新王国の誕生
前半の悪巧み会話はただのリハビリです。
今日も今日とて書類の山との戦いだ。エルフ族とドワーフ族の統治への組み込みが急務で、力を示したこともあり諸侯からの問い合わせが引きも切らない。しかしながら、長年権力に与せず独力で生き抜いてきた彼らを貴族であると言って飼い慣らせるとは思えなかった。むしろヒノモトの民のように、彼らの代表者に権威と権利を与えて王直属の戦力とするべきとの意見に諾とし、寄り親にはノブナガ公を任じた。丸投げにあらず。違うんだからな?
先日の訓練で懐かしい顔を見かけた。見事のあ戦術の冴えをみて歓喜が抑えられない。思わず抜擢をしてしまったが、身びいきとの意見は幸いにして出なかった。まあ、かなり重用した形になっているし、俺も俺もという連中がいるのだろう。とりあえず能力を示してもらえば俺としては問題ない。能力に合わせた職位とそれ相応の責任をおってもらおう。とりあえずロレンスくんには頑張ってあの3部族混成部隊を率いて結果を出してもらいたいものである。各部族から選りすぐりの精鋭を集め、お前らの働きが部族の評価を決めると煽ったからな。結果が楽しみで仕方ない。
「陛下、今度はなにを悪企みしているのですか?」
「人聞きの悪い事を言うなベルティエ、例の混成部隊がどうなるかと考えていたのだ」
「ふむ、サヴォイ伯からは内輪もめに忙しいとの報告が上がっておりますが」
「まあ、能力が高いってことはそれなりに我が強いってことでもある。それをまとめるのも指揮官の腕の見せ所だろう」
「陛下、すっごい悪人面になってます」
「ふん、善人ぶってるだけで王様が勤まれば苦労しねえ」
「はっはっは、ごもっともですな」
「少しは否定してくれないかな、俺が腹黒みたいじゃないか?」
「陛下、彼を知り己を知れば百戦するも危うからずと言います」
「うん、俺の好きな兵法書の一節だな。で、何が言いたい?」
「はっはっは、お判りになっているのに、お人が悪い」
「てめえベルティエ、出世させてやろうか!」
「陛下、普通それは脅し文句にしませぬ」
「俺は普通じゃないからな。出世るれば仕事が増えるぞ」
「さらなるご信任いただけるとか恐悦に御座いますな」
「こんな時だけは模範生になるんじゃない」
「いえいえ、いつも陛下には感謝の念に堪えません」
「で、本音は?」
「過労死って言葉が巷の流行りだそうです」
「そうか、ベルティエも体に気をつけるのだぞ」
「あのー副官の人事ってどうなりましたか?」
「さあ、知らんな?」
「ちょっと陛下、マジでやばいっす、うちのスタッフもう3日も帰ってないのがいるんですよ?」
「俺も帰ってないぞ?」
「あんたここが住処だろうが!」
「いっそお前さんの私室に嫁呼ぶか?ああ、そうか、お前の嫁さんをそのまま副官に」
「いや、妻は確かに元は軍官僚でしたが」
「そうだね、嫁にして家庭に入れたんだよね。そこの現場から苦情が来てるんだよね?」
「う、ごほっ?!」
「つーかもう手回しして呼んでみた」
「え?」
「貴方・・じゃなくてベルティエ閣下。こちらの書類にサインをお願いします。あと、これ計算ミスで現場から差し戻しです。試算は済ませておきました」
「あ、ああ、わかったってお前なんでここに!?」
「陛下からの現場復帰要請があったからです。あと、夫を過労死させるなど妻の名折れ」
「うん、で本音は?」
「子供もいないうちから未亡人とかひどすぎます」
「あー、ちゃんと離れに部屋移動させたから、頑張れ!」
「あ、ありがとうございます・・」
うむ、ベルティエが目の幅で涙を流しながら頭を下げている。奴が尻に敷かれているのは公然の秘密だ。まあ、あれだいいことをした後は気持ちが良い。
閣僚会議、各部署のトップが集まり方針を決定する。ヒノモトの民がもたらした経済の発展と膨張はより多くの富を国民に、ひいてはそれを治める領主にもたらした。先日のノブナガ公の上納金が公表され、それを街道整備と治安維持、新規開拓へ全額突っ込んだ。そしてエルフとドワーフの両部族からの技術供与、これで国が発展しなかったらなんかの冗談・・にもなりゃしねえ。上がってくる報告はプラス方向のものが圧倒的に多かった。そして今日の会議には初めての参加者がいた。エルフの族長アルバート卿とドワーフの族長グスタフ卿、そしてノブナガ公の名代のマサヒデ殿。そして、先王陛下だ。
会議は滞り無く進み、技術革新のもたらした生産力向上を功績として認め、近日中に伯爵位を授与することが内定した。そして先王陛下から最後の発議が成されたとき、会議場がどよめいた。
「さて、わしからの提案は他でもない。エレス王を初代としての新王国の樹立じゃ」
「なんですと?」
「いや、しかし伝統ある王国が・・・」
「わしは賛成だ、もはや今となって新王国を名乗っても良いほどの版図であろう」
「他でもない、先王陛下のお言葉であるが・・・」
諸侯も動揺を隠せない。まあ、そもそも、俺って最初は王配に過ぎなくて、外敵の攻勢を一気に退けたことで人気が高まりすぎたのもあるらしい。程々に勝てって言われても、無理だよなあ。味方の兵を無駄死にさせるくらいなら、俺が面倒事を被ったほうが気が楽だし。
まあ、あれだ、実際は根回しがある程度終わってる出来レースだし、シャイロックがうまく場をまとめはじめた。奴の資金操作で、指先をちょいと動かすだけで破産する諸侯は片手の数じゃ聞かないらしい。うん、笑えない。おお、話がまとまったようだ。
「では、新王国の名はフリード王国。初代はエレスⅠ世とする」
やたら仰々しいな、まあ、王様になったあたりでそこら辺は諦めた。しょぼいお御輿を担ぐのは担ぐ者にとっての恥となる。心情的にはあれだが無駄遣いではないととりあえず納得はした。
そして、ひと月後、フェリアースの後継としてのフリード王国の樹立を宣言した。大陸には激震が走ったらしい。法王庁からはアルブレヒト枢機卿がやってきて祝辞を述べていった。連邦からも使者が来たが、フェリアースの後継という文言を取り消すよう要求が来た。まあ、軽くスルーしておいた。
この宣言には挑発と敵味方の識別という意味もある。連邦は敵だ。そして各諸侯の反応を見る。フェリアースという名前は特別な意味を持つ。それを敢えて利用したのは若干気が引けるが、そもそも俺自身が4国の出身ではないしな。
ああ、流石に敵を増やしすぎるのもまずいということで、俺の出自も合わせて発表された。英雄王の故郷出身で、その一族の血を引くものである。神託を受け、英雄王に成り代わり、その後継となるべく隠れ里を出てきたという話だ。はっきりと言って胡散臭すぎるが、まあ、方便って便利だね。これでこっちに転ぶ諸侯が出たと聞いた時は茶を噴き出しそうになった。連邦内部でも動揺してるらしいので、虚名でも利用できるもんだなと妙に関心したものである。
新王国の樹立と、エレスの素姓に対して動揺する諸侯たち。特に国境沿いでは動揺が激しかった。
疑心暗鬼に駆られたある諸侯が国境雑煮兵を集め、反応した別の諸侯も兵を出し、小競り合いが始まる。
なし崩し的に始まった戦闘はどんどん範囲を広げてゆくのだった。
次回:遭遇戦(仮
この煽りも変更される可能性があります。




