筋肉と、異変
多忙期が終わりました。長かった。。
再び家の前。キッと睨んでいる姿をよく観察してみる。
小柄ですばしっこそうな体格に大きな杖がちぐはぐな印象だ。魔法使いは後衛…でいいんだよな?砲台のように並んでいるイメージしかない。
学生とはいえ純粋な魔法使い相手にどう戦うか、俺はワクワクする筋肉をなだめながら開始の合図を待つ。
「手加減はしないぞ!怪我しても文句言うなよな!」
「…ふん!」
向こうは杖を構え、俺も下半身に力を込める。
「ふたりとも、いい?では…始め!」
母さんの合図が終わった瞬間に下腿三頭筋を開放し前へ一足。ぐっと風が浴びる。ああ、我ながら良い筋肉になっている…とにかく間合いを詰めて詠唱?をさせないようにするのが良いだろう。更に筋肉に力を込める!前へ!前へ!!
「ちょっ…まっ…!!」
ズシャアア
「へ?」
魔法学校首席とやらは俺のタックルをまともに喰らいゆっくりと放物線を描いて落下した。
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「なんなのよ!いったい!あんた何したのよ!!」
叫ぶような声でドタドタと階段を降りてきたら彼女が叫ぶ。顔がまっ青だ。
「あらあら、回復魔法で傷は癒えるけど体力は戻らないのよ?まだ寝てないと」
「こんな事されて寝てられないわ!どうなってるのよ!!」
茶菓子で歓談していたリビングに声が響く。はて、俺はただのタックルをしたつもりだったが、変に急所に肩が入ってしまったのだろうか?頭にハテナが浮かんでいる俺を置いて兄さんが間に入った。
「落ち着けよコリィ。何がどうした?俺らの目にはライルが体当たりをしたようにしか見えなかったぞ?傷ももう無いだろう?」
兄さんを無視して俺の前に来るや杖を掲げる。
「見なさい!」
シリアとジルが俺を守るように動くがそれより早く魔法が発動する。
ふわ〜
辺りに優しい風が吹いた。
静かな草原を撫でるような優しい風だ。
「えっと、フェなんとかさん。今のは?」
「コーラル!フェデラルカよ!!今のは風の攻撃魔法なの!!私が行使したらこのテーブルを真っ二つにするくらいはわけないの!!それがなによこれは!」
「もう少し強かったら髪を乾かすのに使えそうだな」
「そんな事を聞いてるんじゃないの!魔法が!!使えないの!!私に何をしたかを聞いてるの!!これじゃあ、このままじゃ私学校に戻れないわ!」
「落ち着いて下さい、フェデラルカ様。ライオット様は何もしておりません。というよりこの方は魔法的な事は何もできません」
「そうだ、コリィ。ライルにそんな事はできない。加護が無い事は周知だろ?だから俺達が討伐の内容を直接確認しにきたんじゃないか」
シリアと兄さんが声をかけるも聞く耳を持たず俺を睨む。
「私に何をしたのよ!」
「何って…ただのタックルだけど…」
「ならなんで魔法が使えないのよ!」
「そういう日もあるだろう」
「ないわよ!」
「はい!そこまでよ。コーラルさん、まずはお茶でも飲んで、落ち着いて?」
「でも…」
「ここにいる私達みんな貴方の状態がわからないわ。まずは何が起きているか、ゆっくりでいいから話してくれないかしら?」
母さんがゆっくり、ハッキリと言い聞かせる。これあれだ、癇癪起こした子どもをあやすやつだ。
俺と母さんを交互に見て、ゆっくりと息を吐き少し落ち着いたようだ。
シリアが椅子を促し、素直にそれに座る。
「ふぅ……ごめんなさい。こんな事、初めてだったから…」
それからコーラル壌はポツポツと話し始めた。




