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第32話 祝勝会にて

「我々と、カグツチ弐型改の勝利に乾杯!」


「「「かんぱ~い!」」」


 キンッ


 博士の音頭と共に、グラスを合わせる音がそこかしこから響く。


「今日の料理は、全て天然物の食材を使っている。好きなだけ飲み食いしてくれたまえ!」


 演台の上で両手を広げる博士の言葉に、歓声が上がる。

 先日行われた、極東軌道上に存在していた敵旗艦級の排除作戦。

 三機のカグツチ弐型改の活躍で、見事旗艦級を葬ることが出来た。今日はその祝勝パーティである。


(ようやくここまで来たか。長かったような短かったような気がするな!)


 仮想体である俺は、豪華な料理のお相伴にあずかることはできないが、笑顔の博士や整備主任たちの姿を見ているとこちらまで嬉しくなる。

 今日は研究センター主催のパーティという事で、制服姿の美嘉たちもリラックスモードで談笑している。


「やっば! ガチ天然肉のすてーきなんて、久々に見たし! え、これってマジでたじまぎゅ~なん?」


「いくら高級食材とはいえ、博士が動かせる予算の額を考えたら余裕で本物だと思いますよ? ていうか、はしゃぎ過ぎです美嘉さん」


「そーいってもぉ、莉乃っちもウキウキでしょ? ほら、莉乃っちが好きなカニもあるよ?」


 ぱくり


「……む、超絶美味しいです」


 取り皿に積まれた蟹のむき身をフォークに差して莉乃に食べさせてやる美嘉。

 最初に比べると、随分仲良くなったみたいだ。


「それにしても、私が活躍できたのは美嘉さんが敵戦闘機を排除してくれたからですね。さすが美嘉さんはハエ捕りばかりが得意になりますねwww」


 ぴしっ


 美嘉が右手に持ったフォークが取り皿に当たり、皿にヒビを入れる。


「ほぉん? まー、テキちゃんの撃墜数は美嘉が圧倒的だからいいけどぉ~。莉乃っちは武器がダサいから、変なオタクちゃんに人気だよねぇ?」


 口角を上げたまま青筋を立てた美嘉が、スマホにエゴサの結果を表示する。

 確かに、幅広い層に人気がある美嘉に比べ、莉乃のファンはサブカルオタクが多い。


「莉乃っちのぱいるばんかーちゃんをアレに見立てたコラ画像もあるしぃ、ぷぷぷwww」


 R-18な投稿サイトには、莉乃をショタ化したファンアート?がいくつも投稿されている。配信時は地味なセーラー服姿でつんつんしてデレない莉乃のファンは、そういう方向の魅力を莉乃に感じているらしい。


「……まあ、そういう嗜好があることを否定はしません。私自身、か弱い男子になって王子様に責められるのはアリよりのアリですね」


「え”っ!?」


「私の仮想空間に参加されますか? 美嘉さん。私は攻めでも受けでもどちらでもいいのですが」


「い、いやあのその……間に合っとるって~!」


 真っ赤になり、両手で顔を覆ってしまう美嘉。


「くふふふ……」


 腐系もイケる莉乃である。マウント(?)バトルは莉乃の勝利に終わった。


「ほぉら、二人とも! せっかくのごちそうなんだから、楽しく頂きましょ!」


「「うわっ、礼奈子さん(っち)!?」」


 そんな少女同士の微笑ましい(?)やり取りに、割り込む礼奈子。


「一応学生として出席しているから、ココでは飲まないけど……アフターではたっぷり飲むわよ♪」


 礼奈子が左手に持っているのは、ノンアルコールのシードル。


(礼奈子を飲ませないのは博士の指示か……さもありなん)


 酒が入った礼奈子はパイロット陣の中でも断トツの気性難である。

 戦略自衛隊航宙軍の司令や、招待された政府関係者の前でヤンデレシャンパンタワーやドン○リ一気を披露するわけにはいかない。


「わたくしの恰好も、今日はパーティモードね♪」


 今日の礼奈子は、セーラー服にインナーをきちんと身に着け、スカートも膝丈だ(これは美嘉も同様である)。

 とはいえ、足元がハイヒールなので更にコスプレ感が漂っているのだが。


「うふ、うふふふふふ……それにしても夜が楽しみね、ユージ」


(…………)


 今日の深夜、俺と礼奈子は参号機のコックピットでアフターと称する二次会をすることになっている。

 正直言うと早く寝たい。いやマジで。


「「う、うわぁ」」


 ぶつぶつと呟き出した礼奈子の様子を見て、手を取り合って震える美嘉と莉乃。

 ヤバい奴にはもっとヤバいやつをぶつける理論で、確かに美嘉と莉乃の絆(?)は強まっていた。


「やぁやぁみんな、楽しんでいるかねぇ?」


 そんなテーブルの空気をガン無視し、上機嫌な博士が現れた。

 右手にはノンアルコールワインのボトル、左手にはウイスキーが入ったロックグラスを持っている。


「君たちも呑みたまえ! 勿論ノンアルコールだがね、はっはっは!」


 少し酔っているのか、陽気に笑いながら美嘉たちのグラスにノンアルワインを注ぐ博士。


「いやいや、久しぶりにこれだけ食べたよ。付き合いも楽じゃないねぇ」


 そのまま椅子に腰を下ろし、お腹をさする博士。


 監視カメラを使って会場の様子を確認すると、パーティも過半が過ぎ出席者同士のあいさつ回りも終わったようで、退席した出席者も多い。

 このテーブルには未成年(礼奈子除く)しかいないので、近づいてくる人間もいない。


「……さて」


(!!)


 博士が俺のカメラの方を向き、グラスを二回振る。この合図は……。


 ヴンッ


 俺はテーブルの周囲に遮音フィールドを張る。

 また、整備主任ら博士に近しい人間がさりげなくテーブルの周りをガードした。


「君たちはカグツチ弐型のパイロットとして、本当によくやってくれている。人類で初めてプローバーのフリゲート級を沈め、先日は極東軌道上にいた旗艦級すら排除した。世界中からひっきりなしにカグツチ弐型改の派遣要請が舞い込んでいる……もちろん断ったがね」


「「「な、なるほど?」」」


 いきなり美嘉たちを褒めたと思えば、仕事の話を始める博士。

 こんなパーティ会場でなぜ?

 困惑する三人だが……。


「いやなに。作戦中の通信や、研究センター内でのブリーフィングは内容がすべて記録されているからね。むしろこういう場の方が都合がいいのさ……まあそんな事情はいいとして」


 ぐいっ


 ロックグラスに残ったウイスキーを、一気にあおる博士。やはり今日の博士は上機嫌だ。


「ワタシとしては半年以内に極点軌道上に遊弋している、敵の基地に攻撃を仕掛けたいと考えている!」


 博士がぶち上げたのは、とんでもないプランだった。


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