6 転機
4日目は前日と同じように過ぎ、マズイパンなら一度に12個は出せた。
昨日と同じように経口補水液で流しこむ。
食事は1日2回だけだが、誰ももっと欲しいと言わなくなった。
5日目に、手の甲が光ったのでステータス画面を出す。
お弁当のスキルがレベルアップして、コッペパンが出せるようになっていた。ピーナッツバターの小袋がついているのはまさに給食で昔食べたのじゃん。
「やった、あの固いパン食べなくて済むね」
あまくやわらかいパンはおいしかった。あっという間に食べ終わってしまう。
「あーもっと食べたい」
私の総MPも増えてはいた。でもコッペパンは使用MPがマズイパンの2倍。
全員で食べるには足らなすぎる。
「夜はまたあの固いパンにする」
マズいパンも腹持ちだけは良かった。
探索組が仕留めて来る獲物は増えたけど、それは私の解体仕事も増やしてしまう。
精神的にボロボロだよ。
しかし、転機は6日目に訪れる。
暁君のスキル『引きこもり』が、レベルアップしたのだ。
「スキル解除」
一度扉を消してから暁君は再度スキルを唱える。
「引きこもり」
現れた扉は3つに増えている。
「これ、部屋が広いから入れる人数も多いんですよ」
扉の先に広がるのはダイニングキッチンだった。
「台所がある‥」
私は冷蔵庫にかけ寄り開く。
中はスカスカだったが、調味料と小松菜と豚肉を見つけた。
他の棚も空きスペースが多かったが、ジャーにご飯がある。
「やった、腹減ってたんだよね」
素直に喜ぶ暁君に、私は胸を下ろした。
(やっぱりこいつ最強だった)
異世界物では米の飯や醤油が手に入りづらいのがセオリーなのに、もう手に入るなんて!
「コ、コーラもある。飲んでいいか?」
1人だけ自室のベッドで寝られるのを嫉妬しまくっていたみんなだが、暁君を見る目が一気に変わった。
「暁がいてくれて良かった」
電気も水道もガスもそろっている。
収容人数も本人プラス4人に増えていたから、料理経験がある子を引きこんでひたすら調理に励んだ。
私はミニおにぎりと肉野菜炒めを皿に盛って洞窟に戻る。
いまなら食器だって和食器と洋食器を合わせれば人数分あった。
「やった、ちゃんとした飯が食える!」
後藤君は喜んでいたけれど、1人分の割り当ては少ない。
肉と野菜を口に入れると幸せが襲ってきた。
「え、私って料理天才かよ」
今まで食べた中で1番おいしい肉野菜板目だ。感動のあまり落涙してしまった。
しかし‥夢のような食事は感動ですぐ終わり、まだまだ欲求不満な口に入れられるのははマズいパンだけ。
「マーガリンぬればそれなりにいけますよ」
餓鬼の後藤君はマズパンにいろいろつけて試していた。
(レベルやスキルを上げれば、もっと快適になるのか)
胸に希望がわいて来る。
探索組が汗だらけで得物を持って帰った時は本当に申し訳なくなったくらい。
「何なんですかこのいい匂い」
疲れ切った坂本君が泣きそうになっている。
私は急いで取っておいたおにぎりを出した。
「俺がキャンプセット出す意味あるのか?」
冒険者鈴木が悩んでいるが、多分他の場面で役に立つはずだよ、きっと。
夜は暁君に許可を取り、4人を居間で寝させた。選抜メンバーは探索組の6人をジャンケンさせる。
彼らはこの日かなり頑張ってくれたのだ。得物を狩り、地図がステータス画面で確認できることを発見してくれた。
情報があれば動ける範囲だって広まる。
翌日スキルをリセットしたら、冷蔵庫やジャーの中身が復活するだけじゃなく、暁家の台所に昨日なかったカップラーメンが2個現れた。
(スキルはおそらく使えば使うほどレベルが上がる。と言うことは暁君が引きこもれば引きこもるほど食料が増えるんじゃないか?)
それなら彼が自室でひたすらゲームで遊んでいるのもまったく気にならない。
カップ麵は細かく砕き、鍋にご飯と一緒に入れ水で煮る。
「みんな、ラーメンおじやだよ!」
お茶わんにマグカップに木のお椀に、おじやをそそぐ。
多めの水で作ったから、全員にカップ一杯ずつは行き渡った。
ふうふうしながら熱々のを口に運ぶ。うまい。疲れた体にしみる。
(米が少ない時はお粥にするって、昔の人が書いた本に書いてあったのだよね)
米みそ醤油を早々とゲット!




