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とても怪しいラブコメ短編集  作者: 流離の風来坊


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8/45

ザ・マーメイド

元ネタです。https://ncode.syosetu.com/n0064lf/2 の最下部にあります。

ラノベの痛いタイトル。


『異世界の白い部屋だと思ったら義妹の白い下着の中だった恐怖』

『幼馴染の靴下に穴が開いてるザマァ! から始まる恋愛下剋上』


これを合体させた物語となります。一応、現代恋愛ジャンルです。

 僕は現在、体育館裏で人を待っている。

 相手は一つ下の一年生、とびっきりの美女で可愛いと評判の女子だ。

 名前を星奈優(ほしなゆう)ちゃんという。


 彼女は入学以来、早くも告白の山を作り、惨敗した屍のような男子を量産していた。

 告白があまりにも成功しないので、罰ゲーム嘘告の際にはこうやって利用されてしまう。

 可哀想な乙女でもある。


 僕は村上。ある時を境にしてボッチをやっている。陰キャと呼ばれる生徒だ。今回は嘘告をしろという罰ゲームでわざと負けてここに居る。巻き込まれ罰ゲームをしたのはボッチ系の僕の友達ばかりだった。陽キャの数人が音頭を取って巻き込んできた。そこで僕はわざと負けたわけ。


 体育館裏の僕の背後には陽キャたちが隠れて様子を眺めて楽しんでいる。

 はぁ、しんどい。


 待ち合わせの時間が来た。すると彼女もやってきたようだ。


「……お待たせしました」


 彼女は視線を僕の背後に集中させていた。少しご機嫌が悪そうに見える。

 嘘告に自分が使われているのを分かっているのだろう。同情心が芽生えた。


「こんなところまで来てくれてありがとう。星奈さん、今までも男子から告白されて迷惑をしていると知っているけど、申し訳ない。きっぱり振ってくれていいから、僕にも告白させて欲しい。僕は村上浩紀(むらかみひろき)。二年生だ」


 彼女は僕の後方にある陽キャの隠れ場所から視線を戻し、僕の顔をじっと見ながら目を見開いた。

 いつもの男子とは違う告白だったのか、すぐに返事を返してくれなかった。

 後ろの方から「やれやれ、もっと話せ」、「早くフラれろ」という(ささや)き声がする。


「……」


「星奈さん、君の事が好きだ。お互いに知らない間柄だが、これからは親しく、仲良くなりたい。友達として少しずつ付き合って欲しい。よろしく」


 手を彼女の前に差し出す。握られたら成功、ダメな場合は「ごめんなさい」だ。


 少しだけ時間が経ってから手を柔らかいものが包んだ。

 彼女の小さく可愛い手だった。


「えっ……」


「わたしのほうこそ、よろしくお願いします。村上先輩」


 彼女の眼は僕の背後を捉えていた。キッという目つきをしている。


 ざわざわ…… ざわざわ……


(おい、成功しちまったぞ)

(話が違うじゃないか)

(なんで、あんなヤツが成功するんだよ)

(おい、どうする、邪魔するか?)


