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夢の中の蟲毒な学園  作者: キャシヨ
第3章 邂逅

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第21話 VS 無敵の能力者 沢渡 美加

 沢渡は笑みを浮かべながら話を続ける。

「何いきりたってるの?まぁ、待ちなさいよ、私の能力を教えてあげるって言ってるでしょ!

 私の能力はね……『だるまさんが転んだ』よ!私が『だるまさんが転んだ』と言って振り向くと、それを聞いたあなた達は体が硬直して、自分の意志では動けなくなるの!そう、心臓も呼吸さえもね!――ハイ、開示完了〜!この能力の開示までがワンセットよ!この説明を聞いたあなた達には必ず能力の効果が発揮されるってわけ!はぁ〜、バカはやりやすいわ〜」


 エッ!?やられた!規格外の能力を発動させる為、対象者は能力を開示された者のみという条件を付けたのか!さすが頭の良い沢渡と言うべきか。

 確かに、この能力は無敵だ。発動したら、防ぎようが無いのだろう。

 でも、この能力、沢渡の言葉を聞いた者にだけ効果が発揮されるというなら……私と理瑚は、後方で身構える委員長を見る。委員長はコクリと頷く。


「さぁ、行くよ〜!だ・る・ま・さ・ん・が――」沢渡が後ろの木に顔を伏せ唱えだす。


「イン・ザ・サイレントルーム!」

 瞬間、委員長が叫ぶと、周囲の音が一切聴こえなくなる。風に揺れる木々の葉音も、沢渡の声も……。

 私は、目を見開いて、必死に口をパクパクさせている沢渡に駆け寄る。

 沢渡は両手を前に突き出し、青い顔をして何か言っているようだが、構わず、顕現した剣を携えた右手を振り抜くと、沢渡は上下真っ二つになり、光の粒になって消えていった。

 無情だが、コイツを放っておくわけにはいかない。


「フィニッシュ!」

 沢渡が消えたのを見届けた委員長が両手を左右に広げて叫ぶと、辺りは音を取り戻した。

 ホッと胸をなで下ろす委員長に理瑚が駆け寄っていく。

「ヤッター!まさか委員長の能力が役立つなんて!」

「た、たまたまですよ」

 委員長は中指で眼鏡を上げ、冷静を装っているが、まんざらでもないようだ。

 私も二人に駆け寄り、理瑚から手荒い祝福を受ける。


「それにしても、あんな風に人も消えるんですね。これなら、ゲームみたいで罪悪感は少ないかもしれない……それより、沢渡さんが普段あんな事を考えていたなんて、その方がショックです」

 委員長が少しうつむいて話す。

そういえば、委員長は、お昼のお弁当を沢渡と食べていた気がする。仲が良いと思っていた人に裏切られた感じか……。

「この夢の世界は、人が争うように出来ているみたいだ。こんな世界だから人の本性っていうのかな、普段隠している醜いところが見えてしまうのかもしれないね」

「おっ、舞ってば、深そうな事言うじゃん」

 理瑚が茶々を入れる。

「いや、私はもう6日程ここにいて、クラスの人達とやり合ってきたからさ、色々考えるよ」

「そうかー、そうだよね……」

 理瑚は頷いて目を伏せる。理瑚も友達だった漫研の人達と敵対しちゃったんだもんな。


 そんな2人の顔を見て私は声をかける。

「だからこそさ、悪意を持った人に、この世界を制覇させてはいけないと思うんだ。ろくでもない世界になるよ。それに、この世界での死が現実に影響するなら、この世界の制覇イコール現実のクラスの制覇みたいなもんだからね。今はクイーンが牛耳ってて、協調性も無く、ギスギスした感じのクラスだけど、それを変えるチャンスでもあるって思うよ」


 委員長が私の顔を真っ直ぐに見て話し出す。

「私、緋影さんの事、誤解してたかもしれません。いつも冷めた目で見ていて、地元の私達を少し見下しているのだと思ってました。クラスの事も前向きに考えてくれてるのですね」

「いや、まぁね。だけど、そんな見下してるように見えたかな?」委員長の素直な言葉に焦る。

 そこへ理瑚が話に割って入る。

「アタシも舞と友達になったばかりだけど、舞は見た目はクールだけど良い奴だよ。普通に会話も弾むしね」

「いや、ありがとう。それは理瑚のコミュ力が高いだけで、私は人付き合いが得意ではなくてね、ハハ……」

「それなら、謝るのは私の方ですね。話しかけたら迷惑だと勝手に思っていました。ごめんなさい」委員長は頭を下げる。

「そんな、いいんだよ!私が話しかけるなオーラを出してたんだよ。多少自覚はあるよ」

 不器用な私は、惨めに思われたくなくて、1人で平気だと虚勢を張っていたんだ。


 理瑚が私と委員長の間に入って肩を組む。

「よーし、じゃあ3人で夢の世界を制覇して、現実世界も制覇してやろうぜ!委員長も素直に謝ることが出来る奴だとわかったしね」

「それは今まで私の事を、自分の非も認めない、独善的な堅物だと思ってたという事ですか?」

「いやいや、そこまで言ってないよ!人の意見聞かなそうとかは思ってたけども……って、あーっ、ちょっと口が滑ったな、と、とにかく頑張っていこうぜ!」

 必死に取り繕う理瑚を見て、委員長が吹き出す。私も笑ってしまう。友達と笑い合うなんて、いつ以来だろ?本当はこんな日常を望んでいたんだ。


 その後、今までの出来事などを委員長に話しながら探索を続けた。因みに、委員長は今までずっとあの部屋で怯えながら過ごしていたそうだ。訪れたのが私達で良かったよね。もっとも、初めは倒す気だったわけなんだけど。


 日が落ちてきた。特に成果はなく、小さな公民館に入り込んで寝ることにした。民家に侵入しても良いのだけど、鍵がかかってるし、後ろめたい気もしたのだ。

 次の夜は何時に集まるか決めるとき、11時にはベッドに入るという委員長と、早すぎると言う理瑚が揉めたが、遅くとも12時までに寝ることにして、その日を終えた。



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