第15話 VS漫画研究部
「理瑚?理瑚じゃあないか、ちゃんとまだ生きてたんだな、おれ達にやられる為に」
城之内がポケットに手を突っ込んで不敵な笑みを浮かべる。
「隣にいるのは誰だ?新しい仲間か?まぁ、誰だろうとおれたちの敵じゃないね。シシシ、丁度物足りなかったとこだ、相手になってやるよ!」
麦原が思い切り振りかぶって、右手を突き出すと、腕がグンと伸びる。思わずフェンスに身を隠すが、飛んできたパンチで、フェンスがグニャリと曲がってしまった。
ウワッ、こんなとこまで届くなんて!しかもこれ鉄のフェンスだよ?予想以上に凄い破壊力だ!一発でも食らったらアウトじゃない?
「ヨハンゼバスティアンバッ波!」
空後が両掌を突き出し、エネルギー弾を放つ。目の前まで飛んできたところを理瑚が身を挺して盾で防いだ。
「ウーワッ、ビックリした!陸上部戦の時も、何か言ってるなとは思ってたけど、”ヨハン”何だって?アイツなんて言ってんだ」
「音楽家のバッハの本名だよ、他に最後に”ハ”が付く名前思いつかなかったんだって!」
言いづら〜、オリジナルがどんだけ優れてるか良く分かるな。いや、そんな事はどうでもいい!こんな遠距離攻撃が得意な相手から逃げられる気がしない。
「もう、こうなったら、やるしか無いみたいだね」
「エッ?舞、まさか3人相手に!?」
「理瑚、援護して!近づかなきゃ私の攻撃は当たらない」
私は歪んだフェンスを飛び越え、思い切って前へと走り出した。
「チョッ!?舞!」
理瑚も重そうな盾を携え、少し遅れてついて来る。
「遠距離は分が悪いってか。私……いや、オラがヤッつけてやるから、ゼッテー見てくれよな!――ヨハンゼバスティアンバッ波!バッ波!」
空後 紗里弥は連続で両手から撃ってくるが、エネルギー弾は見切れないスピードではない。弧を描いて背面から飛んでくる弾は理瑚が盾で叩き落とす。
「全然当たらねぇじゃん紗里弥!戦闘民族の名が泣くぜ。おれが手本を見せてやるよ!ガムガムの〜銃!」
麦原が思い切りパンチを繰り出す!
「それを待ってたぜ!」
麦原のパンチがスカートの裾をかすめて地面に落ちると、その伸び切った腕に右手を振り抜く!
「アッアーッ痛ッー!」
顕現した剣は鮮やかに麦原の腕を切断し、1メートル程の腕の先が地面に転がる。
「斬撃ィ!?打撃は効かないけど、斬撃はダメだ!アーッ!!」
麦原は、手首を失ってウネウネと動く伸びた腕を制御できずに狼狽える。
私は伸びた腕をかいくぐって麦原の目の前まで走り抜けると、その勢いのまま、剣を携えた右腕を振り抜いた。
「わりい、おれ死んだ……!」
麦原は最後の言葉を残して、真っ二つになって消えた。
「舞!やったじゃん!?」後ろから理瑚が駆け寄る。
「あぁ、でも、まだ2人いる」
「徐杏のスタンダは近距離パワー型だよ、取り敢えず近づかなければ問題無い。厄介な飛び道具の紗里弥を先に倒そう」
「了解だ」
私は、麦原がやられたショックで固まっている空後 紗里弥に向って駆け出す。
後からついて来る理瑚が、調子に乗って空後をあおる。
「どうだ、舞の力は!オメーも、あのガム野郎のように真っ二つだよ」
それを聞いた空後の顔色が変わる。
「ガム野郎のように?未海リンのことか……未海リンのことかーっ!!」
怒った空後は、いっそう金色の髪の毛を逆立てると、両手を合わせて力を溜める。
「ヨハンゼバスティアン……」
「遅い!」
私は大きく跳躍すると、右手を振り下ろした。空後は頭の先から真っ二つになり、悔しそうな顔のまま光の粒になって消えた。
危なかった、必殺技が五文字程度だったら間に合わなかった。
「理瑚さぁ、危なかったじゃん!怒らしてどうすんの」
「いやいや、舞ならいけると思ったよ!紗里弥も最後に名言言えて本望だったんじゃない?」
理瑚め、調子いいなぁ、まったく!まぁいい、残りは1人だ。
「2人ともやられちまうなんて、やれやれだぜ。まぁ、最後はおれが2人を倒す予定だったんで手間が省けたがな」
城之内 徐杏は、ポケットに手を突っ込んだまま余裕を見せる。
「舞!スタンダに攻撃は効かないからね」
「わかった、本体を攻撃だね」
私と理瑚は、城之内を挟む形で対峙する。しかし、スタンダの動きは速い。本体の城之内から2メートル程しか離れられないようだが、守るように拳を振るい、近づくことができない。
「オリァ、どうした?オリャァ!」
重いパンチが地面を揺らし、攻撃手の私に向ってジリジリと詰め寄る。あのパンチが一発でも当たったら終わりだ。ギリギリの距離で避けながらチャンスを伺う。
私の剣は最大でも1.5メートル程だ。あと少しでも近づけたら。
「うおぉーい!盾だと思ってアタシを無視してんじゃねー」
見ると、理瑚が両手で盾の縁を持って体ごとグルグル回転している。
「理瑚!?」
すると理瑚は、円盤投げのように城之内に向って盾を投げ飛ばした。
「オリャオリャオリャオリャーッ!」
スタンダは素早く城之内の元に戻ると、頭上に飛んできた盾をパンチのラッシュで叩き落した。
瞬間、間合いを詰めた私の剣が城之内の体を貫く。
「一手遅れたか、やれやれだぜ……」そう言って城之内 徐杏は光の粒になって消えた。