「……行きましょ、村上・せ・ん・ぱ・い」


 何という事だ、入学早々、学校を代表する美少女となった星奈さんに

 僕は手を繋がれ引っ張られている。


・・・・・


 この一般男子が学校一の美少女と恋人同士になるというのは通常あり得ない。

 もちろん、僕達にも秘密はあった。


「もういいかな、校門を出たよ。ありがとう、面倒をかけたね」

「ダメ」

(ゆう)ちゃん。ちょっと……もう大丈夫だって」

「イヤ」


 彼女はつないでいた手を外し、改めて指を絡ませ恋人繋ぎをしてきた。

 そう、僕と彼女は義理の兄妹だ。彼女は旧姓のまま星奈を名乗っている。高校の入学を機に、僕の姓と同じにするかどうか考えたが、彼女はこう言っていた。


『同じ姓だとイチャイチャしても兄妹でしょ、それじゃお兄ちゃんに告白してくる女の子を防げないもん。姓が別だからこそ、いいのよ』


 優はお兄ちゃんっ子であり、理想の兄ができたと大喜び。

 それ以来、べったりであった。

 ただ、正式な彼氏彼女になっているわけではない。

 優は僕の事を好きだと告白しているが、僕は兄として受け入れてはいない。


「ねーねー、これで公式カップルになったね。むっふー」

「優ちゃん、今回は僕の罰ゲームで迷惑をかけたね、約束通りお礼に何か奢るよ」

「カフェに行きたい。あと名前呼びは、ちゃんなしで」

「分かった。カフェで奢るのはお礼じゃなくても、いつもやってるけど」


浩紀(ひろき)っ。細かいことは良いの」

(ゆう)はいい子だな」

「もっと甘やかしてっ褒めてっ」


 僕は思っていた。キスぐらいおねだりされたらいいのにと。

 最寄り駅に近いカフェに着いた。僕たちは窓際の二人席に座った。

 メニューを目で追う。ミカジューとかいう変なドリンクは記載されてなかった。


「お兄ちゃん、何にする?」

「そうだなぁ……」

(お兄ちゃん、しゅきっ!)ボソリ唐突

「ん、優ちゃん、何か言ったかい?」


 すでに名前呼びは忘れ去られていた。もちろん鈍感系主人公にシフトチェンジだ。


 一方、二人の後を尾けて来ていた陽キャたち。


「星奈さんを狙っていたのに、なんだよこれ」

「近くで観たら本当に可愛くて奇麗だったな」

「俺、ちょっとショック。こっそり狙っていたのに」


「村上が選ばれるだなんて何があったんだ」

「俺達より村上の方がモテるということだろ、単純に」

「明日から彼を真似して陰キャになろうかな」


 この陽キャたち、罰ゲームは主催したが、そんなに悪い連中ではなかった。

 もちろん、イジメに発展することもない。寧ろ村上のようになりたいと考えて努力する。彼ら陽キャというのは良いと思ったら取り入れる姿勢を持つ、だから陽キャになる。


「あれ? 村上と星奈さん、すんごい仲良くなってる」

「カフェにいるところ、じっと見るなよ」

「モテると言われる俺たちも、まだまだだな」

「カフェに入って、おめでとうって言ってやるか」


 カランカラン


「「いらっしゃいまっせーーーっ」」


「おっと、クラスメイトの村上浩紀じゃないか、どうした? おや、その子は?」

「へぇ、村上にも彼女がいたんだ」

「浩紀、えらい可愛い娘じゃないか、隅に置けないな」

「俺、浩紀の親友なんだ、君の名前は?」


「ああ、お前らか、彼女連れでごめんな。彼女は星奈さん」

「あ、あの……、わたし、星奈優といいます。浩紀のお友達ですか?」


「……(か、かわいい。そしてもう呼び捨て!)」

「……(笑顔を俺に向けてくれてる)」

「……(あー、なんだよー、むらかみー)」

「……(可愛すぎて言葉が出ねぇ)」


「あ、あの……お客様、どちらの席にお座りになられますか?」


 優のあまりの可愛さに我を忘れ感動した陽キャ連中、素直に少し離れたテーブル席に座る。


「おれ、いつものやつ、ミカジュー」

「それなら俺はユキジューにしようかな」

「俺はサキュ・ジューにするか」

「お前らツウだな」


 ラノベではよくあるトラブルは全く起きず、平和な時間が過ぎていった。


「じゃみんな、僕達先に帰るよ」

「失礼しまーす」


「おう、明日またな」

「教室で」

「おめでとう」

「彼女を大切にな」


「あの……、先輩方、浩紀をよろしくお願いします」ペコリ


「うん……(めっちゃ可愛い)」

「ああ……(あかん、ホレたわ)」

「はい……(誰だよ、嘘告イベントにしたやつ)」

「おう……(星奈さん、星奈さん、優ちゃん、優ちゃん)」


 カラン カラン


「「ありがとうございましたー」」


・・・・・


【村上と星奈の自宅】


「ふぅ~、疲れたぁ」


 リビングのソファにバタンと倒れ込む。その瞬間、目を瞑った。


「お兄ちゃん、お疲れさま。フフフ……私たち公認カップルね」


(スースースー)


