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0.大鷹さんのプロローグ
困ったものです。
わたくし、大鷹琴織はぼんやりと夜空を仰いだ。乳白色の帯がなびく空は深い藍色をしている。全てを呑み込んでくれそうなその色に、わたくしはほんのりと笑んだ。
わたくしの小さな存在が、その大きな空間に融けて消えてしまえたら、どんなに気が楽で、どんなに幸せなことか。
しかしそんなことは出来ない。いや出来なくもないかもしれないが、大事な約束をしてしまったこの身。おいそれと投げ出すことは許されないし、わたくし自身も許さない。
逃げようなんて考えが甘過ぎるのだ。
「なんて我が儘なんでしょうか、わたくしは。自らの過ちを捨て、楽になりたいだなんて。悩むことを放棄したいだなんて」
図々しいにも程がありますわ。
「はぁ……」
ヒコ君に会いたいわぁ。




