どうして君が死なねばならなかったのか4
ガラス装触というのは、いわゆる息を吹き込んで「プー」っとガラスを膨らませ、さまざまな形を自前で作り、色彩の混合に工夫を生かせて、なかなか面白い工芸の基本をエンジョイするという趣味だ。
私はココでふと思った。ガラス工芸、それと写真のオフ会メンバーがイメージで一致しない。
彼女が送ってきた写真に写っていたのは、どちらかというと、お遊びサークルの若者たち。そんな工芸を愛するというイメージとは微妙に変。いや、外見で判断してはいけない。私の専門書き込みと個人サイトのギャップで、同様の反応”ギャップ”があったものね。反省。
このガラス細工の趣味は、熱いかまどのせいで、女性の薄着が楽しめるため、又、先輩が後輩に手取り足取り密着できるので、特に棒の回し方とかだけど、狙い目らしい。
人によってはそんな理由もあるから、まぁ、写真のメンバーもありえそうだと思いつつ、女性がいなければ、半分は集わない男性が揃っていたと「ふぅ」と溜息が出る。偏見だな、失礼。
メール中、五人の男性からアタックを受けたことが書かれていたのを見て、ヤバいと思った。
彼女を取り巻いていた中の人たちは、それぞれがこうなっていた。
「抱きしめられた人」、「強引にホッペにキスされた人」、「ホテルへ連れられそうになった人」、そして、「毎日家のそばにいる人」。残りの一人はクールな男性で表面上は何もなかったという。
見事に分かりやすい関係だ。
会合が終われば「車で送っていくよ」と自転車を後部座席に載せて家まで送ってくれる、彼女によると「優しいお兄ちゃんたち」だったが、告白、触れあいアタックや余剰行為があった後、彼女は避けるようにした。短い期間に集中したらしい。
当然、誰かが「オレ、先日彼女にアタックした」と告白すれば、他の男も「オレも」と告白。
二十代の男たちが女子中学生にアタックし全て断られたわけで、ムカつく男性陣なわけだ。何をやっているんだ、この連中は。
それゆえなのだろう、某巨大掲示板スレに「IDXXXの女は男をとっかえひっかえ、だらしがない」、「男好きなのでヤレるぞ」、「あいつは便所」などと書き込まれるようになった。時期が一致していた。
それを見た他の人間がSNSを見に行き、写真から「可愛いじゃん」とか「人は見かけによらん」、「かわいくてもヤリマンは人間のクズ」などと広がっていった。「またしても貴重なxxxが」とか、ニュー速+の挨拶も、他板のスレでは素晴らしい感性が光るように見え溢れるから厄介だ。「中学生なのに、最低三十人とやっている」、「援助交際大好き女」など、徐々にエスカレートしていった。
一方、彼女を除く女性二人のうち「ホテルへ連れられそうになった男」と付き合ってる女がいて、「中学生が色気づいてるんじゃないよ」と絶交状態。スレに参加して書き込んでいることは明白。
もう一人の女性は味方で、人間関係の間を取り持ち、「気にしないで」と仲介する立場だったらしい平和主義女性。
中学三年の彼女、十九歳の中立女性、二十三歳の敵対女性、22~28歳前後の男性五人。
初期のメールを読んでいた時点で、ほとんど登場しない無害なクール男性に、彼女は好感を持ってるような気がした。その後、この直感はハズレて、最悪の悪口を一番多く書いていたのがクール男だったと判明する。
ストーカー男は一人ではなく、クール男も加えて二人いたという恐ろしさ、最悪パターンだ。
悪口を書かれている人間が一番ショックを受けるのは、書いている人間が知人であること、特に普段の仲間や慰めてくれる信頼する人が正体だったと知ることが、一番残酷である。実は、相談をして仲介役を買って出た十九歳の女性も相談の中身をSNSに書き込んで彼女を茶化していた。
当時、これらの件は彼女は知らなかった。非常に深刻だった。
これらを知ったら、彼女が自殺を選択して行動してしまう。その前に、止めさせなければ。
彼女は私宛に、SNSの誰かがしてきた悪口に対する気持ちの変化を、その都度、簡単にして送っていたのが二十通メールほどあった。
