scene2 ゲオルグ・ヴァルターの場合―中編―
シルクハットの男と合流して東へ向かった。その先をまっすぐに向かえば”無限砂漠”に辿り着く道だ。曰く、そこは太陽神の住処とされる場所であり、生きて帰ってきた者は誰一人として居なかった。
シルクハットの男は黙々と歩いているが、何の説明も無いまま連れて歩く場所ではないと判断した私はこれから行くべき場所の説明をする事にした。
「この先を行けば”無限砂漠”と呼ばれる場所へ辿り着く。
彼の地は太陽神の地とも呼ばれる場所で、人が行けば煉獄のような熱射で身体を焼かれ命を落とすという言い伝えもある場所だ。そして実際にただ一人として帰ってきた者は居ない。
奴は………あの化物はきっと彼の地に居るに違いない。」
「ふむ、何か心当たりがあるようですね」シルクハットの男が答える。
「いい機会ですので、我々の置かれた状況について詳しい話を聞いても宜しいでしょうか?」
私はゆっくりと彼に向かって振り向いた。限りなく苦いものが口内にこみあげていた。そして私はかろうじて声を出した。
「奴は………いや、奴らはサンドワームに分類される化物だ。通常サンドワームと呼ばれるものは大して強くは無い魔物だ。せいぜい熟練の戦士なら1対1で相手をしても問題ないだろう。ただし、今回姿を現したのは災厄の魔物と呼ばれる「マザーワーム」という個体だった。そいつはミツバチで言う所の「クイーン」のような存在で、無尽蔵に眷属を生み出し食料を求めて人や町を襲う。他のサンドワームと違い、中途半端な攻撃は効かない上に多数の眷属を従えていることから普通なら軍隊が相手をする特S級の化物だ。」俺は臍を噛む思いで続きを語る。
「俺達の所に報告に来たときは、ただのサンドワームが砂漠を荒らしていると報告があったんだ。モンスターの出現はその土地の生態系を大きく変えてしまうから適度に間引く必要がある。だから通常の討伐隊を指揮して現場に向かったんだが………結果はこのザマだ。俺一人がのうのうと生き残ってしまった」
そう、生き残ってしまったのだ。私一人を残して。
だからこそ、私は死んで逝った部下達の意思を継がねばならない。
「この地は私達にとっては庭のようなモノだ。どこに何が居るのか目をつぶっていたって見つけることが出来る。ただし、無限砂漠を除いてな。ヤツはきっとそこに居る。」
広大な砂の海をヤツは悠々と泳いでいることだろう。言わば奴のテリトリーの中に突っ込んでいくようなものだ。それは死地というのも生ぬるい。正に”地獄”へ向かう一本道なのだ。
「どんなにヤバイ相手なのか、これで分かっただろう。ちっとは肝にこたえたかね?今から降りてオアシスを目指してもいいんだぞ。誰もお前さんを責めはしないだろう」
「残念ながら………」シルクハットの男は微笑した。
「私は好奇心が強い方でしてね。ますます貴方から離れる気がなくなりましたよ」
「ふん………勝手にしろ」
この男は本物の馬鹿であると思いつつも、私は男の同行を拒否するでもなくそのまま無限砂漠へと向かって行った。




