隙を作り、オチバ・イチジクがその隙を見計らって魔馬車を魔喰竜に寄せ、そこでクラルテ・フライハイトが魔喰竜に飛び移り魔力勝負を仕掛ける。これで行こう」

「うん! よーし! じゃあボクは魔馬車の上で待機するね!」

「……では、私は先に行かせてもらう」


 次の瞬間、フォルグーンさんは即座に作戦行動へと移っていた。魔馬車から飛び出すと同時に背負った大剣を抜き、魔喰竜に向かって地を駆けていく。

 そして俺はそんなフォルグーンさんを見送りながら……。


 ────え……? 今、すごい重大な役目を任せられなかったか……?


 魔馬車を魔喰竜に寄せるなんてとんでもない役目を言い渡されたことに頭が混乱していた。


「オチバ! 気をつけて‼」


 クラルテの声が聞こえた瞬間、上空から強い光が(ほとばし)り目が眩む。


「うお⁉ 何だ……⁉」


 驚きのあまり思わず手綱を強く引っぱってしまって魔馬が速度を緩めたその直後、俺たちの進行方向に熱球が落ちて爆発し、一瞬にして地面が(えぐ)れ、大きな(くぼ)みが眼前に形成されていた。


「危ねぇ⁉ くっ⁉ 曲がるぞ‼」


 状況に動転しつつも目の前の危険を回避する為に進行方向に発生した窪みを避けるよう手綱で魔馬に指示を出す。 


「あいつ……⁉ 今の計算づくか⁉ これだけ距離が離れてるのに俺たちの動きを予測して今の熱球を飛ばしやがったのかよ⁉ 偶然手綱を引っぱってなきゃ間違いなく直撃してたぞ⁉」 

「知能はかなり高いみたいだね……!」


 闇雲に走るのは危険と判断して魔喰竜の動向に注意を払えば、魔喰竜は二発目の熱球をまさに生み出している所だった。

 俺たちの動きを予測して攻撃できる相手だ。今度も避けられるかどうかは分からない。

 速度を維持するか、減速するか。

 直進するか、進行方向を変えるか。

 そしてそれらはどのタイミングで行うべきか。


 ────熱球が落ちてきた速度を考えたら悩んでられる時間はねぇ……⁉ どうする……⁉


 決めきれない選択肢が頭の中を埋め尽くす。


「……っ⁉」

「オチバ……!」

「ああ! 分かってる……!」


 だが、思考の最中でその不安は無くなっていた。

 地上を走るフォルグーンさんが跳び上がり、魔喰竜に急接近する姿が見えたからだ。

 魔喰竜は目の前に躍り出たフォルグーンさんに熱球の狙いを変えて放ち、フォルグーンさんは放たれた熱球を大剣で防ぐ。

 そして大剣で弾かれると熱球は爆発し、その衝撃を利用してフォルグーンさんはそこから更に高く跳んだ。 

 魔喰竜が俺たちを襲う為に高度を下げていたこと。

 熱球の照準を定める為に速度も落としていたこと。

 全ての要因が重なってフォルグーンさんが魔喰竜の上を取った。

 フォルグーンさんに頭上を取られた魔喰竜は即座に回避行動に移ろうとするが、その巨体が仇となっている。真上に跳んだフォルグーンさんの攻撃を回避するには瞬間加速が足りない。魔喰竜がその場から移動するよりも、フォルグーンさんが大剣を魔喰竜の頭上に振り落とす方が速かった。 

 フォルグーンさんの一撃は見事魔喰竜の脳天に命中し、轟音と共に魔喰竜が大空から墜落する。

 それは間違いなくフォルグーンさんが作った隙だった。


「クラルテ‼ 振り落とされんなよ‼」

「分かった!」


 魔喰竜と同様に高所から落下するフォルグーンさんの安否も気になるが、フォルグーンさんが作ってくれたこの機会を無駄には出来ない。

 俺は全速力で魔喰竜の下に接近するよう魔馬に指示し、クラルテは急加速しながら方向転換する魔馬車に振り落とされないよう注意しつつ魔喰竜に飛び移るその時に備える。

 しかし、魔喰竜は僅かに失神しただけのようで地面に激突する前にその意識を取り戻していた。

 それでも、全力で駆ける魔馬は俺たちをしっかりと魔喰竜の真下にまで届けてくれている。


「行け‼ クラルテ‼」

「うんっ‼」


 返事と同時にクラルテが上空の魔喰竜に向かって飛び跳ねた。

 クラルテは激しい光を放つ魔力の剣──光剣をその手の中に作り出し、魔喰竜に突き立てる構えを取る。

 だが、魔喰竜もクラルテの光剣が放つ強い魔力の気配を敏感に察知し、反応した。

 魔喰竜はけたたましい咆哮を上げると半透明な障壁を展開し、クラルテの光剣を迎え撃つ。この世界の不思議な現象は大抵の場合において魔力で説明できる。恐らく魔喰竜の生み出したこの障壁も魔力による産物とみて間違いない。 

