表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

76/120

一触即発

状況説明回です

 国境線ではお互いの勢力が睨み合う状況が続いていた。小部隊の出撃による小競り合いが頻発しており、負傷者が続出、戦死者が出ていないことが状況の進行をとどめていたに過ぎない。戦線は大きく分けて2つ。先日会戦のあったテルローと、シレジエンだ。

 テルロー方面軍には宿将のトゥールーズ候カイルに若き天才アーサー卿が参謀として付いている。先鋒は豪腕マッセナ、中軍に攻守ともに完璧と名高いランヌ将軍、突撃まっしぐらのベシェール将軍がいる。どちらかと言うと防戦が得意なカイルを補うかのように攻勢に定評のある人材をまとめた。さらに後方支援に才を示しているモートン卿が補給線を支えていた。

 シレジエンにはこちらも国家の重鎮、アルフェンス辺境伯を中心に諸侯連合を入れていた。名目上はシレジエン大公国があるが、事実上の傀儡政権である。イアン大公を総大将に据えているが、事実上の指揮官は辺境伯フェルナン卿であった。内戦の頃に東方諸侯連合を作った、そのままの枠組みである。オルレアンの騎兵は平地の多い東方での野戦に大きな力を発揮する。

 そして、フリード本城には国王の直属軍となる近衛5000が出撃準備を整えていた。あのときテルローとシレジエンを繋いだ街道は整備され、飛び地ではあるがバルデン伯に管理を任せていた。具体的にはレックス卿と主力を駐屯させていたのである。


「陛下、工作は上々の成果です」

「東の諸侯はこちらにつきつつある・・か」

「昔のコネを総動員しましたよ。勘当された親父まで協力してくれるとは思いませんでしたが」

「実家につなぎが取れたのなら一気に東進できるかもしれんな」

「まあ、無茶はしない方向でおねがいしますぞ」

「ああ、わかってるよ」


 説明しよう。アストリア卿はもともとイーストファリアの将軍職にあったのである。

権力争いに敗れ処刑されるところを逃げ延び、サンカ族を腕一本でまとめ上げ、当時男爵位にあったエレスに仕えることとなった。その時に、領都フリードの守護者との意味合いでフリーデン隊を結成し、その初代隊長に任じられた。現在はエレス王の親衛隊を率いている。元山賊が王の親衛隊となったのは並み外れた武勇と忠誠によるものであると認められている。それはさておき。


 イーストファリア大公国は相当な混乱のさなからしい。住民が逃げ出している村落も増えており、治安悪化はかなりひどいようだ。そして越境してきた流民を受け入れていると、向こうの兵が逃げ込んできた流民をこちらによこせと要求してきた。だがこちらの警備兵の隊長が正式に亡命してきたので、こちらの保護下にあると突っぱねた。そして小競り合いが始まる。というか、一方的すぎてな戦闘にもならないような状況だったと報告が上がっていた。逃げ散っていった次の日、1000ほどの軍が国境に現れ、流民を捕らえ始めた。流石に国境の向こう側では手出しができない。だが、一部が越境して逃げこむことに成功したことで、状況が変わった。予め呼んでいた援軍と合わせて、小競り合いを超えたレベルでの戦闘が発生したのである。その場では決着はつかなかったが、お互いが援軍を呼び双方合わせて1万近い兵が睨み合う自体に発展した。

 一方その頃、アースガード連邦の首都マグデブルクで動員令が出されたとの報告が上がっていた。テルローで捕虜を収容していた施設をそのまま流用し駐屯地としており、こちらの国境沿いでも敵兵が増員されているとロンディニウムに報告が上がった。カイルも動員命令を出し、テルロー方面への出兵を命じた。南下してシレジエン方面に向かうのであれば、レックスの軍が動く。同時にカイル軍が国境を突破して国境の要衝フレクベルグを攻撃する手はずとなっていた。北方と東方同時に緊張が高まっていた。

 フリード王国とアースガード連邦では国力差が7:3ほどになっている。そのまま動員できる兵力に反映される。しかしながら前回のシレジエン防衛戦では魔物の軍を操り兵力差を埋めてみせた。魔物たちを操る方法は未だつかめておらず、人間の軍を相手にしている場合とは思いもよらぬ形での奇襲を受ける場合も考えられる。ハンターやレンジャーと呼ばれる斥候兵を多めに配備することで、少しでも兵の消耗を避ける狙いの編成が成されていた。それはエルフ族がもたらした技術でもある。

 小競り合いに端を発した動員令は国境に緊張をもたらし、開戦へのカウントダウンが始まったように見えていた。そんな中王都フリードのみは近衛兵が通常待機になっている以外は普段と変わらない様子を見せていた。この状況の主導権はエレス王にある。その王が不気味な沈黙を保っていたことがさらなる緊張感をもたらしていた。

「俺は死ぬのかもしれん」最強の追手がエレスに迫る。いかなる隠形もいかなる跳躍も、全て見透かされ迫り来る。放たれる矢は逃走経路の選択肢を狭め、じわじわと追い詰められていた。

追手がつぶやく。「この浮気者」

次回:戦時下でも日常を大切に

上記の煽りはフィクションになるかもしれません

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