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最弱の勇者、ロト  作者: ぜんじろう
1/8

1 ニング村のロト 前半

 

  遠くに青く存在感を見せる、ウロダル山脈が見える。

  鳥達が澄みきった大空で翼の優雅さを競っている。

  日に日に暖かくなり、冬の終わりを感じさせるが、時折、ウロダル山脈から吹き下ろす寒風が、まだ、冬が終わってないこと知らせていた。

  豊かでないが、貧しくない。そんな平凡な村にロトは生まれた。


  冬の寒さに耐えた麦畑の脇で、ロト達は春から夏に掛けて収穫する野菜の種まきの準備をしていた。

青みがかった黒髪、少し赤みを帯びた茶色い瞳、今年で12歳になるロトは、他の同年代の子供達比べて背が低く、身体の線が細かった。

  他の村人に混じってロトは畑を耕していた。

  今年、12歳になるロトは、他の同年代の子供達に比べて身体の線が細く、鍬を振るう仕事は危なく思えた。

  しかし、ロトは鍬の重さを上手く利用して、手際良く耕していく。幼い頃より手伝ってきたので、手慣れものだ。


  「ほら、そこが終わったら、柵の修理だ」

  育ての親である叔父のマークに言われて、畑を耕し、一息付いていたロトは答える。

  「うん、わかったよ」

  ウロダル山脈から吹き下ろしに身震いするが、グッと気合い入れてロトは、木槌や縄を抱えて作業に入るのであった。

 

  ロト達が住むニング村は、人口が100人ほどの村であり、大陸の北西部に位置するファレーズ王国に属していた。

  ニング村は、ファレーズ王国の王都であるファレールングから徒歩で半日ほどの距離にある。

 王都に比較的に近いという事で、ニング村では、収穫した野菜や近隣の森で狩った動物の肉や毛皮を王都に売りに行き収入を得ていた。

  贅沢をしなければ、それなりに豊かに暮らせる、そんな村である。

 

  1日の作業終えたロトは、村の近くの川まで来ていた。


  「くぅ〜冷たい〜」

  ウロダル山脈からの雪解け水は冷たく、身体を拭くと作業でかいた汗を一気に引かせた。

  「でも、気持ちいいや」

  木綿の手ぬぐいで身体を吹き、顔洗ってロトは呟いた。


  「きゃあああああ」

  突然、甲高い女性の声が響いた。


  「え、なに」

  ロトは、声が聞こえた方向を見た。

  「こっちから聞こえたよ、ね」

  本当なら誰か、大人の助けを呼びに行かないといけないのにロト、フラフラと声の聞こえた方へ歩いていった。

 

 茂みを掻き分けて覗くと、数人の騎士らしき人達と黒く大きな犬みたいな生き物と戦っていた。


  「あ、あれはワイルドウルフじゃないか。なんでこんなところに」

  ロトは恐怖で顔を青くしながら呟いた。王都から近いニング村の周辺で魔物に出会うことなどほとんどない。早く助けを呼ばないと、と頭の中ではわかっているが、ロトは騎士達と魔物との戦いから目を離すことが出来なかった。


  騎士達は金髪の女の子を守っている。ロトと同年代だろうか。先程の悲鳴はあの子だろう。騎士達は5人。ワイルドウルフは3匹。

  魔物は強く、どう猛だ。たまに現れる低級とさせる魔物でも村の大人が数人で、やっと倒せるぐらいだ。

  ワイルドウルフは低級とされている。若い個体が新しい縄張りを求めて移動する。あのワイルドウルフ達もそうなんだろう。


  騎士達は互いに連携してワイルドウルフ達に攻撃している。1人の騎士が真ん中のワイルドウルフに斬りかかる。ワイルドウルフは後ろに飛び避ける。それと同時に左右のワイルドウルフに騎士達が2人ずつ斬りかっかっていく。1人の騎士が剣を横に払い、ワイルドウルフの鼻を切り行く。ワイルドウルフは左に飛んで避ける。避けたワイルドウルフが着地すると同時に別の騎士が、頭上から剣を叩き付ける。避け損ねたワイルドウルフの胴体から鮮血が噴き出る。

  しかし、ワイルドウルフの闘志が失われたわけではない。牙をむき出しにし、目を真っ赤に充血させて傷付けた騎士を威嚇しいる。そんな騎士達と魔物達との闘いをロトは恐怖を忘れて、食い入る様に見入っていた。


  均衡が破れたのは、一瞬だった。右側のワイルドウルフを攻めていた騎士が、ワイルドウルフの前足の攻撃を左側に飛んで避けた。しかし、飛んだ先は真ん中に位置したワイルドウルフの目の前だった。獲物を目の前にしたワイルドウルフは、すかさず騎士の左足に噛みつき投げ飛ばした。投げられた騎士は、地面に叩きつけられて、そのまま木にぶつかってうごかなくなった。