 光剣の魔力と障壁の魔力による衝突。

 つまり、クラルテと魔喰竜の魔力勝負だ。


 ────後はクラルテが魔力勝負に勝てば……‼


 俺は落下したフォルグーンさんの回収に向かいながらクラルテと魔喰竜の勝負の行方を見守る。


「よし……‼ クラルテが押してる……‼」


 光剣が障壁を突き破り、クラルテが魔喰竜に肉薄した。

 クラルテは突撃の勢いを落とさず、光剣を魔喰竜の胸に突き立てる。

 だが、光剣は僅かに魔喰竜に突き刺さるものの、先端が刺さった所で勢いが止まってしまった。


「っ⁉ そうか⁉ 魔喰竜も身体強化をしてやがるから⁉」


 魔喰竜本体を強化している魔力が光剣の勢いを押し留めたのだ。


「じゃあここからが本当の魔力勝負って訳か……! 頑張れよ……! クラルテ……!」


 クラルテの光剣が魔喰竜を穿(うが)とうと激しく光を放つが、魔喰竜も光剣を押し返すべく魔力で身体強度を高めているのだろう。光剣はそれ以上魔喰竜に突き刺さらない。

 と、ここで空中のクラルテがその場から横へと跳んだ。


「あれは……! この前見せてくれたよく分かんねぇ空中移動……!」


 クラルテは先日のラスバブとの戦闘で“魔力を空中に固めて蹴って跳ぶ”という技を習得していた。本人曰く、何となくやってみたら出来たとの事だが……。本人が説明できない原理を俺が説明できる訳もない。 

 しかし、ともかく自由に空中に足場を形成できるクラルテは立体的な動きで魔喰竜の周囲を縦横無尽に高速移動していた。

 魔喰竜は首を回してクラルテの動きを追っているが、動きを追えているだけのようだ。四方八方から光剣を斬りつけるクラルテの攻撃に反撃らしい反撃はせず、身の守りを固めている。もしかするとクラルテが疲れるのを待っているのかもしれない。

 動き続けるクラルテとじっと機を窺う魔喰竜。当然魔力と体力の消費が激しいのはクラルテの方だ。

 だが、そうして魔喰竜が受け身の姿勢に入った瞬間をクラルテは逃さない。

 接近を許されたクラルテが次に取った行動は、魔喰竜の背後に回ってその背に張り付く事だった。


「空中戦が続けばクラルテは跳び続ける為に必要以上の魔力を消費する必要がある……! けどこれでクラルテは正真正銘全力の魔力勝負が出来るって訳だ……! 決めてくれ! クラルテ!」


 クラルテが魔喰竜の背に張り付いてからの魔喰竜の挙動は明らかに変化していた。クラルテの驚異的な魔力を感知したからだろう。クラルテを振り落とそうと空中で暴れ狂っている。

 それでもクラルテは魔喰竜の背から離れない。

 魔力勝負に集中するクラルテと魔力勝負をしながらクラルテを振り落とそうと暴れる魔喰竜。

 立場は逆転した。先に力尽きるのは魔喰竜の方だ。


 だからなのだろう。このままでは自身が敗北すると理解した魔喰竜は俺たちが予想打にしていない行動に出ていた。


「あ……? お、おい⁉ まさかあの魔喰竜……⁉」


 クラルテを振り落とそうと空中で暴れていた魔喰竜だったが突如その動きを落ち着かせ、()()()()を凝視する。


「嘘だろ⁉ ここでその判断が出来んのか⁉」


 凝視するという事はそこに意識を向けているという事だ。

 では魔喰竜はいったい何処に意識を向けているのか。

 それはこの場において俺が誰よりもよく分かっている。

 何故なら俺と魔喰竜の視線は完全に交差していたからだ。


「あいつ⁉ クラルテを退かす為に俺たちを狙って……⁉ そこまで知能が高いのかよ⁉」


 既に魔喰竜は地面を走る魔馬車に狙いを定めて急降下し始めている。

 回避は無駄だ。クラルテを魔喰竜に跳び移らせる為に近づき過ぎてしまった。魔喰竜が落ちてくるまで幾許(いくばく)かの猶予はあるが、その時間内に魔馬車が魔喰竜の攻撃圏外へ逃れられるとは思えない。


「くっ……‼ ごめん、フォルグーンさん……!」


 俺は進行方向先の地面に伏すフォルグーンさんに謝罪する。

 だが、それは“魔喰竜の攻撃にフォルグーンさんを巻き込んでしまった”という事に対しての謝罪じゃない。


「フォルグーンさん‼ 怪我してるかもしんねぇけど頼む‼ こっちに来る魔喰竜を何とかしてくれねぇかな⁉」


 この謝罪は全てフォルグーンさんに丸投げする事に対する謝罪だ。 


「…………すまない。少し意識が飛んでいた。大丈夫だ。怪我はない。引き受けよう」


 そう口にしたフォルグーンさんは大剣を杖代わりにしながらゆっくりと立ち上がり、走る魔馬車(こっち)に向かって走り出す。

 フォルグーンさんの速度は一気に最高速度へと達し、次の瞬間には魔馬車とすれ違っていた。

 俺は少し遅れてフォルグーンさんとすれ違った事に気付き、後方の状況を確認する。

 大きな鈍い打撃音が響いたのはそれから直ぐの事だ。

 フォルグーンさんは斬り上げの要領で魔喰竜を顎下から打ち上げていた。

 今の一撃で魔喰竜は再度失神したようで、仰け反りながら地上に墜落する。

 また、急降下してきた魔喰竜の突進を一身で受けたフォルグーンさんはその衝撃で大空に舞い上げられていた。

 とはいえ、身体強化された肉体なら重症とまではいかないだろう。 

 失神して抵抗できなくなった魔喰竜に関してはクラルテに任せておけば大丈夫の筈だ。

 俺は今度こそフォルグーンさんを回収する為に魔馬車を走らせるのだった。



 ◆◇◆


 

