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♰♰♰ 救世主は手鏡み ♰♰♰

みきはまるで沈もうとしているタイタニック号から奈落の海へと堕とされる乗客のように本棚を掴む手が滑り落ちて床へと落下してしまった。だが、それはかえって本棚にまでよじ登ってきたゾンビから逃れる事ができた。それとちょうどみきが落下した場所は先ほど本を頭に当てて倒したゾンビがうつ伏せの姿勢で倒れていたので、ゾンビの背中がみきのお尻を受けるクッション代わりとなって、みきはさほど落下した時の衝撃は受けなかった。倒れてきた本棚はそのまま壁に当たり、中にまだ残っていた多数の本が落下してきたが、本棚自体がみきに当たる心配はなかった。


「あいたたたたた・・・・」


重症ではないものの落下によるお尻の衝動はしばらくみきを襲った。


「そういえば本棚にいたあの化け物はどうなったの?」


みきは隣にある落下した本が積もった山を見た。そこには本の山に埋もれて動かなくなってしまったゾンビの姿があった。運が悪い事にゾンビはクッションもない硬い床の上に落ち、しかも本棚が倒れた拍子に本棚に入っていた大量の本がゾンビの頭上に襲いかかってきたのだ。


みきはそばにあった自分のかばんを手に取り、すぐに立ちあがると足元がふらつきながらも化物がいるその場からすぐに立ち去っていった。こうしてみきは無事に災難から免れることが出来た。だが、みきはなぜか自分を襲ってきた化物達がいる場所へと戻ってきたのだ。みきは床にしゃがみこむと手探りで大量の本をどかして必死で何か大事な物を探っていた。


「ないないないっ!」


みきは埋もれる本の中からある物を探していた。


「あったーーー!!!!!!」


それは先程、みきが何度も自撮りをした自分のスマホだった。みきは思わず歓声をあげてしまったその時、埋もれた本の山の中からゴゴゴ・・・と雪崩が起きる直前のような嫌な音がしたかと思うと次の瞬間、埋もれていた本の山の中からゾンビが蘇生して起き上がった。


「なんでまだ死なないのよぉっ~!!!!!!!」


みきはスマホをかばんの中に入れるゾンビに背を向けてすぐに通路へと逃げだして行った。蘇生したゾンビはすぐに立ち上がり逃げだした餌の行方を追って本棚が並べてある二つの列の間の通路に来た。だが、通路にはみきの姿が見えない。


みきは素早い足取りで図書館から出たのか、もしくはどこかに隠れているかだ。ゾンビはのろのろと遅い足取りではあるが通路を歩み始めた。左右を見渡し、本棚と本棚の間にみきが潜んでいないか見渡していた。だが、一向にみきは見つからない。だとするとやはり逃げ切られてしまったのか。とゾンビは右に顔を向けたら、本棚と本棚の間に制服を着た女の子の後ろ姿が見えた。あれは逃げた餌に違いない。


みきは本棚と本棚の間から奥の突き当りの通路側に出ると左へ曲がって行った。ゾンビはさっそくみきを追っかけて本棚と本棚の間まで入り、中間地点まで来たその時、いきなり左側からまばゆい光がゾンビを襲った。左側を見ると横にある本棚に並べて置かれてある本の向こう側の通路から顔の前にスマホを持っているみきの姿が見えた。みきがスマホを顔からどかすと隠れていたみきの表情が目に入った。みきの表情はニヤついていた。


「逃げ回る方が案外疲れるんのね。」


みきはもはや王子様を待てば助かるという言葉が信用できないでいた。


「だから倒す側に回る。」


みきがスマホを制服の上着のポケットにしまうと両手でゾンビの目の前にある本棚を力強く前に押した。押された本棚がゾンビに向かって倒れてきた。ゾンビはまたもや今は読まれなくなった大量の本の恨みをくらった。倒れてきた本棚はゾンビの背後にある本棚に当たってゾンビは本棚に挟まれて潰された。


「逃げるより立ち向かった方が早い。」


みきはすぐに中央の通路に出た。だが、運が悪い事にもう一匹の生き残りのゾンビがすでに復活し、通路側に出た餌の姿を目撃していた。そうとは知らずにみきは左側の本棚と本棚の間に入っていった。


ゾンビは餌の後を追っかけて足を進めた。うまくいけば餌が後ろから追っかけてくるゾンビの存在に気づかずに安々と餌に追いついて、餌を捕食できる。ゾンビはみきが向かった本棚と本棚の間へと左に曲がろうとしたその時、向かおうとした先から何か物が素早い速さで飛び出して来てゾンビの腰に激しく激突し、背後にある本棚と頭がぶつかった。


ゾンビの腰にぶつかって来たのは図書館の本を元の場所に戻す時に利用するキャスター突きの本棚だ。ぶつかった所からゾンビのかつて人間の証であった赤い血がどくどくと流れていた。ゾンビは絶命する前に餌がどうして後ろから追いかけてきていた自分に気付いたのか気になって前を向いた。


すると餌の片手には手鏡を持っていた。みきはつねに胸ポケットに入れてある自分を見つめる用の手鏡を利用して後ろから追いかけてくる化物がいないのかをちゃんと確認していたのだ。ゾンビは打ち所が悪く本棚の角に脳みそを崩壊されてしまいその場で朽ち果てた。

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