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運動が苦手だった剣術師範の高校生、真剣勝負で成り上がる  作者:


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演説

『いよいよやってきました聖演武祭決勝!』


 特等席近くに備えられた解説席には、白のスーツに身を固めた色の濃い口紅が印象的な女性レポーターと、道着を着た師範が腰を下ろしていた。


その師範を知らない人は、この会場にはいないだろう。


 藍色の道着に螺鈿の装飾が鞘に施された脇差を差し、刃のような目は鋭さと慈しみを持って試合場に立

った葵さんを見つめている。


 この国最強の剣士と謳われる北辰一刀流宗家、北辰七星郎。


『解説はここ数年優勝旗を独占している、北辰一刀流宗家の北辰七星朗さんにお越しいただいています』


『よろしくお願いします』


『では早速。決勝戦の見立てはズバリ如何でしょう?』


『初出場にして決勝まで勝ち上がってきた。柳生宗太選手は中々の強者ですな。しかしいくら強くても、うちの葵の勝ちは揺るがないでしょう』


『おお! 父親ならではの信頼が伝わってくるお言葉です!』


『それにマヨイガもありますからな、万が一にも事故はありませんし、安心して試合を見ていられます』


『そうですね、北辰葵さんはとてもお綺麗ですからね』


『ああ。マヨイガを開発した四菱工業の方々には、感謝してもしきれません。本当に…… 今の古流の隆盛は彼らのお陰と言っても過言ではありませんから』


『決勝前に、北辰七星郎さんからご挨拶です』


 レポーターの声と共に北辰七星郎が立ち上がり、首を回して会場に視線を巡らせる。


 応援の声が響いていたアリーナ席は、たったそれだけで波が引くように静かになっていき、やがて咳払い一つ聞こえなくなった。


 うっすらと髭の生えたこの国最強の剣士の口が、ゆっくりと開かれる。


「本日もこのような熱戦が見られ、大会組織委員会の一員として喜ばしい限りであります」


「決勝を控え、老いを迎えつつあるこの身が熱くたぎるのを感じております」


 軽く姿勢を正し、一旦間を置く。


「古流はその技の危険性ゆえ、表立って試合をすることが長く控えられておりました」


「実践的に試合をすれば命の危険があるからと、形にのみ堕し、衰退の一途をたどる時期もありました」


「しかし今『マヨイガ』のお陰で安全に、かつ真剣に磨きぬいた腕前を皆様の前で披露できます」


「今は亡き私の父。大戦中は『大空のサムライ』として飛行機を操り、戦後は古流復活にその生涯を注いだ、北辰一刀流先代宗家。彼も白雲の彼方で喜んでおられるでしょう」


「令和の技術といにしえの技との融合。存分にご覧ください」


 七星郎さんがそう言って頭を下げ、あいさつを締めくくる。


 耳鳴りがするほどに静かだった会場は、天にとどろくような歓声に包まれた。


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