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予言書と枢機卿の来訪

陰険会談の巻

応接室にてアルブレヒト卿と顔を合わせる。取って付けたようなというか、神像のようなアルカイックスマイル的な曖昧な笑み。相変わらずなにを考えてるかわからんやつだ。


「おお、アルブレヒト卿。久しいな。教皇領にも亜人の群れが押し寄せたとか」

「陛下、お久しぶりにございます。私のもとに集った義勇兵の力でなんとか事なきを得ております」

「ほう、それは重畳。卿の人徳の賜物よな」

「いえいえ、神の恩寵でしょう」

「ふむ、前置きはこれでよかろう。して、何用か?」

「はい、左近の情勢は未曾有の危機と思われます。よって、部下とともに古き書物を調べておりました」

「ほう、してなにかわかったか?」

「建国王の残された書が」

「ほう。興味深い」

「おおまかな内容をお伝えしますと、4冊の魔道書と、4つに分かたれた暗黒竜ニーズヘッグの魂の封印についてです」

「もともとグリモアは教皇領の4つの神殿に分けて封印されておりました。しかし、その本来の意味が王家分裂の際に有り体に言えば間違って伝わった。4冊のグリモアを揃えたものが建国王の大いなる力を受け継ぎ、その正当なる後継者として認められる。そういう言い伝えになっておりました」

「それはいつごろの話か?」

「さて、そこまで調べが及んでおらず、申し訳ありませぬ」

「いや、良い。してニーズヘッグの封印はどのようにして解かれる?」

「はい、4つの書が一堂に会した時といわれております」

「で、そのグリモアの所在は?」

「まだなんとも、しかし王家に伝わる秘宝とされていたようですな」

「そうか。まあ、情報の対価というわけではないが、ウェストファリアとファフニルに保管されていたものは実は我が手にある」

「なんと!」

「イーストファリアの分も恐らくではあるが、アルバート大公のもとにあるだろう」

「ということはアースガードより狙われますな。起死回生の策としてニーズヘッグの復活を図ってきましょう」

「それは亡国の策だろう。道連れにでもしようというのか?」

「共和制を守ることが至上命題なれば、そこには民衆の命であるとかそういったことは全く考慮されますまい。そもそも貴族院の権益が何よりも優先されておりましたからな」

「愚かな。民あってこその貴族であり王ではないか」

「全ての王が陛下のような方であられれば、そもそもこのような事になならなかったのでしょうなあ」

「買いかぶりだな。俺はそもそも自分の身内を守ることが最優先だ」

「ほう?」

「俺の家族が平和に暮らすためにと突き詰めるとな、こうなってしまったのだ」

「といいますと?」

「なに、簡単なことだ。平和に暮らすには、まず平和でなければならぬ。はじめは、与えられた領内でそれを行った。東方にはな、いい言葉があるのだ」

「どのような?」

「倉廩満ちて礼節を知り、衣食足りて栄辱を知る」

「なるほど、深いですな」

「為政者としての役割を端的に示していると思わぬか?」

「左様ですな。まず生きるすべをしっかりと示さねばならぬ。それができて初めて人は人足りうると」

「そうだ。まあ、そのために食料の確保と経済発展。軍の拡充の順に行った。あとな、100万の軍を率いることができるのはその軍を飢えさせないものだけだ。だが、100万の軍を養うにはその数百倍の支援がいる。どうもそこら辺わかってない奴が多いがな」

「陛下は軍事の英雄と思っておりました。必ず少数で大軍を打ち破っていらっしゃる」

「なに、じつはだな、その時点で確実に運用できる兵士か出さなかったわけだ」

「なんと、そのような・・・」

「軍を率いるものとして、俺は邪道だ。正統派の将帥としてならカイルやアーサーのほうが上だろうよ」

「いやいやそのようなことは」

「多分同数の、同程度の兵を率いたなら、卿のほうが上かもしれんぞ?」

「いやいやお戯れを」

「まあ、この話はもういいだろう」

「はい」

「いまなすべきことを聞こうか。アースガードのグリモアを奪う事ができれば、ニーズヘッグの復活は止められるか?」

「おそらくは、ですが彼の国の方角、おそらくは首都マグデブルグかと思われますが、膨大な魔力が集まっております。開封の儀式が進んでいるのではないかと」

「どういうことだ?グリモアが4つ必要という話ではないのか?」

「要するに魔力を引き出す媒体なのです。故にそれに代わる魔力を集めることができれば、封印は解かれる可能性があります」

「時間の猶予はどのくらいある?」

「確実には言えませぬが、およそ半年」

「半年でマグデブルグを陥落させねばならんか」

「先の戦いで亜人の戦力はほぼ壊滅しました。要となる戦場はセヴァストポリになりましょう」

「フレスブルグに兵を集めさせよう」

「ウェストファリアの残党は?」

「残党とはまたひどい良いようだが、フェルナン卿に任せよう」

「教皇領からも兵を出しましょうか?」

「いや、それには及ばぬ。世俗の戦は我等のみで片付けよう」

「はは、これは手厳しい。あわよくば教会領の加増を狙いましたが」

「まあ、それはそれだ。今回の情報の対価として考慮しようか」

「ありがたき幸せ。では、これにて失礼致します」

「卿も壮健でな、ああ、そうだ。各地で黒ずくめの魔術師が暗躍しているとの報告を受けている。なにかわかったら情報の提供を頼みたい」

「なるほど、承知いたしました。そのような不届きな輩は許せませぬな」

「そうそう、その者の手下がそやつを呼ぶときにな、猊下と尊称をつけておったそうだ」

「ほほう、それは不遜な」

「うむ、教会のような組織を気取っていおるのかの?」

「ふむ、邪教の者の考える事はわかり申さぬ。ですが、平和な世に逆らうことはすべての人に対する反逆。教会でも情報を集めましょう」

「うむ、頼りにしている」


 さて、腹の探り合いは終わった。いくつか流した情報でどのように動くか。どちらにしても情報部の将校を教皇領に張り付かせよう。さて、半年ってのも眉唾だな。侵攻のペースを上げにゃならんか。兵に無理はさせたくないのだがなあ。はあ、また厄介な事になった。

先日の戦いで霧散した黒い魔力が一箇所に集約している。集まりきるまでには半年との教会の調査結果を告げられたがまあ、どこまで信じられるかわからない。

グリモア自体には人を洗脳する力合ある。それによって上層部がおかしくなっている。そうなると普通の軍略が通用しない。これって八方ふさがりじゃね?


次回 侵攻開始と集う味方

クライマックスに近づいているのか?まあ、どっちかというとわかりやすい展開だし、いろいろバレてる?

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