第15話 新たな仲間と初依頼
「♪」
レヴィードは自分に合った剣・アカネゾラを腰に差し、軽い足取りでギルドに向かっていた。その様は新しいオモチャを買って貰ったようである。
「…レヴィード様、楽しそうですね」
「新しい武器、しかも名職人の剣だからね。早く使い心地を確かめたいよ。…ん?あれは…」
レヴィード達が談笑しながら歩いているとギルド前の広場のベンチに見覚えのある人物がいた。
「うっ…うっ…」
レヴィード達がロマニエに到着してローザリア家の邸宅に向かう途中、街の雑踏でぶつかった熊耳の大柄な青年である。何かあったのか、俯いたままで全然動かない。そこにレヴィードが近づく。
「あの…大丈夫ですか?」
「ひぇっ!」
「あ、すいません。驚かせましたか」
「えっと…」
「覚えてませんか?ほら、街中でぶつかった」
「ん…ああ!あん時の子だなぁ。でもどうしてオラに?」
「獣人種って目立ちますからね。1度ぶつかっただけですが貴方のことを覚えてるんですよ。それで、そんな人が遠目で見たら俯いているし、どうしたのかなー、と」
「…実は…」
熊耳の青年はポツポツと語り始めた。
以前彼はとあるパーティーに加入していたが、重くて馬車の積載量を圧迫したり、薬草の採取で根から取れずに葉の途中でブチッと千切ってしまったり、そんな感じで図体がでかくて不器用なので色々とパーティーに迷惑をかけてしまったそうだ。
熊耳の青年の取り柄と言えば力持ちくらいで、荷物持ちを担当していたが回復薬の瓶を割ってしまい、クズの烙印を押されてパーティーから追い出されたらしい。
「…オラ、冒険者に憧れてなったけども、ダメダメなオラには無理だーって。それで辞めようかどうしようかと…」
熊耳の青年は今にも泣きそうな声で弱音を吐く。それを見たレヴィードは自身の境遇と重ねずにはいられなかった。
(あの日、僕も怨みから文字通り切り捨てられた。僕は甦ったけどこの人は…よし)「そうか。それじゃあ僕のパーティーに入らないかい?」
「えっ?オラで良いんか?」
「うん。見ての通り3人で、しかも女性と子どもしかいないパーティーだからね。力持ちを活かして欲しいのだけれど…」
「でもオラは…」
「…すぐに答えを、とは言わないよ。僕達はしばらくの間、資金を稼ぐためにこのギルドに通うことにするから気が向いたら声を掛けて。それじゃあ」
レヴィードはそれだけ言ってギルドに入っていった。
レヴィード達はギルドに入って早速、張り紙が並ぶ掲示板を覗く。
ギルドの依頼は冒険者のようにA~Gのランクに分けられ、冒険者は自身のランク以下の依頼を受けることができるがパーティーで挑む場合、パーティー内のランクの配分で決まる。
「さて、僕達の初依頼は何が良いかな…」
「…私はEですが、レヴィード様とターシャがFとGなので、受けるとすればF以下の依頼になりますね」
レヴィード達がどの張り紙を取ろうかと悩んでいると、後ろから誰か来た。
「もう決心したのかい?」
「…オラ。もう少し頑張ってみるだ。迷惑かもしんねぇけど頼むだよ」
「ああ。こちらこそ。そう言えば名前を訊いてなかったね」
「ティップ…ティップ・ポンポータだぁ」
「よろしく頼むよ。ティップ」
レヴィードとティップは固い握手を交わした。
レヴィード達は大斧(棒に大きな斧の刃が付いた長柄の武器)を持つ熊耳の青年、ティップを仲間に加えて初の依頼を受ける。
【Gランク:プッシ草を3kg以上採取】
プッシ草は磨り潰すと独特な匂いを発する薬草で、捻挫や打撲などに効く塗り薬の材料である。
仕事のランクはGだが大手の商会からの依頼ということで貰える報酬は銀貨3枚(店で働く一般人の平均日給の2倍くらい)、量が多ければ上乗せも有りという好条件であった。
