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あけましておめでとうございます。
5年以上前にTSFサイト 「あむぁいおかし製作所」さんに投稿したSSの転載です。
若干加筆しながらの再掲となります。所謂コンテンツ不足解消の一環です(^_^;)
レトロフューチャーなSFです。
※「あむぁいおかし製作所」さんは“ガチの18禁サイト”ですので、リンクは貼りません。
悪しからず。
――準備はすべて整った。いつでも開始可能である。
(今度こそ、うまくいくだろうか?)
――蘇生体に問題は見られない。問題は記憶の維持状態と、蘇生体の精神面次第である。
(つまり、僕のケア次第ということか?)
――失敗は許されない。これが最後の蘇生体である。今回を逃せば、我々の計画も無に帰する。
(彼……、いや彼女に期待するしかないか)
――では、覚醒シーケンスを開始する。
☆☆☆ エデンの園 ☆☆☆
「♪俺ら宇宙~の、俺ら~宇宙~のぉ、俺ら宇宙のメンテ屋さんっ♪」
俺は鼻歌交じりに、EVA作業をしていた。
ここはL4(第4ラグランジュポイント)に浮かぶ、スペースコロニー、“エデン”。
俺はその“エデン”のメンテナンス要員として働いている、しがない技術屋だ。
行きたくは無かったが、大学に通ってEVA技術員の資格を取り、親の仕事を引き継いで、いっぱしの技術屋稼業なんかをしている。
いつ太陽フレア爆発や、宇宙塵との衝突に襲われるかも知れない、危険なコロニー外殻表面でのEVA作業の殆どが、今ではメンテナンスロボットが担当しているが、微妙な調整だとか複雑に入り組んだ場所での作業となると、まだまだ生身の人間の手が必要だった。
だが俺にとっては、もうすっかり慣れた日常の作業のひとつに過ぎない。
それにこうして、“エデン”の外殻から出て、バイザー越しとはいえ、さえぎるものの何一つ無い、星々の瞬きを見るのも悪くない。
「……って、宇宙じゃ星は瞬いたりはしない。何だあれは?」
俺はそう呟いて、明滅する光点に向かおうとしたそのとき、突然視界が真っ暗になって、何者かに襲われた。
俺は無線のプレトークスイッチを押して、助けを呼ぼうとした。
だが雑音ばかりがなり立てるレシーバーからは、いつものとぼけた調子のコントローラーからの応答は無く、俺を襲ってきた何かと揉みあっているうちに背中に激痛を感じ、そのまま気を失ってしまった。
☆彡
「ここは……、どこだ?」
「お目覚めですか? イヴさん」
ぼやけた視界がだんだんとはっきりとしていき、目の前に白衣を着た男が話しかけていることがわかった。
「ここは、どこですか?」
確か、俺は何者かに襲われて……どうやら耳までおかしいらしい。
自分の声がずいぶんと甲高く、別人のようだ。
それに体中がだるくて……、なんだかずいぶんと長い間眠っていたような感じがする。
「ここは、病院のベッドの上ですよ。僕はあなたの主治医です」
「主治医?」
「自分が誰だか、判りますか? イヴさん」
「俺は……イヴなんて名前じゃない。俺はショー……あれ、なんだっけ?」
「無理に思い出そうとしなくていいですよ。あなたは長い間眠ったままだったのですから」
「そうだ! 俺はEVA作業中に、何者かに襲われて……」
「どうやら、ある程度の記憶は残っているようですね。これなら希望が持てます」
「希望?」
俺は医者の言葉に不自然さを感じながらも、少しずつ戻りつつある体の感覚を頼りに、体を起こそうとした。
「あ、まだ無理をしてはいけません」
「いや、手伝ってくれ。体を起こしたいんだ」
医者は俺の背中を支えて、上半身を起こすのを手伝ってくれた。
だがその時、俺は自分の体がまったく違うものになっていることに、ようやく気づいた。
「な、なんだこれは、俺の体……、胸が膨らんで、それにこの手! どうなっているんだ!」
「あなたの体は、宇宙線に長い間晒されていて損傷が激しかったので、あなたの遺伝情報を元に、肉体を再生しました」
「肉体の“再生”だって?」
「ええ、でも脳だけは元のままなので、体に違和感があるかもしれませんが、リハビリをすれば、直ぐに慣れますよ」
「直ぐに慣れるって……、この体、まるで女みたいな……」
「すみません。男性の体で再生することが出来なかったので、体は女性体です」
「な、なんだって! それじゃこの、胸が膨らんでるとか、声が甲高いのも……」
そう言いかけて、俺は入院患者が着る様な服のズボンの部分に手を突っ込んだ。
「な、無い! 俺のジュニアが……!」
本当ならそこにある筈の、握りなれた男のシンボルがなく、代わりに股間には……。
「あ、あのう……、僕もいるんですが」
俺の背中を支えたままの医者が、顔をそらしながら言った。
それを聞いて初めて俺は、自分がかなりキワドイことをしていることに気がついた。
少なくとも俺のこの体は女性のもので、目の前にいるのは男性で……。
俺は急に恥ずかしくなって、服の中から手を抜いた。
「あ、いや、見ていませんよ。いえ、診察のときに全部見ていますが……いや、今のは失言です。忘れてください」
医者は弁解したが、医者ならば患者の体を診るのはそれが仕事だから、非難されるいわれは無い。それは頭ではわかっているんだが、自分の知らない自分を、しかも女の体になってしまっている自分の体を見られるのは、なんだかとても恥ずかしかった。
「元には、戻せないんですか? その、男の体に」
「すみません。残念ながら、あなたの体がどうであったか、DNA解析だけでは判らないんです。それに、ここの施設では、男性の体を作るのは難しくて……。それで我慢してください」
「我慢してくださいって……」
すまなそうに言う医者に、俺はそれ以上強く言えなかった。
それに体を再生したとか言っていたが、それほどの損傷を受けた体ならば、俺はたぶんその時に一度死んでしまったのだろう。
それをここまでにしてくれて、しかも俺は意識を取り戻した。
彼はいわば、俺の命の恩人といえる。
「助けてくださったことには、感謝します。俺は、やっぱり一度死んだんですよね?」
「ええ、あなたを蘇生できたのは、かなり奇跡に近いです。でも良かった。生き返ってくれて」
「そうですか、重ねて御礼を言います、ありがとうございます」
俺は深々と頭を下げた。
「いえ、医者として当然のことです。慣れない体では色々と不都合もあるでしょうが、今度こそきちんとサポートしますから、がんばってください」
『今度こそ……』? 医者の言葉にちょっと俺は引っかかったが、それよりも次第にはっきりとしていく五感を通じて、文字通り生まれ変わった新しい世界の感覚に、俺は戸惑っていた。
イラスト:もりや あこ さま
冒頭で主人公が歌っているのは、大昔のSF映画「妖星ゴラス」の劇中歌の替え歌です♪
映画本編も含めて日本SF史上の傑作なんですが、作詞者 不明なんですよね。
カラオケに行くと、一回は歌ってしまいます(^_^;)




