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第9話 大聖都ロマニエ

ようやくロマニエです。少し長かったですかね。


「皆さん。お疲れ様でした」


予定の時間通り、ルーペンの馬が止まり、レヴィード達は荷車から降りる。



綺麗に並べられた石畳の道



オシャレに飾られた店



オレンジの屋根に白い壁の住居



中央にそびえる王族の住む巨城



スタビュロ大陸最大の都市、政治・経済の中心地、大聖都ロマニエである。

人が枯れることはなく、住民以外に観光客、商人、冒険者などが城壁に囲まれた街を毎日行き交っている。


(ここから旅立ったのはほんの3ヶ月くらい前のことだけど凄く懐かしく感じる…)


「坊っちゃま?如何なさいましたか?」


「ん、いや。やっぱり大聖都は実際に見ると賑やかだなぁって」


ターシャの問いかけにレヴィードは懐古する気持ちを察せられぬよう、適当に誤魔化す。


「それではジェイクさん、レヴィードさん。護衛の任、ありがとうございました。私共の本店はこの道をまっすぐ進んだところにありますので、ご用命がありましたら是非お立ち寄り下さい。最高品質のものを取り揃えてお待ちしております」


「ええ。ありがとうございます」


ルーピンは礼と宣伝をして馬車でパカパカガラガラ去っていった。


「それじゃあ俺達もギルドに報告に行かないとな。じゃあな、レヴィード君」


「ああ。ジェイク達も元気で」


ジェイク達もロマニエに着いた時点でルーピンの護衛という依頼を達成したため、足早にギルドに向かった。


「さて、それじゃあ僕達も父上の用事を済ませよう」


「はい!」


「…かしこまいりました」


レヴィード達もローザリア家の邸宅を目指して歩いて行った。






街はシュードゥルで言えば祭のような賑わいだった。



手を繋いで歩く家族



店先で財布と相談する冒険者



店先で呼び込みをする威勢の良い声



店から香る料理の匂い



大陸一番の街だけあってどこもかしこも活気に溢れている。


「用事を済ませた後、少し遊んでも良いかもね」


「そうですね!」


「…程々ならば」


「ほぼ野宿だし、カナマンからここまでの宿泊費や食事代も全部出してもらっ、おっ」


人が行き交う中ならば当然であろう。レヴィードは誰かにぶつかったようで、少しよろける。


「ああっ!!すいません!すいません!!」


レヴィードにぶつかったのは、荷物をたくさん持った熊の耳を持つ獣人種(ビーストノイド)の大柄な青年だった。

本来、獣人種は種類によって好戦的だったり臆病だったり大まかな傾向はあるが、この熊耳の青年は強そうな見た目に反して気弱で、自分よりもずっと小さいレヴィードに対してペコペコと頭を下げる。


「いや…、全然平気ですので…」


その様はぶつけられたレヴィードの方が逆に申し訳ないと思うほどである。


「おいティップ!モタモタするな!!愚図が!」


熊耳の青年の仲間なのか、遠くから怒鳴る人影が2、3あった。


「僕のことは気にしないで良いから早く行って良いですよ」


「すいません!すいません!」


熊耳の青年は謝りながらドスドス駆けていった。


「…坊っちゃま。実際に大丈夫ですか?」


「何も心配はないよ。ちょっと彼の荷物にぶつかっただけさ。さて、僕達も急ごう」


レヴィードはまたぶつからぬようにとさっきよりも注意深く街中を歩いていった。






歩いて10分くらい経ち、レヴィード達はローザリア家の証である薔薇十字の紋章の邸宅に辿り着いた。立派な門には聖騎士団の兵士が門番として立っていた。


「あの、すいません」


「なんだいボウヤ?」


カナマンの聖騎士とは違って門番の方は穏やかな口調で対応してくれる。


「僕達はルートシア家の使いの者です。ダンテシス・ローザリア卿に手紙をお届けに参りました」


「ルートシア家…?またまた。ボウヤ、からかってはいけないよ?」


「貴様…!」


「ぺルル。どうどう」


門番はどうやら子供のイタズラと勘違いしているらしく、笑うばかりでまともに取り合ってくれず、その無礼からぺルルもキレかける始末である。


(まぁ。メダルを見せれば良いか)


レヴィードが懐からメダル入りのロケットペンダントを出そうとした時だった。


「なんだ!!騒がしいぞ!!!」


邸宅の2階の一室の窓から豪快そうなリーゼントの男が顔を出し、そこら中に響き渡る大声で門番に叫んだ。


(うわー。相変わらず声がデカイね)


