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Kの冒涜  作者: カキヒト・シラズ


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14/31

第14章 Kの斟酌

 琉球共和国独立に関する中国大使館での記者発表の三時間後、姉ヶ崎姫香は『ホテルヌーボトキオ』の緊急記者発表の会場に潜り込んだ。

 『ホテルヌーボトキオ』は東京丸の内からすぐだった。

 先ほどと同じような大ホールには多数のマスコミ関係者が陣取っていた。

 姫香は一番後ろの席をどうにか確保した。

 それぞれの席には広報発表資料一式がリーフレットにはさんで用意されている。

 長テーブルに並んだ登壇者の中で自衛隊統合幕僚長の南田吉郎が最初にマイクを持った。

 白髪だが軍人を思わせる矍鑠(かくしゃく)とした初老の男だった。

 会場の周囲は自衛官が警備している。

「本日はご参集いただきありがとうございます。すでにご存じの通り、本日、午前十一時頃、東京が数発の核ミサイル攻撃を受けました。

 核攻撃を受けたのは、皇居、首相官邸、国会議事堂、最高裁判所をはじめ、中央官庁の建造物、合計14件を確認しております。

 また天皇陛下をはじめとする皇族、総理大臣をはじめとする閣僚はすべて死亡が確認されました。この他、国会議員も半数以上が死亡し、重軽傷者も多数出ております。

 現在、活動できる国会議員は衆参合わせて二十数名程度です。

 そこでわが自衛隊はわが国の緊急事態と判断し、活動できる国会議員と協力して、緊急臨時政府を立ち上げました。

 仮称ですが、『ジャパン共和国』という国名を臨時で使用したいと考えております。

 なお、われわれの調査の結果、核攻撃の犯人グループは、カルト宗教団体『ヒミコ神道』と断定しました。

 『ヒミコ神道』は、山田オロチをリーダーとする新興宗教団体ですが、軍事力を持ったテロ集団でもあります。

 お手持ちのリーフレットに山田オロチの顔写真の紙焼きがございます。またリーフレットのCD-Rにはジェイペグ画像にしておりますので、ネット媒体などでご活用ください」

 質疑応答に入ると、姫香が最初に手を挙げた。

「このリーフレットですけど、前から用意してあったんじゃないですか?」姫香が言う。「今日午前中に事件が起きて、もう犯人を特定できるんですか?自作自演テロでないかぎり、こんなこと不可能なんじゃないですか?」

「この山田オロチと『ヒミコ神道』ですが、以前からテロ活動を繰り返しており、警察も警戒していました。警察にテロ予告も何回かしていたのです」

 腑に落ちなかったが、姫香はとりあえず質問をそこで中断した。

 ノートPCで記事を書き始める。

 リーフレットのCD-RをDVDドライブに挿入し、ネットにワイファイ接続する。

 以前、霧島カズマを見つけ出した『フェース探偵』に山田オロチのジェイペグ画像を送信してみる。

 アニメのコスプレを思わせる茶髪の奇妙な神官の恰好をした若者だ。

 すると数件の動画がヒットした。

 消音にし、動画を再生してみる。

 山田オロチそっくりの若者が通行人としてインタヴューを受けている。

 どの動画も山田オロチは通行人だが、あるときは大学生、あるときは農業を目指す若者、あるときはインサイダー取引があった証券会社の若手社員という設定だ。

 おそらく彼は仕出し俳優なのだろう。

 姫香は直感した。

 芸能事務所には、通行人役を演じる仕出し俳優がいる。テレビのインタヴューに通行人に扮して決められた台詞を自分の意見のように述べる仕事だ。

 政府が情報操作をしたいときに利用する。

「『週刊 政治の真相』の竹内と申します」マイクを持った青年が言う。「先ほどの説明で、天皇、首相の両方が死亡したとのことですが、それでしたら日本政府が消滅したということではないでしょうか。

 あなたたちが緊急政府を立ち上げる権利は何を根拠にしているのですか。憲法のどの部分ですか、または何の法律ですか」

「ですから『ジャパン共和国』という仮称を使用するのです」南田が言う。「現在、日本は無法地帯ではありません。

 警察庁、警視庁、全国の県警本部に連絡し、われわれに従属することを確認しております。

 緊急事態がおさまれば、また組織を改組することも検討しております。

 これまでの日本に戻すのか、別の憲法を作るのかは、まだ何とも言えませんが」

「こんなのイカサマだ」竹内が叫ぶ。「あなたたちが勝手に日本を乗っ取ったのと同じじゃないか」

 すると周囲にいた二人の自衛官が左右から竹内の腕を抑え、無理やり会場の外に連れて行く。

「あなたたちがテロリストだ」

 竹内は毒づきながら抵抗するが無駄だった。


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