表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

70/120

閑話 学校編~普段おとなしいやつを怒らせるととんでもないことになる~

模擬戦から行軍訓練にしようと思ったのですが、模擬戦が思ったより膨らんでしまった。

 あのトーナメントから半年が過ぎた。おっさんの差金と思われるようなトラブルはなく、イリスとかミリアムに対しての妬みと思われる決闘騒ぎは週イチペースで既に日常と化している。良くも悪くも俺の武勇(笑)は知れ渡ったようだ。そういえば、レックス卿とはなんとなく馬が合い、友人っぽくなっている。阿呆な兄と兄をダダ甘やかしの父に頭を抱えているようだ。

 騎士学校に入学してよかったと思える点は、書籍の閲覧がかなり自由なことだ。以前ナガマサに見せてもらった兵法書の一節があったがそれが完全版でそろっていたものを見つけた時は正直震えた。10日ほど授業放置して図書室にこもった時は流石に教官に叱責を受けたが、追試となった戦術論でケチのつけようのない成績を上げたったので、問題はないだろう。

 カイルとナガマサも部隊を動かす理論的なものを学び、ミリアムとトモノリは武芸の腕を磨き真っ先に突貫する切り込み隊長としての力量を上げている。正直この二人にはまともにやりあって勝てる気がしない。負けもしないだろうが。

 イリスは組織運営と兵站について学んでいるようだ。実際として兵站は物流に通じ、商家の娘であるイリスの将来にも役立つはずだ。そして、卒業後の進路についても未だに勧誘を受けている。自分と結婚して入婿で家を継いでも良いとか、親父さんに先に確認すべきだろ?そもそも俺に商人が務まるのか?まあ、護衛部隊を率いて戦うのは向いてると思うが。そういえばこいつの実家の話を聞いたことがない。個人的なことはあまり話さないので、なにか訳でもあるんだろう。


「エレーーース! 部隊規模の模擬戦と行軍訓練の日程出たぞ」

「おう、うちの班はどこと当たるんだ?」

「3戦やるらしいな・・・1戦目はロレンスのとこか。あいつ実は個人戦より指揮官として優秀なタイプだったんだな。近衛から声がかかってるらしいぞ」

「へえ。まあ、指揮官がへっぽこだと、どんだけ指揮能力があっても兵がついてこないしな」

「そういうことだ。というか、校内最強が揃ったうちの班はどうなるんだろうな」

「おいおい、最強って誰のことだよ?」

「おい、お前ら自覚なかったのか?」

「おう、レックス卿。お元気そうで何より」

「おう、久しぶり。じゃなくてだなお前んとこの班は最強の人材が揃っちまってるんだよ」

「へ?どゆこと??」

「バルデン伯を叩きのめした「黒騎士エレス」防衛戦なら敵なし「鉄壁のカイル」ほかには・・・」

「まて、そんな二つ名聞いた覚えがないぞ!?」

「まあ、最後まで聞け、武芸、魔法ともに並ぶものなき「完璧戦士ミリアム」」

後ろからブフって声が聞こえた。パーフェクトウォリアーとかどこの狂戦士だ。

「レックス卿、その呼び名には異議を唱えたい・・・恥ずかしい」

「俺がつけたわけじゃねー。抗議は却下する」

「ちなみに他の連中は?」

「突撃バカの「突貫トモノリ」と攻守ともにスキがない「名将ナガマサ」だな」

「なんか、一番まともそうで、それでいて特徴がないでござるな」

「わしのはまあ、そのままだのう。ひねりがないというかなんというか」

「考える奴が面倒くさくなったんだろ?」

「かもしれんな」

「ちなみに、第3戦で俺の班と当たるんで、お手柔らかに」

「大丈夫、一思いに苦しまないようにしてあげる」

「待てミリアム嬢、それはどういう意味だ!?」

「うふふふふふふ」

「・・・怖いんですけど」


 模擬戦は500の兵を率いて行う。王都を出たところの平野部で野営訓練を兼ねて行われる。指揮官コースに在籍している候補生が班を組み、兵は王都防衛軍お訓練を兼ねて実施される。

 へんてこな異名を付けられたミリアムの怒りは凄まじく、模擬戦ではワンマンアーミー状態だった。ていうかだ、会敵する前に指揮官を狙撃とかやめろ。実際の戦場では有効な手立てだが、撃ちぬかれたロレンスくんがガチ凹みしてるじゃないか。第二戦ではトモノリを先頭に見事なまでの中央突破を敢行、ミリアムとやたらめったら息があった背面展開は何なんだ?分断した敵兵を包囲殲滅し、残りをさらに撃破と戦術の教科書に理論だけは書いてあるような一戦だった。

 そして第3戦。オーソドックスな横陣に騙されてはいけない。左翼に配置された軽歩兵が怪しい。こちらの左翼の攻勢を呼び込んで部隊のバランスを崩し、そのまま斜線陣に持ち込まれた。次席指揮官ガ系歩兵を率いてこちらの本陣に切り込む。カイルが兵を率いて迎撃し、こちらの機動戦力をトモノリとナガマサに率いさせ、中軍と左翼の境界線を突っ切らせる。これにより敵の切り込み隊が分断され、カイルの防戦と反撃で壊滅する。そして最終兵器投入。ミリアムが一直線に敵本陣に突撃し、馬上のレックス卿を叩き落とした。南無。


 なんかこの一件以来、ミリアムに言い寄る阿呆が減ったことは俺のトラブル減少につながり非常に良いことだった。パーフェクトウォリアーはミリアムの前では禁句になったのは、笑い話と言っていいよな?だがイリスがそれを口にしてコテンと首を傾げた時はいろいろひやっとした。


 その後、冬場の最も冷え込む頃合いに行軍訓練を行うと発表された。なんとなく嫌な予感はしたが、参加しないわけには行かず、知人などを通じて実習の内容を確認し、万全の体制を取れるように確認していった。

班ごとの行軍訓練で吹雪く中を黙々と行軍してゆく。エレスの班は最後尾とされ、視界がが失われた僅かな間に置き去りにされてしまう。方向を見失ったなかで、物資もぎりぎりしか無い。絶体絶命の最中一人の青年がエレスたちに合流した。

次回 こんどこそ行軍訓練・・・のはず

お楽しみに?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