「だ、団長!」


「とう!!」


団長と呼ばれた男はその窓から飛び降り着地すると、ノシノシ門へと近寄って来た。


「ん?そこの(わっぱ)、どこかで…」


「は、はぁ…。それがルートシア家の使いだと…」


「何ぃいい!!」


兵士の言葉に団長はさっきと同じくらいの声量で絶叫する。


「もしやお主は…」


「はい。ルートシア家当主バルデント・ルートシアの息子、レヴィード・ルートシアでございます」


「おうおう!そうか!!あの赤ん坊が大きくなったのぉ!!入れ入れ!」


そう、この豪快な団長こそダンテシス・ローザリアである。






ダンテシスに快く受け入れられたレヴィード達は邸宅内の応接間に通された。壁には絵画の他に剣や盾、槍斧(ハルバード)なども掛けられ、武門の家の無骨な側面を見せられる。


「それにしても子煩悩のバルデントが息子を寄越すとはのう。確か生まれつき心臓が弱いと聞いていたが…」


「色々とありまして克服しました」


「ガハハ!そうか!そうか!!やはり男たる者、強くなくてはのう!」


「あはは…」(全然変わらないな…ダンテシス卿)


「して。シュードゥルから遠路遥々何をしに来たのだ?まさか観光だけではあるまい」


「はい。父上が書いた手紙をお届けに上がりました。こちらになります」


「どれどれ」


ダンテシスはレヴィードから手紙を受け取ると、それを一読する。


「フフ…」


「ん?」



「ガーッハハハハハッ!!!」



「うわっ!!」


ダンテシスの今日一番の大爆音の哄笑に、レヴィード達は思わず耳を塞ぐ。


「あ、あの…一体何が?」


「ああ。読んでみぃ」


「はぁ…頂戴します」


レヴィードはダンテシスが返したバルデントの手紙を読んでみる。


『ダンテシスへ

これを読んでいるということは、我が息子レヴィードが訪ねたという事だろう。

実はこの使い、


(中略)


という訳でレヴィードは途中で投げ出すと踏んで行ったものなのだ。だから迷惑だと思うが(以下省略)


手紙の内容を要約すれば


『レヴィードがここまで来るのは予想外だった。そっちの方で厄介になるけど、すまない』


ということである。


「父上…」


「ハッハッハ!だがバルデントの、親の期待以上の成果を出したのだ!レヴィード、誇りに思うと良い!」


「…お褒めに預り、光栄です」


「よし!今日はワシがあいつに代わって祝ってやろう!今夜は遠慮なく泊まっていけ!!」


「はい。ありがとうございます」(さて、あとはラティスさん達の居所を訊けば)


レヴィードの本命はここから。フィーナとラティスに接触するためにここまで来たのだ。勇者パーティーの居場所を訊ねようとした時だった。


「んー!ラティスもいれば、良き宴になったものを」


「え?」


ダンテシスの一言にレヴィードは思わず目が点になる。


「あの…ラティス様はいらっしゃらないのですか?」


「うむ。そうだが…何故だ?」


「いえ…。新聞で見たところ、ラティス様が参加している勇者パーティーがしばらくロマニエに滞在するという話を知りまして…それで都合が良ければ冒険の話を聞いてみたいなー、と思いまして…」


「そりゃあ残念だったのぅ。実は早くに優秀なメンバーが決まって、4日前に出発したのだ」


「そう…ですか…」


まさかの行き違いにレヴィードは肩を落とす。


ゴロピシャーン!!


急に、外から雷鳴が轟いたと思ったらボタボタボタ、ザー!と激しい雨音が邸宅を叩く。


「おお。久々の大雨だのう。シュードゥルは日照りに悩まされていたから恵みの雨だな」


「そう…ですね」








所変わってここはシュードゥル地方の東の森。


「よし!ビッグポッグを倒したぞ」


「やったわ!これで私達もGからFに昇格ね!」


「俺、冒険者で稼げるようになったら親孝行するんだ…」


とある冒険者3人組が見事ビッグポッグを討ち取った時、シュードゥル地方に久々の雨が降り注いだ。


ポツ,ポツ,…ザー!!


「なんだ、雨か?久々に激しいぞ!?」


「早く行きましょ!」


ザーザーゴソッザーザー


「なんだ?変な音した気が…」


グォオオ!!


「なんで」ガブッ


「助け」ムシャッ


「死にた」ブキュッ


クッチャ、クッチャ…




食事を終えたビッグポッグ…いや、ビッグポッグだったモノは咆哮する。






「オ゛レ゛ヲ゛カ゛エ゛セ゛ェェェ!!!」





現れた強大な敵の叫びの真意とは?

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