レヴィード達はプッシ草がよく採れるとギルドが紹介してくれた場所、ロマニエの西にあるケーコンの森に向かっていた。
「ふーん。レヴィードさん達はそういう旅をしてたんだなぁー」
「まぁ最初は地道な資金稼ぎだけどね」
レヴィードは道すがらティップに自分達の旅は勇者を追う事が目的だと伝えた。それにはティップも、共に旅して冒険出来るならと同意した。
「そういうティップはどうして冒険者に?」
「えっと…昔、森でモンスターに襲われた時に助けてくれたんが冒険者で…それに憧れて…。でも、オラに出来るかなぁ…」
「…あ、ほらティップ。君がその冒険者になれる時は案外早く来たみたいだよ」
レヴィードの目線の先には何故か動かない馬車があった。レヴィード達が近づくとどこかの商人の馬車のようだった。
「どうしました?」
「それが…馬車の車輪が深い溝に填まってしまって…」
レヴィード達が見ると、馬車の後輪は深く抉れた溝に落ち、いくら押しても抜け出せないでいた。
「ティップ。持てそうかい?」
「やってみるだ。ふん…」
「あの荷を降ろs」
「ふんりゃーー!!」
ティップが腰を入れて馬車の後ろを持ち上げると、馬車はグイッと上がり、そこを押し出すとあっさりと溝を脱した。
「おお!なんという怪力!昼までには着かなければならなかったので助かりました!ご縁がありましたら、また」
商人はティップに礼を言って足早に去って行った。
「ティップ。これが君の力が必要とされた瞬間じゃないか。これからもこの調子で頼むよ」
「…んだ。んだ」
ティップは少し自信が付いたように強く頷いた。
ロマニエを出て数時間。レヴィード達はケーコンの森に入り、プッシ草を集めていた。
「…レヴィード様。これくらい採って参りました」
「ふー。このくらいでどうですかね」
「ふぅ。往復したけど…これで良いかな」
レヴィード・ぺルル・ターシャは手分けしてプッシ草を拾って、集合場所に戻ってを2、3回ほど繰り返してプッシ草をどっさりかき集めた。ケーコンの森にはせいぜいスライムかゴブリン程度のモンスターしかいないためこんなにさっくり集まったのである。
「ティップ。このくらいの重さでどうかな」
「うぅん。だいたい7kgくらいかなぁ」
「まぁそのくらいで良いかな。規定の2倍以上は採れたし、きっと報酬の上乗せもあるだろうね」
プッシ草を満足するほど収穫してレヴィード達は帰ろうと思った時だった。
「おい!おーい!助けてくれー!!」
森から息を切らしながら慌ててやって来たのはエルフの男性だった。ケーコンの森の中にはエルフが住む集落があるため、エルフ自体珍しいことではない。
「どうしましたか?」
「しゅ、集落がゾンビに!」
「ゾンビに?」
ゾンビとは闇魔法によって蘇った死体とも幽霊が死体に入り込んで操っているとも伝えられるモンスターで、体は腐っていて脆く動きも遅いが、なかなか死なないうざったいモンスターである。
「でもゾンビならばエルフでなんとでもなるのでは?」
エルフは魔法が得意な種族である。遠巻きで魔法を撃てば数が多くても殲滅出来るし、聖なる光の魔法であれば一撃で倒せる。そんなエルフがゾンビに苦戦するとはレヴィードは解せなかった。
「確かにそうなんだが、あれはゾンビであってゾンビではないような…とにかく助けてくれ!!」
「分かりました。案内してください」
レヴィード達はエルフの男性の言うことに引っ掛かりを覚えながらも、助けを求める声に応えるべく集落へと走っていった。
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