  「やっぱり、助けを呼ばないと」

  ロトは再び意識した恐怖で、震え出した足を無理矢理動かして、駆け出そうとした。

  「ひっ、きゃ」

  小さな悲鳴が聞こえた。ロトが振り返ると、あの金髪の女の子の前にワイルドウルフが迫っていた。傷ついた騎士を助けようと、1人の騎士が動いた為に、騎士達と女の子との間に間隙が出来てしまったのだ。

  あの女の子を助けないと、とロトは思った。でも、すぐに自分じゃ無理だ、と思い直して駆け出そうとした。その時、ロトの頭の中に声が響いた。

  『また、後悔するのか』

  仮に助けが間に合ったとしても、あの女の子と騎士の何人かは死んでしまうだろう。今、助けられるのはロトしかいない。このまま、駆け出してしまえば、きっと、後悔するだろう。あの時のように。考えた時間は一瞬だった。

 ロトは足元の石を拾うと、女の子に迫るワイルドウルフに、おもっきり投げ付けて、茂みから飛び出した。


  投げた石はワイルドウルフの側頭部に命中した。

  「うぉおおおおおお」

  動きが止まったワイルドウルフに、ロトは身体をぶつけた。振り返り女の子を見た。

  「大丈夫?」

  いきなり現れたロトに女の子は、戸惑っている様子だった。

  「え、あ、ええ」

  ロトは、女の子の顔をジッと見た。鮮やかな金髪、勝気な眉、そして宝石のような青い瞳。村に物語を語りに、時よりやってくる吟遊詩人から見せてもらった神の時代のお話に出てくる女神様の絵にそっくりだった。なんて綺麗なんだ。とロトは素直に思った。見惚れてしまい、次の言葉が出て来ない。

  「あ、あぶない」

  女の子が叫ぶ。ロトが振り返えると、先程のワイルドウルフが飛び掛かってきた。身体の細いロトがぶつかった程度じゃ、大してダメージを負うはずもなく。邪魔をしてくれたロトに、牙の制裁を加えようと飛び掛かって来たのであった。

  ロトは、とっさに地面にあった枝を前に突き出した。そこに飛び掛かって来たワイルドウルフの口があり、そのままワイルドウルフの上顎に突き刺さった。

  「キャウン」

  ワイルドウルフが痛みに悶える。

  「でかしたぞ、少年」

  ロトではなく、女の子を助けようと駆け付けて来た赤髪の騎士が、剣を上段に構えて、痛みに悶えるワイルドウルフに体重を乗せて、剣を振り下ろした。ワイルドウルフの首が飛ぶ。

  「よし、1匹倒したぞ」

  血の付いた剣を払いながら、赤髪の騎士が叫ぶ。

  「少年、そのままその方を守ってくれ」

  赤髪の騎士は、ロトの目を見ながら言った。ロトは女性なんだ、と思いながら、女性にしては背の高い赤髪の騎士の目をしっかりと見ながら答えた。

  「は、はい」

  「よし、頼んだぞ」

  そう言うと、赤髪の騎士は踵返して、仲間の騎士達の助けに走って行った。


  1匹を倒し優勢になtら騎士達が、残りのワイルドウルフを倒しに行く。仲間を倒されて焦ったのか、ワイルドウルフの動きが鈍くなってきたような気がする。左側にいたワイルドウルフに騎士が斬りかかる。ワイルドウルフがなんとか避ける。ロトは女の子を背にしながら、また騎士達の戦いを食い入るようにみていた。

  左側のワイルドウルフは体力が尽きてきたのか、明らかに動きが悪くなってきていた。騎士達は、この好機を逃さないように、一気に仕留めに行った。

  横から払われた剣をワイルドウルフが、飛び下りながらなんとか避ける。距離を取らさないように、先程の赤髪の騎士が、すばやく距離を詰めて、右上から袈裟斬りのように切る。剣がワイルドウルフの左の前足の付け根に食い込む。すかさず、別の騎士がトドメを刺す。胴体を剣で貫かれたワイルドウルフは、ちからなく地面に横たわった。

 

  「やった!」

  その光景を見つめていたロトは、思わず叫んでしまった。

  その一瞬だった。最後に残ったワイルドウルフが、自暴自棄になったのか、ロト達に向けて走り出した。

  2匹のワイルドウルフを倒して、気が緩んだろうか、最後のワイルドウルフを包囲しようとしていた騎士達は、足が止まってしまった。ワイルドウルフは、包囲しようとしていた騎士達の間をジグザグに抜けると、真っ直ぐにロト達に向けて飛び出した。


  ロトは、近付いてくるワイルドウルフから目を逸らさずに立ち尽くしていった。タイミングよく横に避ければ、ワイルドウルフの凶暴な牙から逃れることができる。でも、そうすると、後ろにいる女の子を守ることは出来ない。

  ロトは、女の子を覆い被さるように女の子に抱きついた。その瞬間、右肩に激痛が走った。

  あまりの痛さに意識を失いそうになるロトは、今にも泣きそうな女の子の顔を見て、ケガをしてないことを確認すると、安心したように、意識を手放したのであった。

 


 

 


 

 

 

 

 




 




 

 

 

 

はじめての投稿です。

拙文で申し訳ないですが、読んで頂ければ、幸いです。

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