最終話 フットサル、しよ♪
ついに最終話です。
改めて志保と亜紀が熱い抱擁を交わす。そこへ理沙、柚季、舞の三人が、試合後とは思えないほどの速さで駆け寄ってきた。そして減速することなく、そのまま二人に飛びつく。
「やった! 勝った!」
「初勝利なの! 僕たち、勝ったの!」
「勝ったんだよ……本当に、勝ったんだよ」
三人はそのまま志保たちを押し倒し、折り重なるように喜び合う。人目も気にせず歓喜するフローラルのメンバーたち。
そこへ奈央が苦笑しながら声をかけた。
「とりあえず整列して挨拶しようか。後の試合もつかえているしね」
奈央は一番上にいた理沙へ手を差し伸べる。理沙が周囲を見渡すと、スクラッチのメンバーたちはすでに整列していた。
「おい、とりあえず整列。喜ぶのは後だ」
理沙は奈央の手を取り、立ち上がる。そしてセンターラインへ走り出すと、他のメンバーも続いた。
審判の合図で一斉に頭を下げる。
奈央は笑顔で言った。
「初勝利、おめでとう。次は負けないから」
そう言って志保に握手を求める。
(そっか……本当に勝ったんだ)
奈央と握手を交わしながら、志保の頬を一筋の涙が伝った。
みんなで協力して掴んだ初勝利。
サッカーをしていた頃には感じたことのない感情だった。
理沙と二人で作ったフットサル部。
亜紀や柚季、舞にフットサルを好きになってもらおうと、必死に頑張ってきた日々。
それが、今――報われた。
コートを離れても、喜びは収まらない。
理沙も、亜紀も、柚季も、舞も。涙を流しながら、それでも最高の笑顔だった。
(そっか……私の求めていたのって、これだったんだ)
志保は思う。
自分一人で結果を出すのではない。
みんなで努力し、みんなで勝つ。
助けて、助けられて――結果を出す。
そして、フットサルを好きになってもらうこと。
メンバーたちの笑顔が、その答えだった。
(良かった……フットサルを好きになってもらえて)
志保は雲一つない青空を見上げた。
達成感が胸いっぱいに広がっていく。
フローラルは六チーム中四位。二勝三敗で大会を終えた。
「大会、終わっちゃったね。微妙な成績だったけど……でも楽しかった」
志保が笑顔で言うと、舞も頷く。
「うん、楽しかった。本当に楽しかった」
「しかし、完全に人数の差が出たな。何とか二勝はしたけど、その後の試合は酷かった」
理沙の言う通りだった。スクラッチ戦の後、何とか一勝したものの、その後はボロボロだった。四試合目には亜紀と柚季が脚を攣り、志保ですら最後の試合ではダッシュすらできなかった。
「そうだの。夏休みが終わったら、もう一度部員募集をするべきなの。いざとなったら僕の情報力で無理やりにでも入部してもらうの」
「いや、柚季ちゃん、キャラ変わってるから」
「黒柚季出現だね。でも、その案は悪くないと思う」
「その案に心惹かれるな!」
少し興奮気味の柚季の発言に、メンバーたちは青ざめる。そこへ、健が近づいてきた。
「満足したみたいだね。これで臨時コーチは終わりでいいかな。後は自分たちで考えて練習。それと、ちゃんとした監督を顧問にすることだね」
その言葉に、場の空気が止まる。
すぐに亜紀が詰め寄った。
「健さん、コーチを辞めてしまうのですか? 私たちにはまだ必要ですわ!」
「そうだな。ここで降りるなんてありえない」
「もっと強くなりたいんです。そのためには健さんが必要です」
「兄貴、コーチ継続決定なの。異論は認めないの」
「お前ら怖いな!」
そのやり取りを遮るように、志保が明るく声を上げた。
「さあ、帰り支度しよう! たくさん汗もかいたし!」
話題は強制終了。
「俺の意見は!? 人権は!?」
「多分ないわね。諦めなさい」
ゆかりが笑顔で健の肩を叩く。
着替えを終えた志保たちが戻ってくる。
「早っ!」
「Time is moneyですわ」
「その使い方違うからな!」
いつものやり取り。
変わらない空気。
そんな中――志保はふとコートを振り返った。
そこでは小学生たちが楽しそうにボールを蹴っている。
(楽しかったな……)
自分たちと重なる光景。
(もっと強くなりたい。もっとみんなで――)
夏の風が吹き抜ける。
志保は静かに決意を固めた。
「志保~、何してるんだ? 行くぞ~!」
「うん、今行く!」
志保は仲間の元へ駆け出す。
そして――
満面の笑みで叫んだ。
「ねえ、帰ったら……フットサル、しよ♪」
フットサル、しよ♪
ここまで読んで頂いて本当にありがとうございます。
志保たちの物語はどうだったでしょうか? 続編は今のところは考えていません。
読者の心の中でそれぞれ活躍してくれたらと思います。
他の作品も読んで頂けると嬉しいです。
ここまで志保たちの物語を見ていただいてありがとうございました。




