第20話.銀河を揺らすお仕置き! 〜サトルの断末魔と、歪み始めた歴史の歯車〜
「サ・ト・ル・さ・ん……?」
その一言は、もはや音声ではなかった。
事象地平線を超えた純粋な殺意の波動が、四次元王宮の窓ガラスを粉砕し、王都ビッグテラの全ネオンを過負荷で爆発させた。
「ひっ……演算不能! お母様の魔力が、宇宙の許容スペックを超えています!」
「アカネ、アオイ! 逃げるわよ、物理障壁全開ッ!!」
サーヤが叫んだ瞬間、真っ赤に染まったサラの髪が逆立ち、背後に怒りの焔で形成された「千手観音」の如き魔力腕が出現した。
「サトルさん……。6500年も私を待たせた挙句に……マリちゃんの『体操着バージョン』、ですってぇぇぇぇ!!」
「――サトルぅぅぅぅぅ!! 覚悟しなさいよぉぉぉ!!」
銀河中に響き渡ったその咆哮は、遠く離れた帝国の観測所に「超新星爆発」の誤報を流させ、数多の惑星の住民たちが空を見上げて「神の怒りだ」と跪いた。
その頃、街の場末の酒場で震えていたサトル。
「あぁ、サラ。俺は娘にも嫌われる親父になっちまったよ」
情けない呟きとは裏腹に、視線の先にはモニターに映る少女の姿。
少しだけ、ブロマイドに映っていたマリに似ている。
「……へへ、この角度、たまらねぇな」
自然とにやけてしまう。集中力が長く持たない。
それがこの男の弱点であり、破滅へのトリガーだった。
突如として、サトルの目の前の空間が「素手」で強引に引き裂かれた。
「……あ」
亀裂から現れたのは、赤髪をなびかせ、瞳に地獄の業火を宿したサラ。
感動の再会は、一瞬にして絶望の地獄絵図へと書き換えられる。
「ま、待てサラ! あれは……あれは観賞用だ! 投資だ! 資産運用の一環で――」
「問答無用。……『次元剥離(お仕置き)』」
ドゴォォォォン!!
四次元空間そのものを「叩きつける」ような一撃。
サトルは銀河の端から端までピンボールのように弾き飛ばされ、いくつもの小惑星を粉砕しながら、最終的に王宮のサーヤの足元へと、頭から五体投地状態で突き刺さった。
「…………もう、ブロマイドは、買いません……」
白目を剥き、魂が半分口から出た状態でサトルが呟く。
「……勝負あったわね。最初からそう言えばいいのよ。で、お母さん、やりすぎ」
サラに続いて空間から現れたサーヤが呆れて声をかけると、サラの髪が銀色に戻り、ニコリと微笑んだ。
「ふふ、少しスッキリしたわ。……でも、少し力を込めすぎちゃったかしら?」
その時だった。
アカネとアオイが、かつてないほどの激しい警告音を鳴らした。
「警告! 銀河標準時に致命的なズレを検知! 因果律が……逆流しています!」
「お母様(サラ様)のあまりに強すぎる魔力によって、四次元と現世を繋ぐ『歴史の歯車』が脱落しました!」
「はぁ!? 何それ、アタシたちのいた『6500年前の学園』はどうなったのよ!?」
虚空のモニターに映し出されたのは、ノイズにまみれたかつての故郷。
「……後ろでバカ親父の悲鳴が聞こえるけど、振り返ったらトラウマになるわね。後は夫婦二人で勝手にやって。アタシはできた娘なのよ」
サーヤは両親を(物理的な意味で)置き去りにし、アカネとアオイを連れて海賊船へと全力で駆け込んだ。
「おい、二代目、無事だったか!?」
「何が起こったのか分からない。でも、銀河の流れが変わって時空が歪みまくってるわ!」
サーヤは即座に指揮を執る。
「アカネ、時間結晶用意!」
「はい、サーヤ様!」
「アオイ、アンタは時空の嵐に備えて船に結界を!」
「了解です」
「エリカ、後は頼んだわよ!」
「任せとけ、二代目!」
「じゃあ……6500年前に行くわよ!」
サーヤの掛け声とともに、時空の波濤の中へ、海賊船が帆を上げた。
視界が開けると、そこには見覚えのある地球と月。
だが、「6500年前の学園」は、サーヤの知る場所ではなかった。
空はどす黒い雲に覆われ、街の巨大モニターには一人の少女が映し出されている。
漆黒の軍服に身を包み、冷酷な笑みを浮かべる少女。
街の住民も、学生たちも、皆が同じ軍服を纏い、彼女に跪いている。
「――マリ……?」
サーヤの呟きに呼応するように、画面の中の少女がこちらを向いた。
「うふふ、遅かったようね。全銀河のコピペ権限は、私が接収した。……逆らう者は、時間の中に消し去ってあげよう」
マリの手が動く。
それは、サーヤの専売特許であった「コピペ」と「時間結晶」を組み合わせた、神の所業。
「嘘でしょ……? マリ、あんた、何やってんのよ……!」
歴史のズレが産み落とした、最悪の魔王。
かつての親友が、絶対的な敵として立ちはだかった。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
さぁ、ラスト3話!
そろそろ皆さん、【☆☆☆☆☆】でサーヤ、いえ、作者に応援を!(笑)
マリファンの方でも結構です。評価いただけますと嬉しいです。
まだまだ、物語はヒートアップしていきます。




