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5 海斗は少女とギルドを立ち上げる予定である

自宅に帰ると海斗はログインする。


「さて……。スキルを合成するのもいいけど集めるのもちゃんとしないと」


カイは何をするか考えて、考えた末に『木の心』を再び取りに行こうかと考えた。『火炎剣』の取得方法を知っていたため、その上位スキル『獄炎剣』の合成に、もしかしたらトレントのレアドロップスキルを使うんじゃないかと思い、決死の思いで使ったスキルである。失敗した時のリスクを考えるとそれ以上のレアドロップスキルを使うのはやめたが。


「前回は運がよかったんだよなあ。10匹倒した後、5匹くらいで1つドロップしたからそれで満足してやめちゃったし」


どうせ、何度も戦うことになるのならもしかしたら、『火炎剣』を獲得できるかもしれないと、炎属性の剣を装備して、トレントが出る森へと向かっていった。


「さてと……おお結構人いるなあ。まあそれもそうか、ジャイアントトレントと戦うために必要なアイテムを集めないといけないもんな」


カイも3つほど持っていたが、ジャイアントトレントと戦いたいという陸也、プレイヤーネーム、リクにあげてしまった。

ただでさえ出現率の低いトレント。これだけ人がいるとさすがに効率が悪すぎる。別のスキルを集めるかとカイが森の中をふらふらと歩いていると、トレントと戦っている見たことのある少女に出くわす。少女は手に持った炎属性の剣で、トレントを討伐していた。無駄のない動きで、トレントに一撃一撃を与えていく。しばらくその様子を見ていると、向こうも気づいた様子でこちらにやってきた。


「昨日はありがとうございました。おかげさまで、欲しいスキルを獲得できました」

「いいよいいよ。こちらこそ欲しいスキルが手に入ったから」

「それで、どうしてここに?」

「いや、トレントのレアドロップスキルを手に入れようと思ってここに来たんだけど、人が多すぎて帰ろうかと思ってたところ」


あ、それなら、と彼女はスキル欄を開くと、


「『木の心』ですよね。私はどうせ使わないから売ろうと思っていたところなんです。よかったらどうぞ」

「えっ。いや悪いよ。レアドロップスキルは売るとそれなりのマナになるから」

「別に今マナはそれほど必要ないですし……、それに『攻撃力アップⅤ』に育てることを考えるとこれを売ったときにもらえるマナよりも大量のマナを消費しているでしょう」


マナはまったく消費していない事を告げようかと思ったが、あまり見知らぬ人に固有スキルのことは話さない方がいい。それなら、とカイが思いついたのは


「じゃあ『一閃』と交換しない?」

「えっ! 『一閃』を持ってるんですか!?」

「うん。ほら」


と、スキル欄を見せる。と、それと同時におびただしい数の『スキル廃棄物』が見えた。スキル屋で売ってくるのを忘れていたのだ。カイはハっとしてスキル欄を閉じるが、時すでに遅し、その少女はばっちりその様子を見てしまっていた。


「な、何なんですか。あの『スキル廃棄物』の数。いったいどれだけのクエストに失敗したんですか」


こうなってしまっては、スキルのことを素直に話した方がいいだろう。変な方向に噂になっても困る。


「誰にも言わないなら、教えてあげる」

「言いません言いません。いったい何なんですか?」


カイはスキル欄の『スキルシンセサイズ』を見せる。


「これは固有スキルでスキルの合成ができるんだ。あの大量の『スキル廃棄物』はその失敗作なんだ」

「なんですかー! そのスキル。とても楽しそうですね!」

「ああ、固有スキルだから黙っていてほしい。代わりと言っては何だが『一閃』をあげるから」


彼女はしばらく考えたのち、口を開いた。


「あなたはギルドってどこか入ってますか?」

「い、いや。入ってないけど」


カイはギルドには入っていない。上位ギルドにはステータスの低さから入れず、かといって中位や下位のギルドに入るとそのレベルに対するステータスの低さが恥ずかしい。仕方なくソロプレイをしていたのだが。


「じゃあもしよければ、私たちのギルドに入ってください」

「えっ。いいの? でも俺はほとんど何もできないよ」

「いいんです。スキルの素材を渡せば、スキルを合成してくださるとありがたいんですけど」


カイにとっては願ってもいない状況。一度でも獲得したスキルはスキル図鑑に登録される。スキル図鑑を埋めることも1つの目標にしていたカイにとってスキルをたくさん獲得できることに越したことはない。


