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紫音の少女  作者: 柊 潤一
宿命
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結婚式、戴冠式、そして意外な訪問者

 数日後に、ゼルダと紫音の結婚式が行われた。


 挙式には、シュリ婆とエリカ夫婦が紫音の身内として呼ばれ、ゼルダの親族と合わせても二十数名のささやかな挙式だった。


 その代わりに、披露宴が町をあげて行われた。


 城の大広間には人が溢れ返り、庭に作られた宴席もごった返し給仕が走り回っていた。


 ゼルダと紫音が大広間に現れ、挙式が滞りなく終わったことを伝えると、ハシバ国王が挨拶に立った。


「皆様、今日はこの若い二人の祝いの門出にお集まりくださり、お礼を申し上げます。それから、今日はもう一つお伝えすることがあります。私ハシバは、今日をもって国王の座をこのゼルダに譲ることといたします」


 会場が一瞬どよめいた。


 ハシバは更に声を大きくした。


「私は、この後は後見人として新しい国王を助けていきたいと思っております。どうか皆様もこのゼルダ国王を見守り、励ましてやって下さい」


 ハシバや皆が見守る中、神官が国王の椅子に座ったゼルダの頭に王の証の冠を載せ、祝の言葉を述べて戴冠式が終わった。


 会場から大きな拍手が起こり、続いてゼルダを呼ぶ声が最初は小さく、そして段々と大きくなっていつた。


ゼルダが立ち上がり挨拶に立った。


「我がイシュタル国の皆さん、この度不肖ゼルダが父の後を受け、国王とならせていただきました。私の願いは唯一つ。イシュタル国の平和と、国民の繁栄であります。今日良き伴侶を得て、これよりは皆様のために、わが生涯をかける決意でおります。今日はその祝いとして、大いに飲み、大いに騒ごうではありませんか。我がイシュタルに栄光あれ!」


 うぉ~という歓声が沸き起こった。


 みな新しい国王を歓迎し、祝いの声を上げていた。


 国王となったゼルダは、一回りも二回りも大きくなっていた。


そんなゼルダを紫音は頼もしげに見ていた。


祝いの言葉を述べにやってくる人々の数が落ち着いたあとで、紫音はゼルダに耳打ちをした。


 ゼルダは頷いたあと父のそばに寄っていった。


「父上、紫音が祝の歌を歌うそうです」


「おお、そうか。それは是非聞きたいものだ」


 紫音は庭にでて、大きく息を吸ったあと歌い出した。


 紫音の体から緑色の水蒸気が出て霧のように漂いだし、心地よい香りを振りまきながら人々を包んでいった。


 そして紫音の澄んだ歌声が流れて行った。


 その時、辺りが騒がしくなった。


 まず、(おびただ)しい数の大小さまざまの鳥が羽音をたててやって来て、思い思いの場所に止まった。


 庭の周りの木の枝や、庭の手すりなど鳥の足が乗る場所はびっしりと鳥が止まり、果ては人々の肩の上、テーブルの上も鳥で溢れた。


 次に地響きがして鹿や馬やタヌキ、キツネ、兎等のさまざまの動物がやってきた。


 その中には熊や虎といった猛獣もいたが、他の動物はそれを気にもせず、また猛獣も他には目もくれないで庭の空いた場所に陣取った。


 その他にもあらゆる動物で庭は溢れかえり、人々は一瞬驚いたが、香り良い霧に包まれながら紫音の歌声を聞くと、さほど不思議でない気がして動物達と一緒に紫音の歌に聞き入っていた。


 うっとりとした気持ちの中で紫音の歌が終わり、しばらく余韻に浸ったあとで、人々の歓声が響きそれに混じって鳥のさえずり、獣たちの鳴き声が辺りに響き渡った。


 そしてそれが静まると、今度は動物達が紫音とゼルダの周りに集った。


 動物達はすり寄り、鳥は周りを舞い二人を祝った。


 ハシバや人々は驚きの顔でそれを見ていたが、紫音とゼルダの二人はニコニコしながら動物達に話しかけていた。


「ありがとう。よく来てくれたわね」


「おう、お前も来たのか」


 動物達は二人に撫でられ、くぅぅと鳴いて喜んだ。


 動物達と一通りの挨拶が終わったあとで紫音が言った。


「さあみんな、もうお帰り。今日はありがとう」


 紫音の声を聞き動物達はそれぞれ帰っていった。


 動物達を見送る人々のざわめきが止んだあとハシバが皆に言った。


「突然の訪問者でみなさんも驚かれたと思いますが、あの者達も祝に駆けつけたということは誠にめでたい。国じゅうが二人を祝福している証だと思われます。このあと二人は席を外しますが、皆様はこのまま宴をお続けください」


人々がまた、思い思いに飲み、食べ、話す中を紫音とゼルダは広間を出ていった。

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