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プロローグ

三作目です。よろしくお願いします。

 果てしなく広がる陸空海の大地、この世界の約6割ほどの土地はロンギヌス帝国と呼ばれる帝国の領地である。

 この国は他国との領土権を争い、常に勝利を物にしてきた強国だ。いまやその勢力は世界最大にして世界最強、この帝国に逆らう者など誰ひとりとしていない。

 この国が恐れられるのは他の国には一切としてない魔法や魔術と呼ばれる力をはじめ、ひとりの救世主(メシア)と呼ばれる騎士がいたからだ。

 魔術は自然すらをも支配し、メシアを中心とした軍隊に有利になるよう支援を行った。そして軍隊は常に少数にも関わらずメシアの鼓舞ひとつで、他国の軍隊の大群を遥かに凌駕するほどの活躍をみせた。


 そんな帝国のとある土地、草や木々が生い茂り他国との激しい争いを忘れさせるような平和な村が存在していた。

 村の名をリスティーヌ。おおらかな人々が在住していて常に互いを支え合う平和を象徴するかのような村。近くの町クランシェルに領主がいる。

 

 この村に住むひとりの狩人がいる、歳はまだ若くて珍しい灰色の髪にとても綺麗な緑の瞳を持つ少年。名前はサイ。

 今はまだ己が運命を知らぬ者。

 彼はいつものように弓矢を手に持ち、森へと足を踏み入れる。そして何かを待ち伏せる為にそっとしゃがむ。


「来たな、動かないでくれよ」


 弓矢を構え獲物である鹿の心臓を射抜くように狙いを定める。弓矢の腕は悪くない。

 風を読み、遮蔽物を考慮し、尚且つ獲物をなるべく苦しめないように矢を放った。

 声もなく倒れた鹿の皮と肉を剥ぎ取る。


「お前の命を無駄にはしないよ」


 これが狩人サイの平凡な毎日だ。

 辛いことや苦しい時もあるが、優しい父と母がいて妹のユリアがいる。何一つとして不満はない。

 貧しくはあるが、暖かい家庭で育ちとても心優しい人間として彼は育った。

 

「お兄ちゃん遅いよう」

「ははは、すまないねユリア」


 家に帰ればいつも出迎えてくれるのは、顔を膨らませた可愛い妹のユリア。その後すこし遅れて母が台所からやってきてサイが稼いだお金と獲物の肉を預かる。


「いつもすまないね、怪我とかはない?」

「ないよ母さん、もう立派な狩人だよ」


 サイは心配性の母を気遣う言葉で安心させようとする。父が病に倒れて以来、一家の稼ぎ手はサイのみになっている。母が心配になるのも無理はないがサイは常に気丈である。

 弓矢と荷物を適当な場所に置くとサイは家の2階にある寝室へ向かう。


「父さん帰ったよ」

「……おぉ、今日はどうだった?」


 ベッドに横たわったまま父はサイに聞いた。


「いつも通りさ、父さんのやり方をちゃんと真似て上手くやれてるよ」

「そうか、いつもすまないな……俺もこの身体さえまともなら」

「ダメだよ寝てなきゃ、そろそろ食事を持ってくるから待ってて」


 父は黙って頷く寝室のドアを開けるとユリアが立っていた。右手で何かを出そうとしているようだ、しばらくしてユリアの手のひらから小さな炎が出て蝋燭のようにユラユラと揺れる。


「お兄ちゃん見てた?見てた?」

「すごいじゃないか、詠唱なしでできるようになったの」

「うん! お母さんとたくさん練習した! お兄ちゃんも魔法覚えたらいいのに」

「いやお兄ちゃんはいいよ、魔法は苦手なんだ」


 サイも幼い頃は母に魔法を教わっていたが使い方を誤ってしまい他人に怪我をさせてしまって、それ以来彼のトラウマとなっている。

 ユリアの魔法を褒めていると母の声がした、夕食の準備が出来たようだ。夕食は家族全員揃って食べるようにしていたが、父だけは部屋に持っていかなければならない。

 そのため今ではサイとユリアと母の3人だけが揃って食べる。


 食事を終えた後は風呂に入り、あとは寝るだけ。サイは自分の部屋に戻りあくびをすると自分のベッドの中で何かが動いていることに気がつく。


「ばぁ!」

「うわぁ、びっくりしたぞーこのーくすぐってやるー」

「あはははははははは、お兄ちゃんギブギブ許して! っはははははははは」


 どこにでもいそうで、どこにでもありそうな兄弟のふざけあい。ユリアが寝た後にサイは家の外へ出て紅い月を眺めた。


「今日は緋色月か」


 そう呟くき夜風にすこしだけ揺れる、明日もこんな日々が続くんだろうと思いながら。

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