だけど、私を心配させまいと気遣って、所々に「私が悪いにゃん♪」とか、最後は「へこたれないぞ~(私)さまに逢うまでは。テヘ☆」等ギャグでしめていた。
彼女はできるだけ軽い感じで書いていたけど、多分、涙を流して文を作っていただろう。想像しやすい娘だ。
しかし、約二十通のうち、後半に入ると様子が徐々に変わっていった。
文章が乱れ始め、状況を報告するのではなく、お願いの内容ばかりになっていく。
彼女のメールから一部抜粋してみよう。
「早く(私)サイトが更新されないかな~」
「相談に乗ってくれる人が少ないですけど、(私)さんがいるからいいもん」
「帰ってくるまでの無事を祈っていますね。早く帰ってきて~(ラブレターではありませんよ)」
「へんな妖精を見つけて、絶対にサイトに載っけてもらいたいです」
文が乱れ、希望的な内容が増えるという事は、深刻度が向上している証拠でもある。これは同時に自殺の兆候でもある。ここを読んでくれている人も思い出して頂きたい。自殺した人の遺書というのは、文字が大きく下手になり、文が乱れているということを。
だが、バイトや部活、勉強などは変わらなく頑張っているようで、周囲には変化が感じ取れない。暗い顔をしている時、「大丈夫かい?」とバイト先のおやじさんが聞いても、すぐに人懐っこい笑顔をして「大丈夫、元気です!」と返していたそうである。
「風邪でもひいたのかもしれないな、家に帰って休養しなさい。」とおやじさん。
また、こんな気になる描写もあった。
「前には無かった”様子がおかしい”時があって、胸に手をやりコブシを握る仕草をしていた。何かを握っているのかなと思って聞くと、ニッコリ笑って”大切なもの”だと言っていた。”心”なのかと思って、おませなやつだなぁと」。
これらは葬儀の時に涙を流すおやじさんから聞いた事実だった。彼に助けを求めていれば……。お母さんの話でも同じ内容があり、いつも手伝う食器洗いとかの途中ですら同じ仕草をしていたそう。
聞いた私は、胸でコブシを握るなんて、そんなに怒りや口惜しさが滲み出てたのかと思ったが、葬儀が終わるころに、その仕草・動作の理由が判明し、悲しみの激流に目頭が熱くなった。
その話は後にして、さて、休み中に貰った最後のメール二通には、これがあった。
「忙しいのに変な相談してごめんなさい。もう乗り切って元気になりました。お願いがあります。以前に送った掲示板のスレッドは見ないで下さい。お願いします。ゴメンなさい」
最初の頃のメールと違って、私が酷くなった某掲示板スレを読んで誤解されるのをイヤだと思ったのだろう。「中学生なのに、最低三十人とやっている」などがあったので、気持ちは痛いほど理解できた。
「(私)さんが帰国したら、抱っこして慰めてもらうんだ。絶対に♪゜+.ヾ(´∀`*)ノ 。+.゜」
だから、こういうことを気楽に書くのは止めなさい!!! こんな感じだったのだから、二十代の男子たちが本気になったのは致し方ない。同じ男性として同情する。私の場合は、二十代以降であれば通用するんだけどね(大学の女子学生を除き)。いや、すまん。
しかし、彼女が私から返事の来ないメールを書いている間にも某掲示板スレやSNSのトラブルが増えていく。
その結果、彼女には耐えられずトラブル以前に戻りたいという、必死な気持ちも伺えた。私の存在は、どうやら最後の砦、救いのヒーローという位置付けのようだし、もちろん悪い気はしないが、行動の仕方によっては影響が大きいだけに慎重に考えねばなるまい。
彼女を突っぱねないこと、身近で守っているよとの安心感、「人に優しく」アドバイスの修正、個人サイト内にて彼女のメールを選抜掲載、とりあえず安いペンダントを贈る事にしよう。
私は取り急ぎ、帰国したとの連絡メールを口実として、さまざまなことを書いた。
