第26話 禍敵の刻
理瑚の横に座って話しかける。
「この猫達は、やっぱ望月さんの能力なの?」
「そう、瑠奈ちゃんは、凄い猫好きなんだって!猫カワイイよねー!」
あまり答えになっていないが、理瑚は猫じゃらしのような玩具で、猫をじゃれさすのに夢中だ。代わりに委員長が話を続ける。
「元々、この場所は空き地にある資材置き場で、野良猫が集まる場所だったそうです。望月さんは、現実世界でたまに訪れて餌をあげていたそうですよ」
私の分の紅茶を用意してくれた望月瑠奈が、その場に加わる。
「僕の家はアパートだからさ、猫は飼えなかったんだ。だからたまに、ここに来てたんだけど、夢の中では、こんな綺麗な建物に変わるなんてね。しかも沢山の猫と一緒に住めるなんて最高だよ」
「へぇー、そうなんだ。猫、凄い沢山いるよね。何匹いるの?」
「17匹……本当は20匹いたんだけど、昨日、あのカエルに食べられちゃったんだ」
「うわぁ、そうなんだ……」
「それから、ずっと小屋の中に立て籠もってたんだけど、いなくなったと思ってたシロコが君達を連れてきてくれたんだ。ありがとうシロコ!」
望月瑠奈は最初に会った白い猫の頭を撫で回す。白い猫も嬉しそうだ。
「ネコちゃん達凄く可愛いですね。望月さんが良ければ、私もここに住みたいぐらいです」
いつになく委員長が積極的だ。
「僕は構わないよ。猫好きに悪い人はいないからね」
悪い人がいないのは言い過ぎだと思うけど。犬好きより猫好きの方が良い人が多いと私も思う。何故ならペットの犬は、飼い主の言うことを聞くように躾けて服従させるものだけど、猫の場合は、飼い主が猫が過ごしやすいように配慮してお世話してあげるものだ。しかも、猫の気まぐれを受け入れる度量がある。よって、猫好きの方が心が広いのだ……まぁ、私の偏見だけどね。
猫に囲まれて、とても和やかに過ごしているが、1つ心配な事がある。あのカエルって、やっぱり西園寺のペットなんじゃないかな。と言うことは、いずれこの場所も……。
「ガタタッ」何やら外で音がして猫達が一斉に音の方を見る。
「あ、あぁー!」理瑚が窓の方を見て叫ぶ。そこには、また緑と黒の模様のカエルが張り付いている。
「舞!」「わかってる!」
攻撃役は私しかいないからな。クソー、折角洗ったのに〜。しかし、2匹いたのか。本当に何匹飼ってんだよ。金持ちって嫌いだわ。
「とっとと終わらせてやるぜ。皆待っててね」
私は意気揚々とドアを開けた。
だが、そこで目に入ってきたのは、人間を一飲み出来そうな巨大な錦蛇と、その頭に跨っている白衣を纏った女――四天王 西園寺 妖だ!
とうとう本人と会ってしまった。しかも、この大蛇の迫力!確か一番のお気に入りが蛇だとか言っていたが、コイツがそうか。下手に動くと一気に食いつかれそうだ。
「何だ仮面なんか付けて……お前は転校生の緋影だな」
あー、すぐバレる。相変わらずこの仮面は役に立たない。しかし、西園寺の奴、学校では、夢の事をわかってない素振りだったけど、とうとう覚醒したのか?
「ギャギャッ」近くで甲高い鳴き声がする。
大蛇の存在感がありすぎて気付かなかったが、その横にヤモリがいる。左目に傷を負った片目のヤモリ……委員長の家から逃げ出したヤモリだ。
「ん、何だレオポン興奮して……まさかレオポンの片目を潰したのは……!」
「ゲコッ」
西園寺に気を取られていると、死角から急にカエルが飛びかかってきた。
「ニィャアァー!」寸前でカエルに白猫が飛びかかり、体当たりをすると、カエルは地面に落下した。
「助かった、シロコ!」
カエルに向って右手を伸ばし、「ズギャン」という音と共に伸びた剣が、そのままカエルの頭を突き刺す。カエルは「グェッ」と醜い声を残して光になって消えた。
「アーッ!ドクトンが――そうか、お前だったんだな、今までオレの可愛いお友達を殺しまくってたのは!」
何がお友達だ。コイツは動きの鈍くなったイグアナを蛇に喰わせるような奴だからな。
ふと横を見ると、助けてくれた白猫が倒れて、苦しそうに息をしている。
体には、体当たりした時についてしまったのだろう、カエルの皮膚から出る緑の液体がベットリと付いている。私と違い、体が小さいから、毒の効きが強いのかもしれない。
「――今朝は、あの元気なスナッパーまで動かなくなってたけど、まさか――」
「あー!ちょっと待って、今、思い出すから……」
今にも飛び掛かって来そうな西園寺を静止して、こめかみを叩き、思い出すふりをする。
気付いた委員長が、少しドアを開けて、白猫を抱きかかえる。
「白猫ちゃんは私が助けます。緋影さんお願いします!」
小屋の中に戻った委員長の代わりに理瑚が歩み出る。
「助太刀するよ、怖いけど……!」
理瑚が膝をガクガクさせながらも盾を構える。
うん、私も怖い。でも、ビビってなんかいられない。準備は整った、ここで四天王を落とす!




