僕
そういえば、君にまだ伝えてなかったことがあるんだ。
あはは、そんな身構えないでよ。
そんなに大したことじゃないし。
いままで忘れてたし。
僕にはもう時間がないんだ。
そんなこともう分かってる、って、そうだけどさ。
自分に言い聞かせないと、それこそ忘れてしまいそうなんだ。
だって、信じられないだろう。
僕が明日死んじゃうなんて。
食欲だってあるし、元気もあるんだよ。
体のどこにも悪いところはないし、痛いところもないんだ。
呪いだってね。
この21世紀に笑っちゃうよ。
21歳までしかいきられないなんて、中途半端で、とても笑えない。
僕なんていっそ生まれてこなければよかったのに。
なーんてね、嘘だよ。冗談だってば。
そんな怖いかおしないで。
僕は君に笑っていて欲しいんだ。
僕は生まれてこれて良かったって思っているんだ。
本当だよ。
きっと君に出会えたお陰だね。
…………。
……ちゃんとつっこんでよ。
なんか僕滑っちゃったじゃないか。
あー、恥ずかしい。
ん、もっと思い出話とか下らない話とかしたかったんだけど……。
もう時間がないね。
……どうしようか。
怖くなってきたよ。
いや、そうじゃない。
死ぬことよりも、君に伝えなきゃいけないのが怖いな。
無理して言わなくてもいいって?
ダメだよ。
ちゃんと伝えないと、死んでも死にきれない。
幽霊になって君にとりついちゃうぞ。
それもいいかもって……。
やめてよ。
本当にいいかもって思えちゃうじゃないか。
それに期待するだろ。
何にって……。
うん、分かってたよ。
君がどうしようもない鈍感だってことは分かってたさ。
じゃあ教えてあげるよ。
僕はさ、君が好きなんだ。
No like. Yes love.
そんな驚いた顔するなって。
いやさ、死を目前にした男が好きな人に告白するっていうのはけっこうベタだと思うんだけど。
予想もしてなかったの?
予想のしようがないって……。
まぁそうか。
だって君も男だもんね。
大丈夫、相手は間違えてないよ、安心して。
尚更安心できないって、君は正直だなぁ。
そういうところが好き。
僕はかなり嘘つきだから、羨ましかったのかもね。
あれぇ?
君、照れてる?
っおっと。
そんなむきになって怒んなくても。
悪かったって。
でさ、返事は?
聞くまでもないけど、僕はきっちりフラれてから死にたかったんだ。
ていうか本当は聞きたくなかったんだけど……。
怖くて仕方ないんだ。
やっべぇちょっと震えてきた。
…………今、君、なんて、言った?
考えさせてほしいって……本気?
うわマジで、それ、僕をぬか喜びさせたくて言ってるわけじゃないよね?
それなら好きって言うって……それもそうか。
そっか、考える余地はあるんだ。
ありがとう、嘘でもうれしい。
あぁ、そろそろ時間だ……。
……………………。
いきなり無言になんないでよ。
それはお前の方って、そうだけどさ。
……やっぱり怖いよ。
てかそんくらい察しろよ。
あーあ、どうして僕はこんな鈍いやつ好きになったんだか。
自分でもよくわかんない。
気づいたら好きになってた。
全部好きだから、どこが好きとか分かんないよ。
……あの、さ。
やっぱり、最後くらい、正直になるよ。
最初に、痛いところなんて無いって言ったけど、あれ嘘。
本当は心が痛い。
生まれてきて良かったっていうのも嘘。
君に出会えたのはとても嬉しい。
すごく幸せ。
でも、君は絶対僕を好きにならないから、辛くて死んでしまいたい。
それならいっそ出会わなければ良かったなんて。
生まれなければ良かったなんて。
もうどうしようも無くて。
あぁあともちろん、この話を忘れてたってのも嘘。
それこそ大嘘。
近頃はそれしか考えられなかったぐらいだし。
あぁ、あぁもう時間が無い。
あのさ、僕は今後悔しているんだ。
どうせフラれるからって結果を先のばしにして、本当は今日も気持ちを押し込めたまま死のうと思ってたんだ。
でもね、ちょっと思ったんだ。
もしかしたら……。
万が一、なにかの間違いで、
もしかして、もしかして……。
そんな風にいつも期待しちゃってたんだ。
本当バカだよね。
どんだけポジティブなんだって笑うよね。
でもさぁ。
でも、でも……、
僕は明日死んじゃうから、なんか奇跡起こんないかなって。
君は優しいから、僕を慰めるために嘘をついてくれるんじゃないかなって。
嘘でも良かった。
好きっていってほしかった。
でもさ、君って優しい以上に正直者だから、やっぱり断られちゃったね。
いや、あの答えは予想外だった。
嬉しかった。
本当なんだなって分かったから嬉しかった。
嘘でも嬉しいなんてのも嘘。
あーあ、僕って最後の最後まで嘘ばっか。
素直になるの怖い。
でも、死ぬのよりは、怖くないな。
……あれ…………。
素直になろうと思ったら、涙出てきた。
悲しいよ。
悲しいよ。
考える余地があるんだったら、もうちょっと早めに言ったら、良かったかなぁ。
そしたら、絶対惚れさせてみせんのに。
悲しいな。
悔しいな。
あ、あと、1分、
…………嫌だ。
死にたくない。
せめて、答えを聞きたかった。
蛍……けい、
あのさ、手を握って、抱き締めて
そしたらきっと、大丈夫。
ねぇ、僕って本当に馬鹿だよね。
なにもかも遅いし。
全部が全部嘘だったし。
あぁ、
けい、
だいすき
僕って本当馬鹿野郎。