「わかった。じゃあ入ろう」


少女は目を輝かせて、

「ありがとうございます。私はブランといいます。ついてきてください」


そう言ってブランは町の方へと駆けて行った。カイもそれについていこうとするが、速度が尋常じゃない。2倍以上の速さで離れていく。

カイが町に到着すると、入り口付近でブランともう一人、魔法使いのような服を着た少女が立っていた。


「いい人見つけたの?ブラン」

「うんうん。面白い人見つけてきたよ!」

「面白い人じゃなくて、強い人が欲しいんだけど……」


そんな会話をしている二人にカイは近づく。


「あ、すみません。はしゃぎすぎて先に行ってしまいました」


ブランはまた深くお辞儀をする。


「あなたが、その……面白い人? 何が面白いんですか」

「スキルが面白いんだよ!」

「へえ。もしかして固有スキル持ちですか?」

「う、うん。まあ立ち話もなんだから適当なところに座ろうか」


近くの広場にイスとテーブルがあったのでそこに座る。


「初めまして。私はノワール。で、こっちが知ってると思いますけどブランです」

「ああ、初めまして。俺はカイだ」

「それでその固有スキルというのは……」

「ちょっと待ってくれ」


カイは改めて『スキルシンセサイズ』について説明する。


「へえ。確かに面白いですね」

「あれ、ってことはもしかして昨日くれた『攻撃力アップⅤ』もそれで作ったものなんですか」

「まあそういうことになる」

「いいですねそれ! 作り放題じゃないですか!」


ブランがはしゃぐ。それを隣に座っていたノワールがなだめる。その様子からカイは


「ギルドマスターってノワールなのか?」


それを聞いたノワールはブランの方を見て尋ねる。


「えっ! ブランってばもしかしてまだギルド作ってないこと言ってないの?」

「あっ。そうだったね。確かに言っておいた方がよかったかも」


ギルドは簡単に立てられるものではない。5人以上のメンバー、それと100万ゴールドが必要になってくる。

それにレベル30以上でないとギルドマスターになることはできないため、それもネックとなる。


「お金とギルドマスターの件は大丈夫なんですけど、メンバーがまだ足りなくて」


ノワールがカイに向かって言う。


「あと何人必要なんだ?」

「2人です」

「ってことは建てようとするギルドメンバーはここにいる3人だけってことか」

「まあ、……そうなりますね」


と、ここでカイはふと気になる。


「え、ちょっと待って。ギルドマスターの件は大丈夫って二人は何レベルなんだ?」

「私は41レベルです。ブランのほうがちょっと高かった気がしますが」

「うん。私は43レベルだよ。そういえばカイさんは何レベルなんですか?」

「37レベル……」


カイはそれでも発売日からやっているし、そこら辺のプレイヤーよりはレベルが高いと思っていた。しかし、こうも簡単に上がいると落ち込んでしまう。ちなみにリクは47レベル、空大、プレイヤーネーム、ソラは43レベルである。まあ、ギルドメンバーとパーティを組んでレベル上げができる二人と差が開くことはわかりきっていたが。


「じゃあ当面はギルドメンバーを集めるってことでいいのか?」

「そうですね」


カイはレベルのことは置いておいて、ギルド(仮)の当面の目標を訪ねた。それならと、カイはスキル欄を開く。


「ブラン。君に『一閃』と『獄炎の一撃』をあげるよ。俺が持っていても使いこなせないしな」


その言葉に、ブランとノワールが驚いた表情でこちらを見る。


「えっ……。『獄炎の一撃』ですか!? 最強ランクの攻撃スキルじゃないですか!」

「それをあげるって、もしかしてそんなに簡単に作れたんですか!?」

「ま、まあ簡単といえば簡単に作れたな。レアドロップスキルは必要だったけど」

「じゃあせめて、そのレアドロップスキルと交換します。なんですか? 明日までには狩っておきますので」

「あー『木の心』なんだ。じゃあそれと交換でいいか?」

「えっ、ほんとですか!?」


カイはこうしてブランに『獄炎の一撃』と『一閃』を譲り、代わりに『木の心』を受け取った。ノワールにも何か上げたかったが、魔法使いに合った技スキルは作れていなかったし、魔法スキルも合成していなかったため、後日何か作ることを約束して、解散した。ギルドは作れないため、とりあえずフレンド登録だけしておいた。

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