しばらくたって
アルクさんがやってきた生活に慣れてしまった私は、少しというかほとんどの家事をアルクさんにやってもらうようになっていた。確かに、やることがないアルクさんにとっては家事は暇つぶしになるのだが、私には申し訳なくて仕方がなかった。とかいって、物凄く助かっているのも事実である。
「優奈、優奈、朝だって。」
「んーあと五分ー…」
「…それ、さっきも五分って言ってた。ほら、五分たったから呼びにきたんだよ。」
「…んー……じゃああと十分ー……」
「ええ?増えてどうするんだ。全く、今日は朝から会議というものじゃないのか?」
「………会議??」
そこで、ふと目が覚めた。
確か、会議は……木曜日のはず──…?
「今日水曜日だもん、ないないないー」
上半身を上げた態勢をまた元に戻し、枕に顔をうずめた。
「え、今日は木曜日だけど。」
………ナンダッテ?
枕に顔をうずめてしばらく考え込む。
「ま、間違えたー!!!」
そうだそうだ、今日は木曜日だ。
私は勢いよく体を起こし、ベッドから降りようとし─────ゴンッ!
「…いったぁー」
「………っ!」
アルクはあごを押さえ、私は額を押さえる。思いっきりぶつかってしまったのだ。
「…ご、ごめんー!!!」
アルクにかまうことなく、ベッドから颯爽と走りぬける。急がなければ。私は今までで最短で準備を済ませて家をでた。
「優奈、おそーい。」
「ごめんごめん、ちょっと寝坊しちゃってさー!」
せわしく部屋に入ってきた私に、同期の友達である早百合が口をとがらせてこっちを向いた。
「…今日の準備私が全部やったんだからね!」
「うんうん、本当にごめん!次なんか奢るからさぁー。」
「なーににしよーかなー。」
そんなこといってる間に始業時間になった。ちょっとした朝礼をすませた後、必要な資料をもっ早百合も会議室にむかう。
「…最近、なんか張り切ってない??」
「そ、そう?」
いきなり、覗きこむ早百合にすこし驚きながらもそのまま歩みを進める。
「んー、なーんか……」
曖昧な言葉をいいながら私をクンクンと嗅いできた。
「ちょっと、なにすんの。」
慌てて早百合から離れるもののすでに嗅ぎ終わったあとらしく、手に抱いた資料を大切そうに抱え、首を傾げて悩み始めた。
「……ねぇ、男できた?」
「はい!?」
何なんだ、その発言。
私は眉をよせた。
「最近、色っぽくなってない??」
「いやいや、普通だって。」
「いーや、絶対なってる。」
「なってないってば。」と反論しようとしたが、言っても無駄だと思い言葉を飲み込む。早百合は、物凄く頑固だ。それはある意味長所でもあり、短所でもある。
「なんでそう思うの?」
「………私の勘。」
「………………。」
会議室について、2人は軽く身だしなみを整える。
さぁ、仕事だ。