「寝ちゃってる……。お兄ちゃん、ストレスで疲れちゃったのかな。可愛い寝顔」


 優はリビングのカーテンを引き、部屋を暗くしたうえで、ふわっと何かを兄の顔に掛けて、さらに暗くしてあげる。アイマスクの代わりだろう。彼女はとても優しい。


・・・・・


【夜】


「ここは……白い部屋……いつの間に眠ってたのか……短い時間だったけど、よく寝たな。ん?」


 僕が目覚めた時、顔に布が掛けられていた。白い布だった。

 手に持って眺める。その布は義妹である優の白いブラだった。


「お兄ちゃーん、起きたのー?」

「ああ、ごめん、精神的疲労で気絶していたようだ」


「あ……」


 モジモジしはじめる優。


「優ちゃん、白いブラがこんなところにあったんだけど」

「か、返して……」

「ショーツだったら変態になるところだったぞ」

「ふふ……。お兄ちゃんだったらいいもん。どーーーん」


 まだソファに寝転んでいた僕に、彼女が勢いで抱き着いてきた。効果音付きだ。


「今日はごめんな。嘘告白に付き合わせちゃってさ」

「お兄ちゃんが困ってたら私は助けるわ。気にしちゃ嫌よ」

「明日からカップルの振りをするのか……上手くいくかなぁ」

「お昼休みにはお弁当持って行くからね。手作りの!」


「手作り弁当かぁ、可愛い妹だなぁ~」


「あ、()()()()が開いてるよ。ここ」

「ほんとだ。また買わなきゃな」

「次の休みにショッピングモールに行こ?」

「ああ、いいよ」


 やったー! デート、デートー


【ショッピングモール】


「あ、お兄ちゃん! コンサートやってるよ」

「見に行こうか」

「ザ・マーメイドってグループだわ、すごく運がいいよ」


「ザ・マーメイドっていうんだ。知ってるのかい?」

「今、流行りの有名な作詞作曲家のグループね。世間を席捲してるわ」


「へぇー、ダジャレに笑ったぞ」

「失礼ね、そういうお兄ちゃんは嫌い」


「始まるみたいだ」

「もう……」


 プンッと顔を逸らした義妹はとても可愛かった。


「「「ザッッマァァァァァァァーーメイドぉぉぉぉぉぉ」」」


「ファンが一杯いるな」

「離れようっか。ちょっとファンの歓声がすごいね」


 しかし、歓声がザマァにしか聞こえなかった。これは指摘したら駄目だろうか。


「ふぅ~、ちょっとお化粧直しに行ってくるね」

「僕も行くよ」


 僕は先に用を足して近くのベンチに座っていた。

 少し先にゲームコーナーがあるのを発見し、あとで優と一緒にぬいぐるみでも取ろうかと、様子を見に近づいて行った。


 しかし僕はトイレから離れるんじゃなかった。優は美少女、単独で居ればすぐにナンパに遭ってしまう。ゲームコーナーを観てから戻ると、案の定、大学生らしいグループに優が捕まっていた。


「きみ、可愛いね。ひとり? 今暇だよね?」

「あ、あの、その……」

「あ、すいません、彼女は妹なんで。家族で来ているんですよ」

「お前は?」

「今言いました通り、彼女の兄です」


「ちっ」


 もう慣れたものだ。外出すると優に必ず声が掛かる。


 その際に相手達に言うのは、恋人のケースでは

『こんなダサいやつより俺たちと一緒にカラオケ行こうぜ』

 と言い出してカラオケでワイセツな行為を働いてくるだろう。


 だから妹だと言って家族で来ていると決め台詞を言うのが正解だ。


「お兄ちゃん、いつもありがとう」

「いいんだよ、さぁ行こう」

(お兄ちゃんと、いつキスできるのかしら)


 仲良く手を繋ぎながら義理の兄妹はウインドウ・ショッピングを楽しんだ。

 もちろん、目的だった靴下を購入した。


 まだ遠くからコンサートの歓声が聞こえている。


「「「ザッッマァァァァァァァーーメイドぉぉぉぉぉぉ」」」


【後日、学校にて】


 今日から堂々と公認カップルになった僕達。

 自宅から義妹と仲良く一緒に学校へ行くと驚いた。

 みんなが羨ましそうな目で見てくる。


「村上、おはよう」

「浩紀くん、早いね」

「おう友よ、調子はどうよ」

「村上、ゲームやろまい」

「星奈さんと少しは進んだか?」


 いつの間にかカーストトップに君臨することになった陰キャだった筈のボク。

 優を射止めたのが評判となり、評価が爆上がり。


 みんな嫉妬して僕をケナすより、どうしたら星奈さんみたいな可愛い娘と付き合えるのか、僕みたいになりたいと尊敬の眼で見られるようになった。


 この二人に栄光あれ


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