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第14話 莉乃のケアもしよう(過重労働)

「あ、優史さん。お疲れさまです」


 真っ青な顔で緊張していた美嘉と違い、莉乃はいつも通り落ち着いていた。

 それどころか、小さなカメラをコックピット内に取り付けようとしている。


「これですか? はい、問題ありません。マッドサイエンティスト満里奈博士の許可は取ってあります」


 機密の塊のコックピット内に、外から持ち込んだカメラを取り付けるなんて……俺の顔にそう書いてあったのだろう、ぱたぱたと手を振った莉乃がカメラについて説明をしてくれる。


「なんでも、政府広報に使いたいんだとか……美嘉さんの壱号機にも取り付けるそうです。いたいけな少女を見世物にするなんて、さすがお偉いさんはプロパガンダに熱心ですよね」


 ふん、と鼻を鳴らす莉乃。

 今の彼女は、シニカルモードらしい。


(ん~、ぱっと見は平気そうだけど……やはり緊張しているか?)


 オムニゲート機関の逆位相を発生させるためには、安定した(?)感情の揺らぎが必要。博士の言葉を思い出した俺は、努めてイケメンボイスを準備する。


「今は外と繋がっていない。俺と君……二人だけだぞ?」


 二人だけの秘密の空間。莉乃はこういうシチュエーションが大好きだ。


「つっ!? さすが優史さん……私の緊張を見抜かれていましたか」


「ああ。俺だけが素直な莉乃の、本当の顔を知っているからな」


「ふふ、他のボンクラ連中には秘密ですよ?」


 柔らかな笑みを浮かべる莉乃。

 こうしていると、とても可愛らしい。


「画角を微調整して……これでばっちりです」


 カメラの設置も終わったようだ。

 場所はメインコンソールの下。結構ローアングルな画角になる気がする。


「こうやって、私と優史さんの成長記録を残しておきます」


 シートに座り直した莉乃は、シートベルトとハーネスを装着する。

 美嘉と同じく、莉乃も制服姿だ。

 いつもの長袖ジャンスカ制服。胸元に白馬のアクセサリーを付けているのがオシャレポイントだろうか。


「そして戦いが終わった後、満を持して優史さんが義体で復活、救世主として世間に公表されます。そこで私の出番です。実は私、陰野莉乃は優史さんと共に成長し、一心同体の存在になっていた……美嘉さんをはじめとした全国のリア充女子は嫉妬で爆発するでしょう、ざまあみろ」


「お、おう」


 相変わらずの妄想力である。夢見る電脳少女は伊達ではない。


「それと」


「?」


 何を思ったか、莉乃はカメラのアームを動かし、自身の下半身がギリギリ画角に入るようにする。


 ビッ


 そして少し両脚を開き、左脚内もも側のタイツを少しだけ破る。


「り、莉乃?」


 高デニールのタイツから覗く白い素肌が、コックピット内のLEDライトを受けてとても艶めかしく見えた。


「あ、大丈夫です。この映像を配信した時……スクショした奴はただのスケベですが、スクショしなかった奴は……私と優史さんの敵です」


「……は?」


 この子はいきなり何を言い出すんだ?

 思わず間の抜けた返事をししてしまう。


「つまり、私と優史さんの魅力に惹かれて配信を見ている輩は問題ありませんが、優史さんが可愛いといってくれた私が優史さんの分身であるカグツチ弐型に乗っているのです。これに興味を示さない輩は機密を狙う不届き者。

 アクセス元から住所を暴いて、マッドサイエンティストに始末させる……私と優史さんの将来のため、必要な処置ですよね」


「お、おう」


 俺は、戸惑いながらも頷くしかなかった。



 ***  ***


「は~~~っ、疲れた」


 まだ飛び立ってもいないというのに、どっと疲れた俺は仮想体を空間内に生成したソファーに横たえる。


『はっはっは! 感情位相差が110を突破、さすがミマタ君だねぇ!』


 上機嫌な博士の声が聞こえてきた。

 どうやら俺のメンタルケアは良い結果を引き出したようだ。


『これなら行ける……よし、壱号機及び弐号機、リフトオフ!』


「あ~はい。コントロール、カグツチ弐型……発進します!」


 俺は気を取り直すと、壱号機と弐号機のエンジンを全開にした。


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