「苦しい胸のうちは理解したよ。大変だったね、一ヶ月の間、力になれずゴメン、問題のスレは余り見てないから大丈夫、キミは今後、インスタグラムもツイッター(X)も絶対に見ないこと。相談には乗るから、あとは私に任せてくれ。そうそう、プレゼントがあるよ。期待してね」
こんな感じの数行の短い文でも「すごく嬉しい大切にするね」とはしゃいでくれたようだ。
高いものでは勘違いを起こさせるので、中学生ということを意識して注意した。
価格にして千円ほどのものを楽天を通じて手配し贈ることとしよう。
(住所を知って葬儀に駆けつけられた理由)
ふと思えば、百万アクセス単位で行ってる切り番プレゼントよりも安かったりするので、しまった、「君のことを軽く考えているよ」とのミス・メッセージとして受け取られはしまいか、贈る手配を終えた後で心配し始めた。キャンセルすれば未だ間に合うし、一万円ぐらいの品物に……
いや、それは愛しい特別な想いがなければダメだ。結局、そのまま誤解しないよう祈ることにした。
さて、彼女から返事が来るまでの時間が稼げたはず。次にするのは悪口カキコミを止める事だ。
まず最初に、保存していた証拠類の日付以降で、目立つ誹謗中傷の書き込みを抽出し、次に侮辱系の書き込みをピックアップする。更にSNSで彼女の仲間のページを巡回し、フラれた逆恨み男の中で文体の似ているもの、会ったことがある人間しか書けない具体的な容姿の投稿と付き合わせる。
いかん、分量が多すぎる。
一人の作業では限界がある膨大さなので、時間が少ない中ではユックリするわけにはいかない。ここでどうするか考える。事情を話して協力してくれるスキルのある人に助力を得るか、警察に任せるか、いや、犯罪的な部分の抽出としては、まだ足りないから動かしにくい。しかも被害届けでは動かないことが多いので告訴状を出して急いで動いてもらわねばならない。
当然、帰国したからといって出張中の報告資料の作成は大至急せねばならず、彼女の件以外にも多々すべきことがある。特に帰国後の二週間は地獄の取り組みなのだ。
彼女から「プレゼントが届きました。ステキです。ありがとうございました。」とのレスが来て、ホッとしたが、ああ、大丈夫なんだぁと思い込むほどニブくはない。妙に丁寧な文になっていた。なるべく励まそうと私も頑張った。某掲示板スレ、SNSでの様子は相変わらず乱れていた。
いろんな作業を進めていた間に、時が流れてしまった。帰国して2週間と少し。
彼女には優先的にメールのやり取りを心がけたけど、それでも頻度は非常に悪かった。さまざまな事案が来るし、リアル仕事に関わる件も集中していて、睡眠時間を削ってすらこなせない。彼女は自殺を留まってくれたと思っていたので、いくぶん気は楽だった。これが失敗だった。
早いか遅いか、実はあることに気づかず遅かった。
メールが来ていた。
「明日、遊びグループの会合があるの。(私)さんからメール欲しいなぁ、でも我慢する! 仲良くなるためがんばるよ~(絵文字)」
よしよし。しかし主語を書いて欲しい。意味がとりにくいよ。ボクと仲良くなるって変だし。
それと、ボクは彼氏じゃないんだからさ、甘えはいけないぞ。
結局、その会合というのが終わったらメールしようと思った。夜の八時頃だろう。ところが、仕事はテキパキとこなしたが遅くなってしまった。そして、その間にメールが入っていた。
「ごめんなさい、つらいです。もうあえない。あいたかったです」
なんだなんだ、ラブレターか? いや違う。なにがあったというのだ。ヤバイ、これはヤバイ。メール時刻を見ると深夜一時。会合があってから五時間ぐらい後の時刻を示していた。
急いでメールを送るが返事はなかった。
嫌な予感がした。その嫌な感じを実感した時、深夜三時。
あかん、校正がきつくなってきましたー
というか、これ絶対ハズすやつやん
当時、この記事は公開していて今でもYoutubeにこれを基にした動画、別バージョンの漫画動画が結構あるのですけど、今読み直すと主役もナルちゃん入ってるし痛くて辛いですけん。
#ナルちゃん=ナルシストの愛称




