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9. 秋田と一条と大宮



 愁一たち3人が昼食を終えた後、愁一は午後の講義があるので大学に戻ったが、ひなのと美葉は午後の講義もないのでその辺でお茶でもしようとなった。



「あ~ 楽しかった。安角君ってウブだよね… あんなに可愛い後輩出来てすごく嬉しい。ひなのには感謝だね」


「も~ 美葉… 変な意味で愁一を紹介したんじゃないからね」


「わかってるって。 ちゃんと先輩としての役割は果たします」


「本当に頼むよ… 紹介した私の責任もあるんだからね」


「大丈夫だって… それに… 何だったら彼女のお世話もしてあげようかな…」


「……そ、それは余計なお世話なんじゃない? それに紹介する女の子の目度でもあるの?」


ひなのは少し焦ったような表情をして慌てる感じでそう言った。


「目度があるかって… あるに決まってるよ。 だって私が彼女になってあげようかって事だから」


「美葉! 私はそういう意味で紹介したんじゃないって言ったでしょ。それに美葉には彼氏がいたでしょ?」


「ああ、あれね… もうとっくに別れたよ。今は完全にフリーってわけ」


美葉はそう言って楽しそうに笑っている。


「美葉…ダメだからね、愁一に手を出したりしたら…」


「どうして? ひなのにそんな事言う権利ないでしょ? それに私が放っておいても他の誰かが持っていくだけだよ」


「…そうかもしんないけど美葉はダメ。 私の体裁もあるんだから…」


ひなのはそう言って美葉をジト~っと見ていると、美葉もやれやれと言った顔をしてひなのに言った。


「わかってるって… 冗談よ。 ま、その内適当な彼女ができるでしょ…」


「そ、そうよね… その内できるよね…」


ひなのも美葉の意見に同意するようにそう言ったが、何処か納得がいかないといった様子であった。



「でもひなの、言っとくけど安角君が私に興味を持ったら話は別だからね」

「どういう事?」


「だから安角君が私の事を好きになったら、その時は私の好きなようにするよ」

「そ、それは… そうね…」


ひなのは美葉の言葉に頷きはしたが、その表情は承服しかねるといったものだった。

それからはテニスサークルなどの話をして適当に二人でお喋りを楽しんだ後に、そろそろ帰ろうということになって二人はそれぞれ帰宅の途に就いた。




 帰りの道すがら美葉は今日のひなのの態度をみてあることを考えていた。


ひなのは安角君を私に学部の後輩として紹介したけど、それ以上の関係になることは嫌がってる。

なんだかんだ理由は言ってたけどあれは言い訳だね。


ひなのは安角君にかなり興味を持ってるな… なんかまたひなのの悪い癖が出そう。

そうなる前に私が安角君と仲良くなろうかな…


ひなのには悪いけど友情と恋愛は別物… そういう所で私は遠慮しないからね。

安角愁一君か… 同じ学部であれだけのイケメンなんてそんなにいないし…

やっぱここはお姉さんである私が捕獲…じゃなくて保護してあげないと…ね。



初めて会った愁一をやたらと気に入った美葉…

美葉が愁一への思いに耽っていた頃、愁一は大学の講義を受けながら… ひたすら焦っていた。




おかしい… 最近何かが変だと思っていたけどやっと分かった。

前は俺の座る席付近に誰もいなかった。 …っていうか誰も来ないところに席を取っていた。


でも最近必ず俺の席の隣に女子2人組が座る。出来るだけ一人になれるようにと人気のない席に座っているのに…


今受けているのは英語なので合同授業。複数の学部の学生が集まる。このため大講義室を使用しており100人以上が座れるのだが、実際には結構さぼりが多く空席だらけ。だから俺は特に空席になりやすい不人気エリアに席をとる。


前はこのエリアに座ると必ずボッチになれたのに最近必ずこの女子2人組が側に来る。実際にはそれ以外にもちらほらと人が集まる。


なので今日は実験してみた。講義が始まるギリ前になっていきなり人がいないエリアに席を移動した。

最初座っていた席の隣には例の女子2人組が座ってきていたので、これで理論上俺はあの2人と離れて一人になれるはず…



移動してからノートなどを出すために鞄の中を探していて、ようやく見つけてふと顔をあげて隣を見る。

誰もいない… やっぱ俺の思い過ごし… 気のせいだったな。


そう思って少し安心して俺が元いた場所を見て見ると女子2人組もいなかった。

………おかしいだろ、何故いない… 何処へ行った?


