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再び回る爆破魔の歯車

 クロックワーク大通りはいつもと変わらず賑わっていた。多くの店が朝早くから営業をはじめている。


 突如、クロックワーク大通りにスピーカーのノイズキャンセリング音が響き渡る。住民は皆、一瞬耳を塞いだ。


「あー、あ、テステス。」


 スピーカーから男の甲高い声が聞こえる。住民は自然と、スピーカーを見る。ある住民はその声を聞いて不思議に思った。しかし、別の住民は戦慄した。その声は、二年前に聞いたことがある声だったからだ。


「あー?声入ってるのか?ま、いいか。」


 男は興奮に満ち溢れている。興奮を押し殺しているが、今にも爆発しそうだった。そして、感情が最高に向陽したこの瞬間、男は声高らかに叫んだ。


「すぅぅ…クロックワーク大通りの諸君!!俺ちゃんはぁ!!帰ってきたぜぇー!!!」


 この放送は、クロックワーク中央警察署にも聞こえていた。ネクスはそれまでミルクティーを飲んで寛いでいたが、男の声を聞いて血相を変えた。署内の刑事たちも顔を見合せ、署内の警官を集めて車を走らせた。


「ネクス刑事、一体これは何事ですか。」


 車の中で、若い警官がネクスに尋ねる。ネクスは汗が止まらなかった。普段は安全運転を心がけているが、今日は全速力で車を飛ばしている。


「…間違いない。奴だ!二年前の爆破事件の犯人、ボンス・ブラスタンだ!!」


 二年前に発生した、【クロックワーク大通り無差別爆破事件】の首謀者、ボンス・ブラスタン。クロックワーク大通りの至る所に爆弾を設置し、一斉に爆破した。


「アッハッハァ!この街は最っ高に輝いてやがるな!!相も変わらず!!!益々テンションが上がるなぁ!!」


 ボンスはどこかのビルの屋上からクロックワーク大通りを見渡していた。スピーカーは時計塔に取り付けられているが、本人は別の場所にいた。二年前と変わらない手口だった。


「ん?あれは…」


 ボンスの目に止まった、猛スピードで走る複数の車。それは、ネクス達が急いで時計塔の前に向かっている真っ最中だった。


「へぇ…なかなか早い出迎えだなぁ。感心感心。そんなに俺ちゃんに会いたかったのかぁ!」

「黙れ!ボンス!!」


 ネクスは車の扉を乱暴に閉め、拳銃を構える。ボンズはその様子を見て、再び大きな声で笑った。


「アハハハハ!どこかで見たことがある顔だ!おい、あの茶髪の刑事はどうした?今日は来ないのか!!」


 ネクスは苦い顔を浮かべながら、スピーカーに銃を向ける。あとから到着した車から男が現れ、ネクスの銃を下ろした。


「…ギルティス警部」

「どうやら、奴で間違いなさそうだな。」


 現れたのは、ギルティス・スレイスだった。【平等の天秤】と呼ばれる彼は、どんな犯罪者でも、善良な市民でも平等に裁く。それが彼の信条だ。二年前、ギルティスも爆破事件の対応に当たっていた。


「はぁ…ただいま。」


 そう言って、ボンスはボタンを手に取り、押した。


 突如、町中に響きわたる轟音。住民は一瞬でパニックになった。怯えて走り回る人々。我先に逃げようとする人。人混みに押されて倒れる子供。糸目のギルティスも、大きく目を開いた。


 ネクスの脳裏に再びあの光景が蘇る。破壊された街。燃え上がる店。倒れる人々。そして、重傷を負った先輩の姿。


「ボンスゥゥ!!」


 ネクスはスピーカーに向かって叫んだ。ボンスはその様子を見て、さらに興奮するだけだった。ボンスの視界に映るのは、巣を壊されて慌てふためく蟻だけだった。


「アハハハハ!!いい反応をするな!!俺ちゃんワクワクしちゃう!!!」

「この場にいる警官は市民の救助活動に当たれ。各刑事はボンスの捜索だ!おそらく近くにいるだろう。他の警察署にも応援を呼びかけろ!」


 ギルティスはすぐに現場の指揮を取る。警官は負傷者の救助を行った。各刑事はボンスの捜索を始める。ギルティスは他の警察署に応援を求めるべく、電話を取った。


「…やられた。」


 ギルティスの耳に聞こえるのは、ノイズだけだった。おそらく、ボンスによる電波妨害だ。


 ギルティスは考える。これほどの爆発を起こせば、応援は必ず来る。しかし、すぐには来ないだろう。応援が遅れれば、被害はさらに拡大する。


 被害を最小限に抑えるには、この場で一秒でも早くボンスを逮捕することだ。現実的に考えて、これしかない。


「…仕方ない!」


 ギルティスは走り出した。応援の見込みがない以上、自身も動くしかない。そう判断した。


「アッハハハハハ!!蟻どもが走ってやがる!!こいつは傑作だ!!!」

「お前の方が傑作だな。前回と同じ場所をねぐらにするとは。」


 ボンスは後ろから聞こえる声に一瞬固まった。そして、不敵な笑みを浮かべ、ゆっくりと振り返った。そこには、二年前とは違った姿があった。風になびく茶色のコート。今回は杖を持っていて、ペストマスクと帽子を被っている。オルドだ。


「へぇ…茶髪に加えて、茶色の帽子と変なマスクまで…お前、あの時の刑事か。」

「…もう、私は刑事ではない。」

「あ、そう。そうですか。じゃあ俺ちゃんを逮捕する理由はないってことで。」

「…刑事ではないが、事件の当事者ではある。」


 オルドは当言い放ち、杖を構える。この金属製の杖は重く硬い。武器として十分使えるものだ。


「へぇ…面白いじゃん?エクストラプレイヤー♪」


 ボンスは近くの近くに置かれている鉄パイプの束からひとつを取った。鉄パイプをオルドに向ける。その目は狂気に満ち溢れている。無邪気な子供が悪事を覚えたての頃。まさにそれだった。


「…フッ!!」


 オルドが杖を振り下ろす。響く、金属がぶつかり合う轟音。ボンスは軽々とオルドの攻撃を鉄パイプで受け止める。続く、オルドの連撃。ボンスはこの戦闘をも楽しんでいる様子だ。


「おっと、危ない!相変わらず力強いねぇ。」

「フッ!!ハァッ!!」


 オルドの連撃は止まらない。金属製の杖とは思えぬほどに、軽々と振っていく。それを軽々と受け流すボンスも異常だ。

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