表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
186/194

181 トリックスター

「――けどよ、野郎がそう都合よく動くか?」


疑わしそうな顔をするリトに、首を振った。


「ちゅごうがいいかどうかは、わかやないけど。でも、今、動いた時点でちゅごうがいい」

「まあ、欲の塊だからな。騒ぎに乗じて偽赤琥珀を盗み出そうとするだろうよ。けど、アイツはアジトを知らねえ――あ、だから男の情報を見せたのか」


今度はしっかり頷いた。

まあ、目的はもうひとつ、鍵を持った衛兵を牢に寄せるだめでもあったけれど。こういうことは、中々手際がいい。リトのアクセサリーを盗った時も、感心したものだ。


ラザクは、何がどうあってもアジトに行こうとするだろう。

別の出入口を見つけるのは、私たちでも、衛兵でも、ラザクでもいい。

かき回す人数は、多い方がいい。


「そえに、らざくは情報屋。案外、裏にもちゅうじて首尾よく発見の可能性――あ」

「どうした」

「接触ちた」

「何の話だ」


ちょっと黙っていて、と手で制し、目を閉じてガルーの視界に集中する。

……私は、少々侮っていたかもしれない。

思わず浮かべた笑みは、『悪い顔すんな』と潰された。

 

「らざく、優秀」

「はぁ? まさか、もう?! ……なんでそういうの、普段発揮されねえんだ?」

 

むしろ、そうしてキャッチした情報に首を突っ込みまくったが故に、方々で捕まっているという結果なのかもしれない。いかんせん、欠けている能力が多すぎるのだ。 

港付近で見事あの男と遭遇したラザクが、何やら耳打ちして粘着質な笑みを浮かべた。

胸倉を掴んだ男に、いつもの調子であれこれ吹き込んでいるだろう様子がうかがえる。

やがて……二人は歩き出した。

 

「りと、らざくにちゅいていく」

「大丈夫なのか……?」


さあ……それは、分からないけれど。

大丈夫、その時は私がリトという切り札を出すから。


「ぱんときんたろも、出動!」

「わうっ!」


勇ましく吠えたパンに、キンタロが飛び乗った。

地上と上空から監視していれば、そうそう見失うことはないだろう。

リトは、あくまで怪しまれない動きをしなくてはいけない。


「りと、ゆっくり、普通に歩く」

「ああ。けど俺はどこへ向かうか分かんねえぞ」


このまま真っ直ぐ、と言ったところでふと気づく。

そうだ、この方がよほど怪しまれない。

リトの腕から抜け出すと、私が先に立ってリトを引っ張って歩く。

これなら、リトの意思だとは思われない。


「方角としちゃ、やっぱあの海際の岩壁方面か」

「合ってた」


きっとラザクが吹き込んでいるだろう、衛兵がアジトに向かっていると。

そして、衛兵はリトの情報を調査するためにうろついているだろう。

申し訳ないけれど、陽動になってもらう。


やがて海沿いの一軒家に辿り着いたラザクたちは、そのまま中へ入ろうとしている。

家……? もしや、アジトに向かったのではなかったのだろうか。

すうっと滑空したガルーが、その門に留まる。


悪党が関係する家には違いない。門から出て来たいかにも荒事に慣れている風の男に、ラザクが途端に怖気づいている。脂汗を流して逃げようとするラザクが、回り込まれた。

ふいに、その視線が門の外へ向く。

飛び跳ねながらやってきたパンが、大きな声で吠えているのが分かる。

ラザクが、パンを見た。覚えているだろうか。ここは、賭けでしかない。ただ、もうここで負けてもそう害はない。


「――らざく、家の中に入った」

「家? アジトは建物内か。工房だけが地下か?」

「……ちやう。家の……地下へ行って……」


ぱちり、と目を開けてリトを見た。


「あじと、発見」


にやっと、リトが笑った。



「――誰だ、コイツは」


ぶへえ、と床に転がったラザクは、素早く起き上がって胸を張る。

……なぜだ。いい情報を持っているのだから、もっと丁重に扱うはずでは。

想定と違った状況に、脂汗と震えが止まらない。そしてまさか、こんな大きな組織であったとは。


「誰だとは聞き捨てならねぇなあ! この神業の情報屋、ラザク様を知らねえとは言わせねえ!」

「知るかよ。てめえ……なんでこんな野郎を入れた」


じろり、男を睨む視線に、ラザクの方まですくみ上がる。

奥にいる男、あれがいわゆるボスだろうか。


「い、いや、衛兵に俺らの情報のタレコミがあったつうからよぉ! 実際、衛兵共がまわりうろついてんだよ、違ったら魚のエサにすりゃいいだけだろ!」

「……えっ」

「魚にも好みってもんがあんだろうがよぉ」


どっと沸いた荒くれ共の中、ぱちくり、ラザクが瞬いた。

……そんな話になる? 

おかしい。情報を大金で買われた上に、アジトで好待遇。そういう手はずだったのに。そして、衛兵突入の隙に乗じてお宝も頂戴する。

完璧な作戦が、脆くも崩れ始めていることを感じて、忙しく視線を彷徨わせる。

よし、逃げるか!


見栄も外聞も脈絡もなく、全ての視線がラザクへの興味を薄れさせた瞬間、素早く方向転換した。


「……なんだコイツ」


ただ、決して日ごろの行いのせいではないと信じているけれど、運は味方しなかったようで。

ちょうど通路へ飛び込もうとした先から、ぞろぞろ男たちが入って来た。

難なく捕まったラザクが、再び転がされる。

大した興味もなさそうにそれを見た男が、奥の男へ声をかけた。


「外の様子が変だ。準備を急がせた方がいいぞ。衛兵の動きが怪しい」

「なに……?」


部屋にいた男たちが、ラザクの方へ視線を移動させる。

ここぞとばかりにふんぞり返ったラザクが、声を張り上げた。


「だろうがよぉ! どこまでバレてるか、知りたくねえのぉ? その情報を持っているのは俺様――」

「あぁ? てめえ、立場分かってんのか。知ってることを言え」

 

知らぬ間に距離を詰められ、胸ぐらを掴み上げられていた。

一気に喉が閉まって、その手を振りほどこうともがく。

どかり、と打ち捨てられてようやく吸い込めた空気に、息つく間もなく声を上げた。


「言いますぅ! 待って待って! このラザク、いっくらでも情報提供できるからぁ! いやはや、殺さず置いておく方が便利よ? マジで! あっ、痛い目とか想像で大丈夫! 実際やらなくて大丈夫! 俺様想像力豊かだから! えっとぉ、俺様が聞いた情報は――」


立て板に水で話し始めたラザクに、悪党共は胡散臭そうに顔を見合わせた。

  


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
リュウちゃんの神算鬼謀に見事踊らせられるラザク(^_^) でもなぁタイトルが不穏。余計な事しなきゃいいけど。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