「今回ばかりはマジで肝を冷やしたぜ……」

「……そうか。だが先の戦闘で君は適切な判断を下せていたと思う。魔馬が無事だったのは君のお陰だ。胸を張って良い」

「そうそう! みんな無事で魔喰竜も退治できたんだから最高の結果だよ!」


 巨大な魔喰竜を何とか退治した俺たちは応急手当をした後、再びハウデムに向けた街道を進んでいた。


「無事っつってもお前ら結構ボロボロじゃねぇか」

「でも大怪我はしてないよ? まぁ、激しく動いたから装いはボロボロだけどね」

「……ああ。身体強化をしていたからな。私も見た目ほどの怪我はない。打撲程度で済んでいる」


 身体強化というのは本当に便利なものだ。クラルテもフォルグーンさんもあれだけ派手な戦闘を繰り広げたというのに骨折一つしていない。さっきの戦闘における二人の一番大きな外傷はクラルテが擦り傷で、フォルグーンさんは打撲。身体強化様々(さまさま)だ。魔力を持たない俺からすれば身体強化を使える二人が本当に羨ましい。


「……それよりもだ。想定より魔力を消費してしまった。今は魔力の回復に意識を割いていてあまり周囲を警戒できていない。十分に気をつけて走ってくれ」

「あ、警戒ならボクがしておくからフォルグーンさんは安心して回復に努めてよ。ボクもたくさん魔力を使ったからそんなに調子は良くないけど魔力量にはまだ余裕があるからね!」


 二人とも怪我こそ心配ないようだが消費した魔力についてはかなり気にしている様子だ。


「なぁ、だったら暫くは魔馬に魔力を抑えてもらってゆっくり進もうぜ? 二人とも調子が悪いならまたさっきみたいなのが来たらもっと手こずるって事なんだからさ」  

「そっか! あの魔喰竜が寄ってきたのも身体強化した魔馬の魔力を感知したからだろうしね! 周囲を警戒する為の魔力も節約できるし良い考えだと思う!」

「……そうだな。街道を進んで八日が経つ。そろそろハウデムに続く分かれ道が見える頃合いだ。速度は落ちるが万全の状態を優先する方針は悪くない。私もオチバ・イチジクの提案に賛成だ」


 意見が纏まった俺たちは魔力の回復を優先し、魔馬車の速度を落として走らせる。



 フォルグーンさんが口にした通り、俺たちが街道を進んでから八日が経過していた。

 この旅路の中で既に幾度も魔獣やら魔物やらと遭遇している。余談だが魔獣と魔物の違いの定義は、誕生の差異との事だ。魔獣は自然界の中で自然に誕生した存在であり、魔物はそれ以外の方法で誕生した存在との事らしい。まぁ、あまり深く考える必要もない話だ。

 とにかく、先程の魔喰竜のような強力な個体との遭遇はこの八日間で初めての事だった。恐らく俺たちは強力な個体が出現する地域に足を踏み入れたのだろう。 

 以前、フロンツィエ辺境伯を父に持つルフナから“東の国境線周囲の地帯には魔獣や魔物が多く生息している”との話を聞いた。

 その原因はこの東の国境線周囲一帯に亜人の集落が多く点在している事が関係している。


 ────そういや昨日あたりからちょいちょい遠くの方で人里っぽいのを見かけるようになったな。


 元々亜人差別が根付くロイライハ帝国と亜人たちの関係はあまり良好とは言えない。

 フロンツィエ辺境伯は魔獣・魔物を討伐する為とはいえ、“強力過ぎる戦力を頻繁に亜人集落の鼻先に派遣する事はロイライハ帝国と亜人たちの関係に大きな溝を作ってしまう”と懸念しているのだろう。

 要するに、魔獣・魔物の討伐に少ない頻度で少人数しか派遣できていないから東の国境線付近には他の地域よりも強力な魔獣・魔物が生息しているという訳だ。


 ────つーか、このままじゃ借りが膨れ上がる一方だぜ……。


 この八日間ですっかり俺はフォルグーンさんに沢山の借りを作ってしまっていた。主に魔獣・魔物との戦闘関連だ。勿論、クラルテにも数え切れないほど助けられている。


 ────まぁ、ぶっちゃけ返せる量の借りじゃねぇけど……。


 せめて二人が魔力を回復する間くらいは俺が気を張るとしよう。

読んでいただきありがとうございます。

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