第20話
徐々にカルシラスト様の速力が落ちてきた気がする。もうどれだけ私を背負っていたかわからないんですもの。仕方ないわ。
私は秀逸なカルシラスト様の髪を撫でながら言う。優しくよしよししつつ。
「もう、しんどいでしょう。無理をなさらないで……明日は筋肉痛に悩まされますよ?」
それにこちらを一瞥したカルシラスト様は「いいえ、最後までお連れします。今日は泊まりですよね?」と聞く。
私は失念していたがそうだった。客室で就寝するようお父様がおっしゃっていたわ。また明日もカルシラスト様と会えるなんてお正月とクリスマスが一緒に来たかのようだ。
スロースピードだが男をみせるカルシラスト様。よく頑張る方ね。頼もしいわ。左手の壁にかかった額縁入りの絵画には洒落た服装をした美男子がひざまづき女性の手の甲にキスをしている。
カッコいい。でもカルシラスト様ほどではないわ。私にはカルシラスト様が世界一男前に見える。実際その可能性もあった。
大分夜も更けてきたがまだパーティーは終焉を迎えていないだろう。みんな優雅にワインでもやっているわね。
私は興味半分でカルシラスト様に尋ねる。ワクワクしつつ。
「カルシラスト様はお酒を飲まれますか? 私はありませんけど……」
それに彼は「少しだけあります。今度はマリカナと飲みたいなあ……」と嬉しいことをいってくれる。私はあなたのことが大好き……。