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第21話.シリウスの残響 〜魔王マリの献金CMと、時空を超えた想い〜

 見上げる空はどす黒く、街のあらゆる巨大モニターには、漆黒の軍服を纏ったマリが映し出されていた。


『――この放送は、マリ魔王の提供でお送りいたします』


『全銀河の平穏は、魔王への絶対服従によって保たれます。……服従の証は献金から始まります。さぁ、アナタもマリ様のために清きゴールドを』


 荘厳なBGMと共に、モニターの中のマリがゆっくりと、指先まで意識した複雑なポーズを決める。


 潜入していたサーヤはその動きを見た瞬間、鼻から変な声が出そうになった。


「……ちょっと待ちなさいよ。あのポーズ、身に覚えがありすぎるわね」


「サーヤ様、あれは……以前、ルーンに潜入した際、サーヤ様が『魔王っぽく、こう、グワッとしなさいよ!』と、マリ様に無理やり叩き込んだキメポーズです」


 アカネが淡々と、しかし容赦なく指摘する。


「そうよ! アタシが面白がってやらせた、あの時の恥ずかしいポーズじゃないの! ……あのアホマリ、魔王になっても、アタシに教えられた動きを健気に守って放送しちゃってるわけ!?」


 威厳に満ちているはずの魔王の挙動。


 だがそれは、サーヤとの他愛ない「お遊び」の記憶が、歴史の改変を超えて彼女の深層心理に刻み込まれていた証拠だった。



「あなた……サーヤじゃない?」


 振り返ると、地下通路の陰に、ボロボロの制服を着たリズがいた。


「リズ! どうしてあんただけ無事なの!?」


「……私はあの日、月の裏側にあるトウマくんの家の……カプセルの中にいたの。あの家の特殊な障壁が、歴史の上書きを防いでくれたみたい。……世界は突然変わったわ。闇が全てを飲み込み、気づいた時にはマリが『魔王』で、反抗する者は一瞬で消されていった」


「トウマの家……! まだあるのね。あそこなら、トウマの先祖の変態博士と連絡が取れるかも!」


 マリと戦うにしても、背景を知らなくては殺し合いになってしまう。


 アタシはマリを失いたくない。

 とにかく、この状況を把握したい。


 そこでアタシ達は海賊船で月面へ飛び、トウマの家の隠し端末から超空間通信を繋いだ。



 ノイズまみれのモニターに映し出されたのは、ゴーグルを歪ませたイワサキ博士の姿だった。


『……シェンカーの娘! 生きとったか! ……状況は最悪じゃ。歴史の歯車が狂い、現世のルーン聖王国すらマリの支配下に置かれた。今や王女マリアまでもがマリの腹心となり、聖教軍を率いて世界を弾圧しておる……!』


 博士の言葉は重かった。かつての協力者であり、気高き王女であったマリアまでもが敵。このズレた世界で、サーヤは完全に孤立していた。


「……わかったわ。こうなったら、力ずくでマリの目を覚まさせるしかないわね!」


「サーヤ様、直接乗り込みますか?」


「そうね、犠牲者を増やしたくないから、時間結晶で乗り込むわよ。じゃあリズ、行って来るわ」


 アカネが時間結晶のスキルを発動する。

 

 目の前の時空がゆがみ、再び視界が広がった時には、マリの魔王城の中にいた。



「無礼者。何者だ?マリ様を魔王と知っての狼藉か!」


 潜入したサーヤの前に、漆黒の剣を抜いた魔王の騎士アルと、扇子を広げたセシリアが立ちふさがる。


 アルの冷徹な一喝。聞いたこともない声、見たこともない男。だがその実力は本物だった。


 アカネとアオイが前に出ようとする。


 しかし、サーヤは二人を制した。


「アルとセシリアは、トウマが相手をして」

「わかった、まかせて」


「アカネは結界を張って、他の人間が傷つかないようにして」

「かしこまりました」


「アオイは、けが人が出た場合の治療に集中」

「わかりました」


「エリカたちは、いつでも逃げられるように準備」

「わかったぜ、二代目」



 指示を出し終わると、アタシはゆっくりとマリの方へ歩き始める。


「ふふふ、どこかでアナタとお会いしたかしら?」


「いいえ、初めてですよ、魔王さん」


「では、はじめましょう」


 マリがいきなり、「暗闇の草薙刀」を振り上げる。


「え、、なんで、アンタがそれを」


 逃げる暇がない。サーヤも暗闇の草薙刀で対抗する。


「なかなかやるわね。これならどう?」


 今度はマリが両手をあげて、サーヤのコピペスキルを使い、暗闇の草薙刀を無数に増やしていく。


「コピペまで使えるっていうの?」


 サーヤも負けずに草薙刀を増やして、マリの攻撃を防いでいる。



 サーヤとマリ。同じ権限を持つ二人が激突し、時空を削り取るようなミラーマッチが続く。


 二人の暗闇の草薙刀がブラックホールをあちこちに生み出す。


 空気が漏れ出し、魔王城は原型を留めず、あたりは真っ暗な空間だけが残っていた。



「うーん、キリがないわね。でもマリを傷つけたくないし。どうしようかしら」


 サーヤが両手を組んで、アタマを傾げていると、ポケットから、ひらりと一枚の紙が舞い落ちた。


 四次元王国でバカ親父から没収した、あの**「ブロマイド」**だ。


「……え……? 何、これ……?」


 マリが小さな手でブロマイドを拾い上げる。

キラキラした紙の中では、自分が体操着とブルマをはいて、悩殺ポーズをとっている。


 マリの目から、知らず涙がこぼれだす。

 無表情だったマリの顔に精気が戻り、徐々に歪んできた。


「……私、は……魔王なんかじゃ……ない……。私は、サーヤに……こんな恥ずかしいポーズをさせられて……怒りながらも、嬉しくて……!」


 魔王の威圧が霧散し、偽りの歴史がガラガラと崩れ始める。


「……サーヤ……! 思い出した……全部、思い出したわ……!!」


 泣き崩れるマリ。

あたり一面の景色が塵になって消えていく。


 変わって懐かしい6500年前の学園の姿が、その向こうから現れ始めた。


「サーヤ、サーヤ」


 マリはサーヤに抱き着いたまま、動かない。

マリの魔王城を守っていた、アル、セシリアも、記憶が戻り、自分の服を見て不思議そうな顔をしている。


「ところで、サーヤ様。この歴史改編の原因がわかりました」


 横からアカネが声をかけてきた。


「どうやら、マリ様のサーヤ様への想いが募り募って、サーヤ様の思念とスキル、そして装身具まで呼び寄せてしまったようです」


「次元を超えて、そんなこと不可能じゃないの?」


「いえ、それはマリ様の出自が影響しているのです」


「あぁ、シリウスの血か」


「はい。かつて銀河を統治したシリウス人には 我々の理解の及ばないスキルがあるようです」


「そうか、だからマリのブロマイドはオジサンたちに売れるんだな」


「トウマ、アンタ、マリの前でそれは……」


「トウマさん、今の話はちょっと、許せませんね……」


 マリに流れるシリウスの無限パワーがこもったボディがトウマをさく裂した。


<トウマ、静かに眠れ。この長編物語もあと2話だ。お前の雄姿は忘れない>

最後まで読んでいただきありがとうございます。


久しぶりにマリさんが登場したことですし、

そろそろ皆さん、【☆☆☆☆☆】でマリさん、いえ、作者に応援を!(笑)


ラスト2話。最後までお付き合いくださいね。

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