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呪われた王子は婚約破棄をしたくない!  作者: 万月月子


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14/26

sideリリベル6

王立学園に入学すると、すぐにマリアさんに出会った。

薄茶色の髪に緑の瞳の小柄で可愛らしい方だった。


ルイス様と廊下を歩いていると、香ばしいパンの匂いがしたのだ。

貴族クラスではなく、一般クラスの前だった。


「うちのパン、とっても美味しいの。皆に仲良くなって欲しくって。良かったら、食べてちょうだい」

中から元気な声が聞こえて、思わずルイス様と中を覗いてしまった。


教室の中いっぱいにパンの匂いが漂い、皆にパンを渡していっている子。

「わーい、マリアのとこのパン美味しいよね」

「初めて食べたけど、本当に美味しい。マリアのパン屋ってどこにあるの?今度買いに行くから教えて」


あー、あの子がマリアさんなのだわ。

ルイス様と結ばれる…。


「リリベル?どうしたんだい?」

私は首を傾げてルイス様を見上げる。

(あぁ、リリベルの顔色が悪い。どうしたのだろう。心配だ)


ルイス様はまだ、マリアさんと運命に落ちていない。


私を心配するルイス様にほっとしてしまうのは、いけないことなのに。


「いいえ、何も。なんだか、良い匂いがしてお腹が空いてしまいました」


はにかんで笑うと(うわぁ、リリベルが眩しすぎるぅ!)と、ルイス様の悶える心の声が聞こえた。


「あ、本当ですか?良かったらパンお1ついかがです?」

マリアさんが横から声をかけてくる。


満面の笑顔で差し出されたパンをお礼を言って受けとる。


「良かったら、王子様もどうぞ」

物怖じせずに差し出され、ルイス様もお礼を言って受け取った。


マリアさんとルイス様が目を合わす。


その一瞬に、心臓がドドドと駆け足で脈を打つ。


あぁ、運命の愛に落ちてしまう瞬間が来てしまったのかしら。


笑顔でいよう。亡くなったお母様が言っていたように、笑顔でいなければ。


「リリベル?大丈夫かい?」

ルイス様に肩を掴まれる。

「えぇ。なんともありませんわ」

(どうしよう。リリベル、具合悪いのを隠してるんじゃないのかな。なんだか、心配になる儚げな笑顔が胸に刺さる。僕は最低だーっ。こんな時でも、好きだって思ってしまうなんて)


ルイス様はびっくりする程いつものルイス様だった。



その後、マリアさんとは何回も出会って、その都度パンを頂いたりしたのだけれども、ルイス様と運命の愛に落ちる様子は無かったのだった。



アドナルド王子は、ルイス様や私と同じ貴族クラスだったが、いろんな貴族と交友を深めたり勉強に勤しんだりと頑張っている様子だった。


ある日、アドナルド王子とルイス様と三人でお茶会をしていた時、アドナルド王子が意を決した様に「リリベル殿と同じ色味の女性を知らないか?」と訊ねて来た。すぐに「聞いたことありませんわ」と首をふる私と同意するルイス様。


そんな私をじっと見つめて。

「それなら、君か…」と呟いた。

その後も、黙したまま、私を見つめる。

「この学園に留学したのは、勉学を極める為だけじゃない。呪いを解いてくれる女性を探すためなんだ」

「はぁ」

それは多分私のことでしょうね。

そう思いながらも、気の無い返事をする。


「僕の運命の人」


真剣に見つめられても、私は何も言えなかった。


「はは。何を言っちゃってるのかな。リリベルは僕の婚約者だけれども」

ルイス様が慌ててアドナルド王子に声をかける。


「ルイス…。君は、その、彼女といつ婚約破棄になるんだ?」

「なんてことを!」

「でも、呪いなんだから、しょうがないだろう?同じ身の上だから、わかるだろう?呪いを解きたいんだ」

そう言って胸元から紙を一通取り出した。

「神殿の御神託だ。乳兄弟から入手した」

その紙には【闇から金の光を放つ人】と書かれていた。


「これのどこがリリベルの色味なんだ。リリベルは僕の婚約者だ!絶対渡さない!」

ルイス様が激昂して、アドナルド王子を睨んだ。


アドナルド王子は憐憫の瞳でルイス様を見ていた。

「呪いは、自分で自分を苦しめる。りんごを食べたいのに食べられない。自分の体なのに自分で動かせなくなる。そういうものなんだ」

ルイス様は、怒りの矛先を向ける場所が無くなって途方にくれた様にアドナルド王子を見た。

それから、息を吸って私を見る。

「けれども。リリベルは僕の婚約者だ」

決意を込めた瞳で見つめられ、ずっとそうであったら良いのに、と貴方を信じたくなってしまう。


最初から知っている未来なら、辛くなんてならない。

好きになんてならないから、大丈夫。


呪文の様に呟いて、笑顔を貼り付けた。









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