何か嫌な予感がしたので恐る恐るゆっくり振り返って後ろをチラッと見て見ると…

………いる 本当にいる、しかも笑ってる… 怖え~!



二人は俺の後ろの席でクスクスと楽しそうに笑ってる。

一体いつの間に?… こいつらは特殊な能力でも持ってるのか?


こいつらの名前って「貞子」と「伽梛子」じゃねーよな?… 俺はだんだん恐怖を感じてきた。


『ボッチな俺が何故か可愛い女子2名に追いかけられる件…』


ラノベのタイトルだったら笑えるが、実際やられると恐怖以外感じない。


取り敢えず今日の帰りに神社に寄ろう… そしてお札を貰って…

あとそれからお寺に行って数珠も買っとかないと…



そんなことを講義中ずっと考えていた。

ようやく講義も終わり速攻でトンズラしようと席をたった時、不意に背中を叩かれた。


ギィヤァ~~~ッ!!!


思わず恐怖でそう叫びそうになったが、ぐっとこらえて叩いてきた相手を見て見ると、見知らぬ男だった。茶髪で身長が高くニヤついた表情の何ともチャラそうなイケメン…


「よっ、なんか俺らって講義が被るな… もしかして同じ学部? 俺は薬学部なんだけど…」


なんなんだ、この馴れ馴れしくて軽そうなチャラ男は?…

でも… 薬学部って言ったよな… こいつは無視できない。


「俺も薬学部だけど…」


「そうか~ やっぱ同じだよな… 俺は秋田あきた海飛かいと


「俺は安角愁一」


俺がそう答えると秋田はいきなり俺の後ろに視線を向けて話しかける。


「君たちは何学部?」


秋田が話しかけたのは背後霊のように俺に付きまとう例の女子2名。

俺もある意味この2人の素性には興味があった。恐怖を感じるという意味で…


「私達も薬学だよ。 私は一条いちじょう 麗衣れい


「私は大宮おおみや りん


そうか… 2人共同じ薬学部だったんだ…


「ホント? 俺たち全員同じ学部なんだ。凄い偶然!」


そう言ってチャラ男…もとい秋田は白々しく大げさに驚いて見せた。



「ねえ、私達にも名前教えて」


一条はニコニコしながら俺と秋田に聞いて来た。俺と秋田は自分の名を名乗りそこから4人での会話が始まる。全員同じ学部と分かったので俺もこの3人とは友人になろうと考えた。これからの学生生活を考えると1人でも友人が多いほど何かと役立つ。そう思っていたらいきなり秋田が皆に提案した。


「折角同じ学部の者が知り合ったんだし、ちょっとみんなで話さない?」


チャラい秋田らしく何とも気軽にみんなを誘う。声をかける感じにも違和感が全くない。


「賛成~! 私達も行く。 ね、凛」


一条は結構ノリノリで秋田の提案に賛成した。


「…うん、でも… 安角君は?」


大宮はそう言って俺の方をジーっと見る。何で見るんだよ… 俺が言い出したんじゃねーよ。

大宮に見られたこととは関係なく、俺も同じ学部内で友達を作らないとと思っていたので、秋田の提案に賛成した。


「俺も行くよ。同じ学部なんだし…」


そういう訳で俺達4人は大学の近くにあるカフェに行くこととなった。



ボッチだった俺が皆の会話に付いて行けるか心配だったが、秋田は陽気でよく喋る奴みたいだったのでちょっと安心できた。いざとなったら会話はこいつに全部ぶん投げよう… 俺はそう思ってお気楽にみんなとカフェに向かった。


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