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沈黙の環状線 (踏み出す夜)

この作品を書き始めて、まだ短いですが

新しい小説を書き始めました。

環状の話を。


環状族、夜に還る。

https://ncode.syosetu.com/n2757ks/


おそらく

その日、世界は3分間だけ止まった。は、しばらく更新できなくなりそうです。



青年がいた。


環状を知らない世代だった。

動画でしか見たことがない光の帯。

古い掲示板に残る武勇伝、伝説。

それでも胸の奥で、いつも赤いテールランプが揺れていた。




彼の車は中古のコンパクトカー。

とても環状を走るマシンじゃない。

改造も金もない。

仲間もいない。




それでも、夜になるとステアリングを握った。

意味もなく環状の入口を眺めてみる。

少しだけアクセルを深く踏んでみる。



——いつもランプウェイには入れなかった。




行きたいのに、行けない。

怖かった。

一度入ったら、何かが変わってしまいそうで。



ある夜、環状の入口近くのコンビニで缶コーヒーを飲んでいた。

誰もいない駐車場。

遠くに聞こえる、環状を駆け抜けるエキゾースト。



---


「……いつまで、ここにいるんだよ。」


小さく独り言を漏らす。

缶コーヒーの苦さだけが、何かを確かめさせた。




アクセルを踏む足が、微かに震える。




その瞬間——


——世界が止まった。




環状の上を駆けていくヘッドライトが凍る。

遠くの車列も、信号も、街のざわめきも止まった。



---


少年は息を呑んだ。



---


ドアを開けて、冷たいアスファルトに立つ。

凍りついた世界に、ひとりだけ。



---


環状へと続く道が、まるで手招きするように光っていた。



---


車に戻ると、少年はハンドルを握り直した。

心臓の音だけがうるさかった。



---


「……行くしか、ないだろ。」



---


小さく笑った。



---


——世界が動き出した。



---


アクセルを踏んだ。

震える足が床を蹴った。


ランプウェイへ飛び込む。

夜の奥へ、夢の中へ。



---


メーターの針が少しずつ上がる。

車は遅い。

それでも風が変わる。



---


遠くのテールランプが滲んだ。



---


やっと届いた。

ここが、あの日動画で見ていた光の帯。



---


少年の車は遅いままだった。

それでも窓を開けた。


夜風が笑った気がした。



---


——その夜、世界は3分間だけ止まった。

そして少年は、環状の扉を開けた。


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